2018 JRC Round 5 Report

【全日本ラリー選手権 第5戦/群馬県嬬恋村】

地元での一戦で強さを見せた新井敏弘選手組が4年連続でモントレーを優勝、
JN2クラスでは加納武彦選手が嬉しい全日本初優勝を飾った!!

JRC Round 5

開催日 2018年6月8日-10日
開催場所 群馬県嬬恋村 近郊
天候 Leg1) 曇り のち 晴れ
Leg2) 曇り のち 小雨
路面 Leg1) ハーフウェット~ドライ
Leg2) ハーフウェット~ウェット
グラベル(非舗装路面)
総走行距離 461.954km
SS合計距離 88.791km (17SS)
得点係数 1.2 (非舗装路50km~100km)
参加台数 50台
(ヨコハマタイヤ装着車 21台)
2018 全日本ラリー選手権 第5戦

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全日本ラリー選手権は、前半戦の締めくくりとなる第5戦「Montre 2018」が群馬県嬬恋村をホストタウンに開催された。2012年から全日本のカレンダーへ復活した「Montre」だが、これまでとは異なりグラベル(非舗装路)ラリーとなった。

大会の拠点は、昨年同様にパルコールつま恋リゾート。ここから二日間で17本、合計距離88.791kmのSS(スペシャルステージ)で競われる。そしてこの大会は、グラベルラリーと定義されているが実際にはターマック(舗装路)も多い。例えば土曜日のLEG1で2回走行する大会最長のステージ「峰の原 (10.779km)は、昨年の大会でも使った全線ターマックのステージ。このほかLEG2で使う「大前須坂」はスタートからグラベルを走り、昨年までも使っているターマックに合流してフィニッシュまで走る。土日で走行する向きを変えて合計3回使う「群馬坂」も同様で、グラベルとターマックの両方が同一SSに混在している。

一方で全線グラベルなのは「四阿(あずまや)」と、LEG1でスポーツランド信州に設けられた「S.L Shinsyu (1.073km)」のふたつ。四阿は土日で走行方向と中盤の一部ルートが変わる設定、ここはひとつの勝負どころになると目された。これらにサービスパークと隣接する0.3kmのギャラリーショートステージを加えた道が、戦いの舞台となる。

金曜日のレッキは暑さを感じる中で行われたが、その夜に雨が降ってステージを濡らしていた。土曜日のスタート時点で雨は上がっていたが、オープニングのSS1「四阿 A1」の路面は乾いておらず土埃も立たないコンディション。ここと続くSS2のショートステージはライバルにベストを譲ったが、SS3「群馬坂 A」とSS4「大前須坂グラベル 1」を奴田原文雄選手/佐藤忠宜選手組(ランサー)が制して速さを見せる。一方、3年連続で本大会を優勝している新井敏弘選手/田中直哉選手組(WRX STI)はSS4までのセクション1でベストを奪うには至らなかったが、大きな遅れをとることはなくSS4を終えてトップのライバルから僅か0.6秒差の2番手につけ、その0.8秒後ろが奴田原選手組という接戦になる。

スタートでは各車ADVAN A053を装着していたが、新井選手組と奴田原選手組はともにスペアとして硬質路面用のADVAN A036を2本車両に搭載。セクション2のSS5「四阿 A2」までをADVAN A053で走り、新井選手組はSS5で待望の本大会初ステージベストを刻むとライバルを逆転してトップに躍り出た。

そして本大会ひとつの勝負どころと目されるLEG1の後半4ステージ、硬く締まったグラベル路面の「S.L Shinsyu」と全面ターマックのロングステージ「峰の原」を各2回ずつ走行する。SS6「S.L Shinsyu 1」を前に、新井選手と奴田原選手組はともにフロントタイヤをADVAN A036にチェンジ。そしてSS6は奴田原選手組がベスト、新井選手組がセカンドベストでワン・ツーを飾った。

SS6を終えると峰の原リモートサービス、ここで両者はリアもADVAN A036に交換して次の全線ターマックステージに臨む。このSS6はライバル勢が速さを見せて新井選手組はマージンを0.8秒にまで詰められたが、2回目の走行となる「S.L Shinsyu 2」で今度は新井選手組がベスト、奴田原選手組がセカンドベストで再びヨコハマタイヤ勢がワン・ツー、新井選手組は2番手との差を1.5秒に再び拡大した。

そのころ、峰の原のステージは霧に包まれつつあった。1回目の走行でも標高の低い箇所には霧が出ていたが、スポーツランド信州の2回目を走っている間に霧がフィニッシュ周辺にも立ち込め、タイミングによってはコースサイドにあるラジオポイントなどの看板も見えないような状況になった。

そんな中、新井選手組はLEG1最終となるSS9「Minenohara 2」をステージベストで締めくくった。これで2番手との差は2.1秒、奴田原選手組は新井選手組から14.6秒後ろの3番手、49.433kmを走ってこれほどの僅差という大接戦で初日を終えた。

一夜明けて日曜日のLEG2、パルコールつま恋リゾートは朝から霧と雨で“モントレー・ウェザー”は今年も健在だった。

LEG1の順位により先頭スタートとなった新井選手組、まずは「四阿 B1」へ臨む。注目のリザルトは堂々のステージベスト、初日2番手のライバルに4.4秒差をつけてマージンを拡大した。しかし粘るライバルもSS12「群馬坂 B1」とSS13「大前須坂グラベル 2」で連続ベスト、その差は2.9秒となって残るステージは4本(21.523km)、勝負は最後の最後まで接戦が続く展開に。

