2018 SUPER GT Round 5 Report

【SUPER GT 第5戦/富士】

フォーラムエンジニアリングADVAN GT-Rが今季最上位となる予選2番手、
GT300はグッドスマイル初音ミクAMGが今季初の表彰台を獲得!!

SUPER GT Round 5

開催日 2018年8月4日-5日
開催場所 富士スピードウェイ
(静岡県)
天候 曇り
路面 ドライ
決勝周回数 177周
(1周=4,563m)
参加台数 44台
(ヨコハマタイヤ装着車 25台)
SUPER GT 第5戦

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近年、「耐久の富士」を前面に打ち立てている富士スピードウェイは、6月の24時間レースに続き、クラシックイベントを復活させて、SUPER GTの第5戦を「富士500マイルレース」として開催。500マイルすなわち約800kmとあって、昨年で鈴鹿1000kmが長い歴史に幕を閉じたこともあり、これがシリーズ最長のレースとなる。5月の500kmレースより300km以上長く、なおかつ日本全国で真夏日が続いているだけに、想像を絶する過酷な戦いになるのはもはや必至。ちなみに、この長いレース中には、4回のドライバー交代を伴うピットストップが義務づけられている。

土曜日の公式予選、気温は31度、路面温度は44度と、この時期なりのコンディションの中での走行となった。GT300のQ1トップは、チェッカーが振られたばかりの周に最速タイムを記した「シンティアム・アップル・ロータス」の加藤寛規選手。これに「HOPPY 86 MC」の松井孝允選手、そして「GAINER TANAX triple a GT-R」の星野一樹選手が続き、ヨコハマタイヤユーザーは8台がQ1突破を果たして好調な滑り出しを見せた。

Q2では最後の最後に、「HOPPY 86 MC」の坪井翔選手が躍進を遂げる。「初めてQ2に挑んで、しかも松井選手がすごいタイムを出してきたので、緊張やプレッシャーが半端じゃなかったです」と語りながらもトップタイムを記して、自身初となるポールポジションを獲得することとなった。3番手は「GAINER TANAX triple a GT-R」吉田広樹選手が獲得し、そして谷口信輝選手から7番手でバトンを託された「グッドスマイル初音ミクAMG」の片岡龍也選手が、4番手にジャンプアップ。

GT500では「フォーラムエンジニアリング ADVAN GT-R」が、ヨコハマタイヤユーザーの最上位。オリベイラ選手が担当したQ1は、トップ8が0.4秒差にひしめく接戦となったが、5番手でQ1突破に成功する。続くQ2で高星選手が、セッション終了間際にトップとわずか0.032秒差の2番手に。「ミスしてしまったところもあったので悔しいですけど、その『ミスをする』部分も含めて、今の自分の実力なので、ちゃんと課題として次は改善できるようにしたいです」と高星選手は悔しそうな表情を見せていた。それでもチームとしては、今季ベストのグリッドである。

「WedsSport ADVAN RC F」も山下選手がQ1で4番手につけ、Q2を走行した国本選手も果敢に攻めていくが、上位には届かず6番グリッドとなった。そして、前回同様に好結果を狙いたい「MOTUL MUGEN NSX-GT」だったが、予選前の公式練習でトラブルが発生し、思うように走りこめないまま予選を迎えることに。Q1を担当した中嶋選手は12番手に留まり、Q2に進出することができなかった。

一夜明けて日曜日の決勝レース、スタート直前の気温は31度、路面温度は47度と予選と大差ないコンディション。それでも湿度は極めて高く、マシンやタイヤに対してはまずまずの条件だったとはいえ、不快指数は高かったのは言うまでもない。

「フォーラムエンジニアリング ADVAN GT-R」は高星選手がスタートを担当。レース序盤は2番手をキープし、トップの背後につきチャンスをうかがうも、15周目を過ぎたあたりからペースダウンを余儀なくされる。23周目には1台にパスされ3番手に後退すると、そこから後続集団に飲み込まれ、29周目には5番手にまで後退する。高星選手は、それから2周後にオリベイラ選手に交代。先行するライバルがピット作業に手間取るアクシデントもあり、3番手に復帰する。

