2017 JRC Round 6 Report

【全日本ラリー選手権 第6戦/北海道洞爺湖町】

Day1から波乱続きのサバイバルな一戦となったラリー洞爺、
JN5クラスでは川名賢選手組が今季初優勝を飾った!!

JRC Round 6

開催日 2017年6月30日-7月2日
開催場所 北海道洞爺湖町 近郊
天候DAY1) 晴れ
DAY2) 晴れ 時々 曇り
路面 DAY1) ドライ
DAY2) ドライ
グラベル(非舗装路)
総走行距離 499.06km
SS総距離 89.12km (15SS)
得点係数 1.2 (非舗装路50km~100km)
参加台数 56台 (オープンクラス含)
(ヨコハマタイヤ装着車 18台)
全日本ラリー選手権 第6戦

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全9戦のうち2戦がグラベル(非舗装路)ラリーとなる2017年の全日本ラリー選手権、今季初のグラベルを舞台とする戦いが「2017 ARK ラリー洞爺」だ。2011年から北海道を代表する温泉地のひとつである洞爺湖温泉に拠点を移した本大会は、その1年目からエントリーした3分の1がリタイアを喫するサバイバルラリーであった。

2017年は前年も使った洞爺湖温泉の北側に位置する3つの林道に加え、新たに蘭越町に3つのステージが設けられた。ここは地区戦でも使われたことがなく地元勢も初めて走るステージだが、道幅が狭くまわりこんだコーナーも多いために難易度の高さをレッキ後に多くの選手が口にしていた。これら林道に、サービスパークからほど近い砂防ダムに設けられたSSS(スーパースペシャルステージ)を加えた全15本、合計距離89.12kmで競われる。

競技は金曜日の夕方に行われた、SS1「SSS NEW VOLCANO 1 (0.70km)で幕を開けた。このショートステージで昨年の大会を制している奴田原文雄選手/佐藤忠宜選手組(ランサー)はトップと0.1秒差のセカンドベスト、一昨年には親子ワン・ツーで優勝を飾ったことも記憶に新しい新井敏弘選手/田中直哉選手組(WRX STI)は0.6秒差の4番手タイムとなり、まずは上々の滑り出しを見せた。

一夜明けた土曜日、いよいよ戦いは林道ステージへと舞台を移す。その皮切りとなるSS2「STREAM 1 (11.24km)」は大会最長の10kmを超えるステージ、接戦が予想されるだけに各選手はスタートから全開のアタックで攻めていく。しかし、ここでまさかの波乱が。ゼッケン3をつける新井選手組が、ストレートからの右コーナーとなるスタートから160mの地点でまさかのコースオフを喫して早々に戦線から姿を消してしまった。

一方、ランキングリーダーの奴田原選手組はSS4でトップに立ち、主導権を固めるべくステージを攻略していく。ところが1回目の走行でステージベストを奪っている「KNOLL (8.04km)」のリピートとなるSS6でこちらもまさかのコースオフ、マシンに大きなダメージを負ってしまいリタイアという残念な結果に終わってしまった。

JN6クラスではヨコハマタイヤ勢が次々とアクシデントに見舞われてしまい、終わってみれば満身創痍の中で地元の井土卓治選手/松川萌子選手組(ランサー)のみが完走。このほかの5クルーは、残念ながらリタイアとなってしまった。

厳しい展開となったJN6クラスだったが、このほかのクラスではヨコハマタイヤ勢が表彰台を飾って強さを見せた。JN5クラスの川名賢選手/保井隆宏選手組(208 R2)は、第2戦からここまでシトロエン・DS3 R3MAXを駆って出場し4連続準優勝を獲得してきている。今回はプジョー・208 R2での参戦となるが、SS1からベストを奪うと林道ステージではさらにライバルよりも経験値で勝るところをタイムで実証していく。SS2での1kmあたり約3.8秒にはじまり、ステージを重ねる毎にライバルとの差を拡大していく。

金曜日のSS1から7連続ステージベストを奪い、Day1をライバルに2分02秒7差のトップで終えた川名選手組。この勢いは日曜日のDay2でも衰えることはなく、この日7本のSS中5本でステージベストを叩き出した。終わってみれば総合でも6番手に食い込み、待望の今シーズン初優勝を獲得。ポイント係数の高いグラベルラリーを制したことで、タイトル争いがますます白熱するリザルトとなった。

