2018 SUPER GT Round 1 Report

【SUPER GT 第1戦/岡山国際】

激戦で幕を開けた2018年のSUPER GT、
GT300クラスではヨコハマタイヤ勢が表彰台を独占!!

SUPER GT Round 1

開催日 2018年4月7日-8日
開催場所 岡山国際サーキット
(岡山県)
天候 曇り
路面 ドライ
決勝周回数 82周
(1周=3,703km)
参加台数 44台
(ヨコハマタイヤ装着車 25台)
SUPER GT 第1戦

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国内レースの最高峰として大人気を誇るスーパーGTは、例年どおり岡山国際サーキットで幕を開けた。元F1チャンピオンのジェンソン・バトン選手の参戦など話題は豊富で、今年もシリーズは大いに盛り上がりを見せそうだ。

今年もGT500には3台のヨコハマタイヤユーザーが挑む。ドライバーラインアップに変化があったのは、そのうち2台で、「WedsSport ADVAN LC500」には山下健太選手が加わって、国本雄資選手と、「フォーラムエンジニアリングADVAN GT-R」には高星明誠選手が加わって、ジョアオ・パオロ・デ・オリベイラ選手と、それぞれ新たにコンビを組むこととなった。「MOTUL MUGEN NSX-GT」は体制不動。引き続き武藤英紀選手と中嶋大祐選手がコンビを組む。昨年は優勝に恵まれなかったが、それぞれ力は備えているだけに、まずは1勝を挙げ、そしてチャンピオンを目指して欲しいところだ。

一方、ゼッケン0を誇らしげに背負って挑む、谷口信輝選手と片岡龍也選手の「グッドスマイル初音ミクAMG」を始めとして、29台中22台がヨコハマタイヤユーザーと、圧倒的な勢力を誇るのがGT300。狙うはもちろん連覇である。

走り初めとなる公式練習では二度の赤旗中断があったり、クラス単独のセッションとなる終盤に突然強い雨が降り出したりと、それぞれ最終的な詰めができず一抹の不安を残した格好だが、それは全車に共通する状況として、再びドライコンディションとなった予選に挑むこととなった。

GT300ではチームを移籍して、初めて予選に挑んだ坪井翔選手の駆る「HOPPY 86 MC」をトップに、「シンティアム・アップル・ロータス」の加藤寛規選手が2番手につけるなど、ヨコハマタイヤユーザーは7台がQ1突破を果たして、好発進を遂げた一方で、なんと「グッドスマイル初音ミクAMG」の谷口選手が15番手で、本当にあと一歩のところでQ2に挑めずの波乱も……。今年のBOPはFIA-GT3勢に厳しいと、もっぱらの噂だったが、それが現実のものとなってしまう。

一方、Q2が間もなく始まろうという頃、またしても上空からは強い雨が!! 瞬く間にコースは濡れて、とてもドライタイヤでは走れぬ状況となってしまう。そんな厳しい条件の中、力走を見せたのが「マネパランボルギーニGT3」を、平峰一貴選手とともに新たにドライブすることとなったマルコ・マッペリ選手だった。ランボルギーニのファクトリードライバーとして、ウラカンのすべてを知るドライバーが、公式テストしか走ったことのない、もちろんウェットコンディションでは初めてのコースでも、実力を遺憾なく発揮してトップに立つこととなった。

GT500のQ1は、「フォーラムエンジニアリング ADVAN GT-R」は高星選手が担当。気温と路面温度が低いコンディションの中で、しっかりとタイヤをウォームアップさせ、コースレコードにも迫るタイムを叩き出し、Q1をトップで通過した。一方、公式練習でトップタイムをマークし、好調な滑り出しを見せた「WedsSport ADVAN LC500」は、山下選手が担当し、午前とコンディションが異なったこともあってトップタイムとはならなかったものの、7番手につけてQ2進出を果たす。しかし、武藤選手がQ1を担当した「MOTUL MUGEN NSX-GT」は武藤選手が最後までタイム更新のためにタイムアタックを続けたが12番手で、0.3秒届かず無念のQ1敗退となった。

やはり雨に翻弄されたQ2では、「フォーラムエンジニアリング ADVAN GT-R」が、オリベイラ選手が難しいコンディションの中6番手につけて、「WedsSport ADVAN LC500」は、国本選手が続く7番手となった。

日曜日の決勝は青空が広がり、ようやく完全なドライコンディションに。13時05分から決勝直前のウォームアップ走行が行われるが、そのセッション終了直後にピットに戻ってきた「WedsSport ADVAN LC500」の左リアタイヤ付近から白煙が上がり、消火器がかけられるハプニングが発生。これは、ブレーキが発熱しすぎたことが原因で、ブレーキダクトの開け方を調整するなど対策を施し、無事にグリッドに着くこととなった。