オリベイラ選手が担当した第2スティントも出だしはペースも良く、前を走る2台のGT-Rに接近しトップ争いに加わるが、スティント後半になるとペースが伸び悩み、後方のマシンに迫られて60周目に4番手、78周目に5番手に。レース後半は中団グループでの争いとなったが、ドライバーふたりともミスなく走り、最終的に6位でチェッカーを受け、6ポイントを獲得した。

「WedsSport ADVAN LC500」は山下選手が第1スティントを担当。スタート直後の1周目で4番手に浮上し、上位進出の期待も高まったが、2周目以降からペースが伸び悩み、続々と後続のマシンに追い抜かれてしまう。29周目に1回目のピットストップを行い、国本選手にバトンタッチするが、この時すでに13番手まで後退。レース中盤以降も思うようにペースを上げられず、ポイント圏内を争う位置でレースを続けた。しかし、最後まで粘り強く走り続け、ライバルがトラブルで脱落したこともあって10位を獲得した。

そして「MOTUL MUGEN NSX-GT」は予選からの手応えも考慮し、ライバルたちより1回多い5回ストップ作戦を敢行。中嶋選手がスタートドライバーを務め、序盤は9番手を走行するが、徐々にペースが上がらなくなり、少しずつ順位を落としていく苦しい展開に。さらにレースも残り12周となった163周目に、マシントラブルが発生。最終スティントを担当していた武藤選手は、コース脇にマシンを止める。14位完走扱いとなったものの、チェッカーを受けることはできなかった。

GT300ではポールポジションからスタートを切った、「HOPPY 86 MC」の坪井選手が7周目までトップを走るも、ストレートパフォーマンスに優れるFIA-GT3勢を抑え続けることは許されず。9周目には「GAINER TANAX triple a GT-R」の吉田選手にも、坪井選手はかわされてしまう。

このままでは、ズルズルと順位を落としてしまうと判断した土屋武士監督は、得意とする巧みな戦術の駆使で対処。「最初のピットでは右2本、次が左2本で、その次が無交換。最後は4本交換で!」で、タイムロスやタイヤの負担を最小限に。この戦術がピタリとはまり、予選トップから5位まで落としたとはいえ、本来はマザーシャシーが苦手とする富士で過去2年間、果たせなかった入賞に成功することとなった。

ヨコハマタイヤユーザーで、最上位を得たのは「グッドスマイル初音ミクAMG」。第1スティントでは予選同様4番手をキープし、タイヤ交換にも策を練るはずが、スタートを担当した片岡選手の指摘によって、すべてドライバー交代と併せてタイヤを4本とも換えることに。この判断が功を奏し、絶えずプッシュすることが可能となって2位にまで上り詰めることになった。

6位でゴールしたのは、最後尾スタートだった、平峰一貴選手とマルコ・マペッリ選手の「マネパランボルギーニGT3」だ。マペッリ選手がQ1を突破したはずが、走路外走行のペナルティとして当該タイムが抹消されて、しかもワンアタックに留めていたためだ。そこでマペッリ選手は、スタートからわずか1周で平峰選手に交代。素早くコースに戻ったこと、平峰選手が行く手を阻まれずに周回を重ねられたことが、上位との差を詰める要因となった。

DRIVER VOICE

J.P.デ・オリベイラ 選手 [フォーラムエンジニアリングADVAN GT-R]

【今回の成績 : GT500クラス 6位】
正直、今回のレース全体を振り返ると、僕らに追い風が吹かなかったレースとなった。もちろん優勝や表彰台を目指してレースをスタートしたけど、今週のライバルタイヤメーカーを履くチームはとても強かった。特に、どのライバルともにレース後半になると速くなっていく印象を受けた。今週末は僕たちドライバーとチーム全員がベストを尽くしたけど、残念ながら優勝争いに加われなかったね。SUGOは例年ヨコハマタイヤ勢が得意としているコースだから、少しでも良い結果が出るように、また準備して臨むこととするよ。

山下健太 選手 [WedsSport ADVAN LC500]