JN2クラスではシリーズリーダーの明治慎太郎選手/北田稔選手組が本大会をスキップした一方、「復活コンビ! TRD プロクル 86」というユニークな車両名称のトヨタ・86がエントリーリストに名を連ねた。これを駆るのは石田雅之選手と高杉哲也選手、18年ぶりのコンビ復活ということで話題を集める存在だ。

タフな展開の中でこそベテランの卓越したテクニックが光り、Day1は8本中7本のステージでベストタイムをマーク。Day2も7本中6本のステージを制する貫祿の走りを見せて、石田選手はトヨタ・ヴィッツで参戦した2015年の第5戦・モントレー以来となる全日本での優勝を飾った。また、高杉哲也選手とのコンビでは、トヨタ・セリカGT-FOURで参戦した1987年の「ひろしまカップ ラリースピリット」以来の優勝となる。さらにJN2クラスは、猪股寿洋選手/高篠孝介選手組(86)が土曜と日曜に各1回のステージベストも奪う力走を見せて準優勝を獲得、ヨコハマタイヤ勢がワン・ツー・フィニッシュとなった。

さらにJN1クラスでも、ヨコハマタイヤ勢がワン・ツー・フィニッシュを達成。須藤浩志選手/新井正和選手組(スイフト)は土曜日の午前のセクションではステージベストに届かなかったが、1回目のサービスで足回りのセッティングを最適化。これにより午後のセクションで一気にタイムアップ、SS5「MAGNOLIA (5.43km)」から3連続ステージベストを刻んでいく。一方でチームメイトのライバルがデイ離脱となったこともあり、後続に対して大量マージンを構築してDay1を終えた。

Day2はスーパーラリーで復帰したチームメイトにベストを譲るも、タフな一戦で安定した速さを見せながらフィニッシュへとマシンを運んだ須藤選手組が、グラベルラリーの今季初戦を制した。そして、これに続いたのが地元北海道の田中伸幸選手と、九州の星野元選手という大ベテランコンビ。Day1のSS8「NEW VOLCANO 2」、Day2では最終ステージの「LAVENDAR LONG 2 (9.02km)」でベストを奪う力走で準優勝を飾ることに成功した。

 

このほか、JN4クラスでは山口清司選手/山本磨美選手組(86)が、第3戦から4大会連続の表彰台獲得となる3位でフィニッシュ。JN3クラスでも藤田幸弘選手/藤田彩子選手組(デミオ)が、今季初表彰台となる3位を獲得した。

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DRIVER VOICE

川名 賢 選手 [YH クスコ ラリープラス 208 R2]

【今回の成績 : JN5クラス 優勝】
今年初優勝を飾ることが出来て、安心しましたというのが正直な気持ちです。今回はプジョー・208 R2での参戦でしたが、Day1の総合順位を見てもまずまず許せるかな、という内容を残すことが出来たと思っています。もうちょっと車の特性を理解して走らせられるようになれば、もっとタイムを詰めていくことが出来るという手応えは掴んでいます。シリーズを考えても良い結果となりましたし、天王山とも言える次のRally Hokkaidoに向けての今回の参戦でもあったので、次はさらにキレのある走りをしたいと思っています。

山口清司 選手 [jms エナペタル ADVAN 久與 86]

【今回の成績 : JN4クラス 3位】
PLUMの2本目でライン上にタイヤが落ちていて避けきれず、乗り上げて自分のタイヤを壊してヒヤッとする場面もありましたが、後ろとのタイム差があったのでフィニッシュまでマシンを運んで表彰台を飾ることが出来ました。グラベルのセッティングに少し課題があり、車が思ったように動いてくれていないんです。Rally Hokkaidoはスキップするので、ここは来年に向けてしっかり詰めていかなければなりませんね。次の参戦を予定しているハイランドマスターズまで間が空くので、エンジンをはじめ車の戦闘力を高めて行こうと思います。

藤田幸弘 選手 [エムスポーツ BRIG デミオ]