決勝のスタートでは、グリーンシグナル点灯直後に最前列にいたマシンが思うように加速しなかった影響で後方は混乱。この影響で「フォーラムエンジニアリング ADVAN GT-R」のオリベイラ選手が、一気に順位を上げ3番手に浮上するも、コントロールラインを通過する前に他車を抜いていたとしてジャンプスタートの判定に……。ドライビングスルーペナルティを受けることになってしまう。

オリベイラ選手は、23周目にピットイン。これで14番手まで後退してしまう。しかし、その後も粘り強く周回を重ね、41周を終えたところで高星選手にバトンタッチ。これで12番手まで順位を下げたが、後半のペースも非常に良く、前のマシンを抜き続けていって72周目には6番手に浮上。そのポジションをキープし、チェッカーを受けた。

「WedsSport ADVAN LC500」は山下選手がスタートドライバーを担当。11周目には今季からフル参戦する元F1チャンピオンのジェンソン・バトン選手を、バックストレート終わりのヘアピンでオーバーテイクするなど見せ場を作った。またタイヤのパフォーマンスも安定しており、レースの折り返しを過ぎた44周まで引っ張ってピットイン。そこから国本選手がマシンに乗り込んだ。しかし、後半はなかなかペースを上げることができず、一時は6番手を走行していたものの、終盤にかけて順位を落とし、最終的に9位でフィニッシュした。

そして「MOTUL MUGEN NSX-GT」は、スタートドライバーを務めた武藤選手が、レース前半はなかなか上位に食い込めず苦しい展開となったものの、46周まで引っ張ったところで、ようやく中嶋選手とバトンタッチ。ここで左フロントタイヤのみを交換するという作戦に出て、ピットタイムを大幅に短縮する。これが功を奏し、ピットアウト後はポイント圏内でバトルを繰り広げ、最終的に10位でチェッカーを受けて1ポイントを獲得した。

GT300はポールポジションからスタートを切った、「マネパランボルギーニGT3」の平峰選手が絶妙のダッシュを決めたが、後続を引き離すまでには至らず。わずか7周でトップを明け渡した後、順位を落としてしまう。そこから先は激しいトップ争いが繰り広げられ、めまぐるしく順位が入れ替わる中に加わっていたのが「HOPPY 86 MC」の坪井選手だった。が、その間トップに立てなかった無念は後半を担当した、松井選手が晴らす。30周目の交代と併せ、得意とするタイヤ無交換作戦を実施、全車がドライバー交代を終えた時には、待望のトップに立っていたからだ。

ただ、松井選手にとって唯一の誤算があったとしたら、松井選手がコースに戻った時から「UPGARAGE 86 MC」の小林選手が、ピタリと背後につけていたことだろう。28周目に中山友貴選手からマシンを託された小林選手もタイヤ無交換で、ロスを最小限にしていたからだ。2台でのバトルは長らく続くも、松井選手は最後までトップを守ることはできなかった。57周目のWヘアピンで前に出た小林選手は、そのまま逃げ続けていく。

さらに今度は、「D’station Porsche」のスヴェン・ミューラー選手までもが松井選手に急接近。予選は20番手で、藤井誠暢選手が決勝でも徐々に順位を上げるに留まっていたが、トップとの間隔が開かぬばかりか、むしろ縮まっていたことが福音をもたらすことに。タイヤをリア2本の交換として一気に順位を上げていたのだ。そして72周目のヘアピンでは、18台抜きとなる2位浮上を果たすこととなる!!

激動の展開の中、終わってみればヨコハマタイヤユーザーは表彰台の独占に成功。最高のスタートを切ることとなったが、やや気になるところは「D’station Porsche」以外のFIA-GT3勢の低迷。「マネパランボルギーニGT3」が7位、左側2本のタイヤ交換とした「グッドスマイル初音ミクAMG」も順位を上げてきたとはいえ、続く8位に甘んじた。これまで得意としてきた次戦、富士スピードウェイでの戦いに巻き返しをはかれるよう、スタッフも最大限の努力を約束した。

DRIVER VOICE

J-P・デ・オリベイラ 選手 [フォーラムエンジニアリングADVAN GT-R]

【今回の成績 : GT500クラス 6位】
スタートは危険な状況だった。グリーンシグナルが点灯してから、最前列の車両が減速した。僕たちはすでに加速していたから、急いで接触を回避したんだけどね。今年から新しいスタートシステムになったけど、今回の件はすごく危険だなと感じた。今後みんなと話して改善していければいいなと思う。とはいえレースペースも含めて、昨年からと比べるとかなり進歩はできているよ。タイヤもそうだし、僕や高星選手を含め、チーム全体のレベルが上がっている。今シーズンに関してはすごくポジティブな印象を持っているよ。

山下健太 選手 [WedsSport ADVAN LC500]