【今回の成績 : GT500クラス 10位】
全体的に苦しいレースでしたね。予選で一発のタイムを出す分には問題ないんですが、決勝レースになると顕著に(パフォーマンスの)差が出てしまいました。特に今日みたいに富士スピードウェイで長いレースになると、決勝でのレースペースが速くないと、追い抜かれて終わりになってしまいますが、そこが今回は足りなかったです。その中でもポイントを獲ることができたのは、良かったと思います。

武藤英紀 選手 [MOTUL MUGEN NSX-GT]

【今回の成績 : GT500クラス リタイア】
今週末は自分たちが想像していたより、結果がついてきませんでした。もうちょっと戦えるかなと思っていましたが、厳しかったですね……。初めから(他と比べて)1スティント多く行くという作戦を立てていました。ただ、昨日のトラブルもあって、メニューを十分にこなせないまま予選・決勝になってしまって。とはいえ、全然レースにならない感じだったので、悔しさを通り越して落胆しているというのが、正直な感想です。

谷口信輝 選手 [グッドスマイル初音ミクAMG]

【今回の成績 : GT300クラス 2位】
今年は大きなポイント獲れていなくて、ランキング10位以下だったのが上がってくれたのは嬉しいけど、BMWが速すぎましたね。今回はヨコハマさんがとてもいいタイヤを用意してくれて当初の予定では、最初のピットで4本交換、次が左2本交換、また4本交換、最後も左2本交換の予定だったんですが、急きょ予定を切り替えて毎回4本交換で行こうと。その分、プッシュしまくれたのが良かったのでしょうね。実際、ずっといいタイムで走れる感じでした、タイヤの恩恵で。次のSUGOはコーナリングサーキットなので、そこは頑張りたいと思いますが、僕らの得意なところはJAF-GTやMCも得意なので、向こうも狙ってくるだろうし……。まぁ、FIA-GT3の中で我々は1番を目指したいと思っています。

坪井 翔 選手 [HOPPY 86 MC]

【今回の成績 : GT300クラス 5位】
初めてポール獲れたのは嬉しかったのですが、レースになると思ったより……。もうちょっと保つかと思ったんですけれど。本当はもっと無交換とかで行きたかったんですが、計算よりも交換しなきゃいけない状況になったので、そこが大きくて。交換しても、そんなにペースが上げられなかったので、そもそものスピードが足りなかった感じがしたので、タイヤだけじゃないと思うし、結構難しかったですね。ただ、5位という結果はとても良かったと思いますし、苦手な富士でボーナスポイントをもらえたと。もっとできることがあったんじゃないか、っていう悔しさはありますが、5位で終われたのは良かったです。

ENGINEER VOICE

藤代秀一 [横浜ゴム MST開発部 技術開発1グループリーダー]

ヨコハマタイヤ勢の中だけの話をすれば、予選で24号車(フォーラムエンジニアリングADVAN GT-R)が2番手だったり、同じ富士でも第2戦ほどレースもひどくなかったりしたので、少しはステップアップできているかな、というのはあるのですが、他社と比較した部分では全然ダメだということですよね。

一発は出せるけれど、レースがダメというのは改善していかなくてはならないところです。なんとか2台入賞してくれましたが、これに満足せず、表彰台目指して頑張らなきゃいけないというのと、この後すぐSUGOでテストがあるのですが、SUGOを含め後半の3戦に関しては全て事前テストがあります。なので、きちんと開発を進めて巻き返しを図りたいと思っています。

GT300は0号車(グッドスマイル初音ミクAMG)のおかげで、他社さんの表彰台独占を防ぐことができたのですが、ウチのユーザーさんはいろんな作戦を、必死にやり繰りしてくれた上での結果なので、もっと普通にレースをしてもらって速く走れるようにしないといけないな、と思いましたね。25号車(HOPPY 86 MC)もそう。タイヤ交換を細かく考えてやってくれて、チームとドライバーのおかげです。

いずれにせよ、他社さんの追い上げが激しくて、それに対抗できていないのが正直なところかと思いますが、なんとかタイヤとチームの総力を合わせて、勝ちに行きたいですし、シリーズも諦めずに狙っていきたいと思っています。