【今回の成績 :JN3クラス 3位】
今季初のグラベルラリー、楽しく走れたので良かったですね。土曜日のステージは路面がザクザクだったので、どう走らせたら速いのかを考えて臨みました。日曜日のステージは例年通りでしたが、ドライで路面も硬く締まっていたので、気持ちよく走れましたね。ターマック(舗装路)が苦手というわけではないのですが、どうしてもマシンのパワー勝負になってしまいがちなので、グラベルのほうが可能性は高いのかな、というところでもありますね。

石田雅之 選手 [復活コンビ! TRD プロクル 86]

【今回の成績 :JN2クラス 優勝】
無理しないくらいがちょうどいい、そんな感じで走りきったタフな一戦でした。初日の段階で、きついコーナーもある「STREAM」や「KNOLL」でタイムを稼いで、クラスの中では後続に大きな差をつけることが出来ました。裏話ですが、コーナーでサイドブレーキをかけようとレバーを引いたらロックしてしまったんです。これまで乗った別の86ではロックしないようになっているのですが、今回の車は何かの拍子にロックするんですね。「あれれっ!?」となって挙動が乱れた場面があったのですが、そこからはサイドブレーキの操作も慎重に行いました(笑)。久しぶりのコンビで優勝出来たことは、本当に嬉しいですね。

猪股寿洋 選手 [WAKOS☆PIAA☆BRIG☆YH 86]

【今回の成績 :JN2クラス 2位】
金曜日のSS1でいきなりドライブシャフトを折って、土曜日は最下位からのスタートとなってしまいました。しかし、最後まで諦めずに走った結果として、準優勝となれて良かったです。SS1が終わったときには「どうなることやら?」と思ったりもしましたが、やはり最後まで走りきってこそのラリーですね。戦いを支えてくれたメカニックに感謝ですし、こうして結果で恩返しも出来てホッとしています。次のRally Hokkaidoにも同じクルーで臨みますが、86で初のグラベルラリーとなった今回、危ないところの抑え方とかを学ぶことも出来ました。

須藤浩志 選手 [スマッシュ BRIG ダイニチ YH スイフト]

【今回の成績 :JN1クラス 優勝】
今回もチームメイト同士の戦いから始まりましたが、Day1の前半はいまひとつタイムが伸びませんでした。そこで1回目のサービスではチームメイトから情報をもらってセットアップを修正したらタイムが出るようになり、これで並べるかなと思ったらチームメイトが戦線から消えて、随分と楽な展開に結果的としてはなりました。“一人旅”という状況になって、Day2の前半では少しリズムを失ってしまったところもありますが、後半で気合いを入れなおし、車が壊れないようにバランスをとりながら走りきることが出来ました。次のRally Hokkaidoは正念場だと思うのですが、そこに向けてさらに良いセッティングを見つけられたので収穫の大きい一戦でした。

田中伸幸 選手 [タイム アドバン WM J&S スイフト]

【今回の成績 :JN1クラス 2位】
土曜日のステージは私も走ったことが無かったのですが、北海道に無いタイプの道でしたね。タフな展開になりましたが、コンビを組んだ星野選手の目には「土曜日の走りはヘロヘロだったけれど、日曜日は昔に戻ったね」と言われました(笑)。週末を通じて雨は無く気温も高めでしたが、日曜日は2回タイヤを壊してしまって交換作業をしたのがしんどかったですね。星野選手とのコンビは、年齢を足すと120歳オーバーなのです。安心感のあるコ・ドライバーと組むと自分は車を走らせることに集中出来るので、楽しく戦えた洞爺でした。

TECHNICAL INFORMATION

週末を通じて雨は無く、全てがドライ路面での戦いとなった今年のラリー洞爺。土曜日のステージは北海道としては珍しくテクニカルな要素も強く、道幅が狭いこともあって難しさを感じた選手も多かったようだ。さらに2ループ目ではワダチが掘れたところに大きな石が現れるなどして、タイヤや足回りを壊してしまう選手も続出するタフな展開となった。

JN6のヨコハマタイヤ勢は、この新しいステージの洗礼を受けてしまったこともあり、リザルトは厳しい結果となった。しかし、土曜日にデイ離脱を喫したもののスーパーラリーで日曜日には復帰した新井敏弘選手組は、5本のステージでベストを叩き出してDay2のトップとしてデイポイントも獲得する速さを見せた。