【今回の成績 : GT500クラス 9位】
今回はタイヤメーカーによってウォームアップにかかる時間がバラバラで、その影響もあってスタート直後の1周目は特に混乱しました。その中でポジションを落としてしまったのが、非常に悔やまれます。でもペースは悪くなくて、40周目になっても良いタイムが出ていたので、自分のスティントとしては悪くなかったです。次の富士はテストでも好調でしたし、ウェイトハンデもそんなに多くはないので、上位を狙いたいですね。

武藤英紀 選手 [MOTUL MUGEN NSX-GT]

【今回の成績 : GT500クラス 10位】
今回はポイントを獲得するのが目標だったので、それが達成できて本当に良かったです。もともとタイヤ無交換を狙っていたわけではないですが、気温も低かったので、タイヤも保つだろうと思って、最終的には左フロントタイヤのみを交換しました。昨年と比べるとかなり進歩していると思いますし、岡山のサーキットに関してはヨコハマタイヤさんとNSX-GTの相性が、そこまで良くないとわかっていた中で、どうやって(課題を)クリアするかというのを考えていました。こうしてポイントが獲れたので、大きな一歩になりました。次の富士は、テストでの感触はここ(岡山)より良かったので、期待できるかなと思います。

中山友貴 選手 [UPGARAGE 86 MC]

【今回の成績 : GT300クラス 優勝】
僕は初優勝なので、個人的にも嬉しいです。今年は体制を変更して挑んだんですが、その中でSRS-Fで同期のドライバー、小林選手に加入してもらって、本当にいい走りをしてくれました。天候に振り回されてしまい、予選は9番手でJAF-GTは前にいないと勝負権がないと思っていたので、かなり複雑な心境だったんです、実は。僕が前半スティントを担当して、とにかくタイヤ無交換のために、どれだけセーブできるかが僕の仕事でした。その状態でトップグループが見えていたし、あとは小林選手がなんとかしてくれるだろうと。いいオーバーテイクをしてくれました(笑)。タイミングも良かったけれど、ヨコハマタイヤとチーム、総合力の高さで得られた優勝だと思います。2013年にチャンピオンを獲っていますが、あの時は1回も勝てなかったので、今年は最高のスタートが切れました。これからもいい戦いをしていきたいですね!

藤井誠暢 選手 [D’station Porsche]

【今回の成績 : GT300クラス 2位】
本当はポルシェと岡山の相性は良くないので、ポイントが取れればいいな、と思っていたんですけど、選んでいるタイヤが結構硬めだったので、昨日の予選は苦戦したんですけど、決勝のペースは絶対いいな、と思っていて。だけど、計算以上にパーフェクトでした。あんなに追い上げられるとは思っていなかったけど、クルマもパーフェクトで、予想どおりタイヤも合っていたので、パフォーマンスの高さに助けられました。表彰台に乗らなくても4位でも十分かなと思っていた中で、この2位はすごく大きいですね。 

松井孝允 選手 [HOPPY 86 MC]

【今回の成績 : GT300クラス 3位】
予選は雨に見舞われて、できれば晴れたままでポールポジションも獲りたかったんですが、ウェットはウェットで戦えるってのも確認できました。もちろんポールはちょっと厳しかったんですけど、その中でも戦えるのはわかったので、そこは良かったと思います。後半トップに立ちましたが、18号車の方がペース良かったのは、そこに何かヒントがあるような気がするので、予選的にはクルマは速いんで、次は決勝も速いクルマにしていきます。

ENGINEER VOICE

藤代秀一 [横浜ゴム MST開発部 技術開発1グループリーダー]

GT300は久々に表彰台を独占できて、すごく良かったです。マザーシャシー勢が無交換で頑張ってくれましたし、7号車(D’station Porsche)も表彰台に立てた一方で、他のGT3は今回のコンディションにうまくマッチせず、そこは課題となってしまいました。次回の富士でなんとか巻き返しをはかりたいところです。

GT500は実際のところ、予選までの路面温度が低すぎてタイヤ選択が厳しくなってしまったし、悪条件でロングスティントができず、不安はありました。それは他社さんも一緒だったとは思うんですが……。ただ、今日のコンディションからすると、それほど大外しをしたという印象ではないんですよ、表彰台も密かに狙っていたぐらいなので、届かなかったのは悔しいですが。去年はクルマが大きく変わって、なかなかマッチングを取れず成績を残せませんでしたが、今年はオフの間にしっかりテストができたので、3台ともパフォーマンスそのものは上がっていると思います。今回から構造、コンパウンドともにすべて新しくしたんですが、そのあたり機能していたのも確認できました。各車、新しくしたエアロが、うちのタイヤにはいい方向にあるようです。

次回の富士は公式テストの結果も良かったですし、3台揃っていい結果を残せたら、と思っています。