装着しているのはLEGスタート時点で新品を投入したADVAN A053、SS14「四阿 B2」でステージベストを刻んだ新井選手組は、そのままトップを守りきってフィニッシュ。4年連続で地元・群馬での開催となるMontreの優勝を飾り、開幕から4戦で毎回勝者が入れ代わってきたJN6クラスの2勝目一番乗りとなった。

JN2クラスでは、加納武彦選手/横手聡志選手組(BRZ)が、SS1でステージベストを奪うとその後も好走。セカンドベストやサードベストを多く刻んで、2番手のライバルに5.0秒差をつけてトップで初日を終えた。LEG2に入ると初日3番手の明治慎太郎選手/北田稔選手組(86)が猛追、18.8秒あった差をSS10/11/13と立て続けのステージベストで詰めていく。

追われる立場の加納選手組だが、SS14「四阿 B2」でセカンドベストの明治選手組を5.1秒上回るステージベストを奪取。最終のSS17「四阿 B3」も制し、大会を通じて一度もトップを明け渡すことなくマシンをフィニッシュまで運び、嬉しい全日本選手権初優勝を飾ることに成功した。

JN1クラスでは、今シーズン初参戦となった須藤浩志選手/新井正和選手組(スイフト)が強さを見せた。SS4「大前須坂グラベル 1」を終えてトップに浮上。LEG1では4本のステージベストを奪って、2番手の内藤学武選手/小藤桂一選手組(スイフト)に34.0秒の大差をつけた。また、伊藤隆晃選手/大高徹也選手組(ノート)も3番手につけてヨコハマタイヤ勢が初日のトップ3を独占した。

須藤選手組は、LEG2でも危なげない走りを披露。大量リードを武器に後続のタイムも確認しながら安定したペースでマシンを運び、ベテランらしい戦いぶりで貫祿の優勝。これによりJN6の新井選手と並び、須藤選手も4年連続でMontreを制する結果となった。

DRIVER VOICE

新井敏弘 選手 [富士スバル AMS WRX STI]

【今回の成績 : JN6クラス 優勝】
思ったほど差を開くことが出来なくて、LEG2は四阿で稼いでいくという感じの流れでしたね。ターマックがあるのでタイヤの使い方も難しく、自分はリスクもありますが四阿に照準を合わせ、結果としては上手く行きました。4年連続で地元でのラリーを勝てて、JN6ではシリーズ2勝目一番乗り。ですが全く気を抜ける状態ではなく、シリーズ争いは混戦が続く気配濃厚という感じなので、3週間後の第6戦もしっかり勝てるようにチーム一丸となって臨んでいきます。

加納武彦 選手 [ALEX・KYB・YH・東京スバル BRZ]

【今回の成績 : JN2クラス 優勝】
フィニッシュ直後は自分が勝ったと信じられなくて、でもサービスに帰ってみんなの顔を見たら勝ったという思いが込み上げてきて涙が止まらなくなりました(笑)。ラリーを始めて20年、全日本選手権に出るようになって15年、若手と呼ばれていたのに気がついたらクラス最年長になって初優勝に届きました。今回は足回りを変えて臨んだのですが、そのフィーリングが良かったです。タイヤもADVAN A053は摩耗性能が良いですし、ADVAN A036は舗装の峰の原で凄く良くて「楽しい~」と声が出るくらいでした。二日目はステージ毎の勝った負けたで一喜一憂しないように、落ち着いて臨みました。プレッシャーはきつかったですが、壊れないクルマを作ってくれたチーム、支えてくれたスタッフの頑張りに答えられてホッとしています。

須藤浩志 選手 [スマッシュ BRIG コマツ YH スイフト]

【今回の成績 : JN1クラス 優勝】
スタートからチームメイトの古川寛選手と競り合いになりましたが、古川選手は自分に苦しみを与えるのが好きなようで“ドM”ですよね(笑)。LEG1をトップであがり2番手に大きく差をつけていたので、LEG2の序盤はペースを抑えたのですが、さすがに後続がグッと詰めてきたので気持ちを入れ直して同じようなタイムを刻める走りでフィニッシュまで運びました。半年ぶりの参戦なので不安もあったのですが、初日の峰の原がポイントになったと思っています。難しいラリーだっただけに自分の経験値も活きました。

TECHNICAL INFORMATION

グラベルラリーとして開催された今年のMontreだが、ターマック区間の割合も少なくないだけに、タイヤマネージメントも勝敗をわける大きな鍵になると予想された。最大12本(JN1とJN2は8本)が規則により使用出来るとされており、新井選手組と奴田原選手組はともにADVAN A053でスタートしてスペア2本にADVAN A036を搭載。全線グラベルで約8kmのSS5を終えてフロントをADVAN A036に交換、スポーツランド信州の1回目を終えてサービスでリアもADVAN A036として、残る全線ターマックで2回走行する峰の原とスポーツランド信州の2回目に臨んだ。

LEG1で8本を使用した新井選手組と奴田原選手組は、LEG2スタートでタイヤ選択がわかれる結果に。新井選手組はADVAN A053、奴田原選手組は軟質路面用のADVAN A031を装着した。朝からサービスパークは雨と霧だったため、ステージのコンディションをどう予想するかが判断の分かれ目だったが、結果的にはウェット路面だったもののヘビーウェットまでは至らず。ADVAN A053を選択した新井選手組に分が有る結果となり、4本でLEG2の約40kmを摩耗の面でも問題なく走りきって4年連続優勝を獲得した。