2017 JRC Round 5 Report

【全日本ラリー選手権 第5戦/群馬県嬬恋村】

今年も天候に翻弄されタフなコンディションとなったモントレー、
JN6クラスはヨコハマタイヤ勢が3年連続のワン・ツー・フィニッシュ!!

JRC Round 5

開催日 2017年6月9日-11日
開催場所 群馬県嬬恋村 近郊
天候DAY1) 晴れ のち 雨
DAY2) 晴れ
路面 DAY1) ドライ~ウェット
DAY2) ドライ
ターマック(舗装路)
総走行距離 387.506km
SS総距離 74.198km (16SS)
得点係数 1.0 (舗装路50km~100km)
参加台数 47台 (オープンクラス含)
(ヨコハマタイヤ装着車 20台)
全日本ラリー選手権 第5戦

[Photo]

[Photo]

[Photo]

[Photo]

[Photo]

[Photo]

[Photo]

全9戦のカレンダーで競われる2017年の全日本ラリー選手権は、折り返しとなる第5戦「モントレー2017 in 嬬恋」が群馬県嬬恋村をホストタウンに開催された。2月に当地で行われた開幕戦のスノー&アイス路面での戦いから4ヶ月、この間に3週ごとの開催で消化してきたターマック(舗装路)戦の締めくくりとなる一戦である。

モントレーの名が全日本選手権に復活して6年目、渋川から嬬恋にホストタウンを移してからは4年目の開催となるが、振り返ってみるとこの一戦はヨコハマタイヤ勢が速さを見せてきている。渋川時代は奴田原文雄選手組が2年連続で優勝を飾った。嬬恋に移ってからは2015年から新井敏弘選手組が優勝、奴田原選手組がこれに続くワン・ツー・フィニッシュを続けている。

そしてモントレーといえば、渋川時代から天候が勝負を左右する大きな要素となってきた。突然の豪雨によるコンディションの急変も珍しくなく、タイヤにとってはドライからウェットまで対応領域幅の広さが試される。今年は例年よりも開催時期が早められたがラリーウィークの水曜日に関東甲信地方の梅雨入りを気象庁が発表。結果的にモントレーは、今年も天候に翻弄される展開となった。

例年と同じパルコール嬬恋スキーリゾートを拠点に開催されるモントレーだが、今年は名物となっていたハイスピードSS(スペシャルステージ)の「Panorama」が姿を消した一方で、県境を超えて長野県の菅平高原に新たなSS「Minenohara (10.779km)」が設けられた。このステージは大会最長であり、前半は主に中速コーナーが連続するが後半は七曲がりのようなヘアピンコーナーで構成される。さらに標高はスタート地点が約650m、フィニッシュは1,510mという登りセクションであり、トップドライバーが口を揃えて難しいステージと評した勝負どころのひとつと目された。

Day1が行われた6月10日(土)の朝、パルコールは青空が顔を見せていた。まずはドライコンディションで幕を開けた今年のモントレー、オープニングのSS1「Gunmazaka 1 (2.271km)」を地元・群馬の新井敏弘選手/田中直哉選手組(WRX STI)が制して幸先よいスタート。このまま新井選手組は4連続ステージベストでセクション1を終了、2番手には奴田原文雄選手/佐藤忠宜選手組(ランサー)が5.1秒差で続いて、早々にヨコハマタイヤ勢がワン・ツー・フォーメーションを構築した。

1回目のサービスをはさんで、戦いはセクション2へ。SS2のリピートとなるSS5「Sajiki 2 (3.984km)」では奴田原選手組が本大会初のベストを刻むと、新井選手組がSS6を制して、「ADVAN A052」で戦う日本を代表するトップラリードライバー同士が激しい応酬を繰り広げる。

そして迎えた、SS7「Minenohara 1」。このころ上空は灰色の雲に覆われていた。ひとつ前のSS6「Omae Suzaka Up 1」でもポツポツと雨が落ちてきていたが、路面が濡れるには至らず。ただ、いつ本降りになってもおかしくない状況の中で、SS7がスタートした。ペースノートの精度も求められる難しいステージ、ここでトップを奪ったのは新井選手組、セカンドベストが奴田原選手組、さらにサードベストでこちらも地元・群馬の竹内源樹選手/加勢直毅選手組(WRX STI)が続いて、ヨコハマタイヤ勢がライバルを寄せつけない速さを見せた。

リモートサービスをはさんでSS8は再び「Minenohara」。しかし、この間に雨が降り始めて路面がウェットへと変化していったのみならず、濃い“もや”がコースを包んでしまう。ますます難易度は高まったが、だからこそ世界の舞台を戦ってきた選手の実力が遺憾なく発揮される。ベストを奪ったのは奴田原選手組、フィニッシュ手前のコーナーでマシンの一部を破損したものの走行には支障無く、新井選手組との差を詰めた。そしてDay1の締めくくりとなるSS6のリピートとなるSS9「Omae Suzaka Up 2」は完全なウェットコンディション、ここでも奴田原選手組が連続ベストを奪取。初日を終えてトップは新井選手組、2.8秒差の2番手が奴田原選手組、3番手のライバルはそこから36.9秒差と遥か後方に位置しており、戦いはヨコハマタイヤで戦うトップラリードライバーの一騎討ちでDay2を迎えた。

前日とは打って変わって、Day2が行われる11日(日)は朝から気持ちよい青空に恵まれたモントレー。予報でも晴れの一日とされており、7本のSS合計25.479kmは完全なドライコンディションでの戦いとなった。

Day1で走ったステージのうち「Minenohara」以外を逆方向で使うDay2、林道はほぼ下り主体の構成となる。2日目最初のSS10「Sajiki R1 (4.780km)」は新井選手組が制して奴田原選手組との差を3.0秒に拡大したが、SS11「Gunmazaka R1 (2.096km)」は奴田原選手組がベストで差を2.5秒に詰める。さらにSS12「Omae Suzaka Down 1 (5.663km)」も奴田原選手組が制して1.9秒差と詰め寄り、ステージベスト奪取の応酬で手に汗握る展開となる。

サービスをはさんでいよいよ最終セクション、SS14「Sajiki R2」も両者互いに一歩も引かないフルアタック合戦となった。そんな中、奴田原選手組は惜しくもコースオフを喫してフロントタイヤを痛めてしまい万事休す。その後も走行を続けSS15と16ではベストを刻んだものの、優勝には一歩届かずJN6クラスの2番手となった。そして新井選手組は3年連続でモントレー優勝を制し、地元で待望の今季初優勝。ヨコハマタイヤ勢が全16SSのうち15本でベストを奪い、3年続けてワン・ツー・フィニッシュを飾り強さを見せた。

このほかのクラスでは、JN4で山本悠太選手/藤田めぐみ選手組(86)がクラス移籍した今シーズン待望の初優勝。山口清司選手/山本磨美選手組(86)もしっかりフィニッシュまでマシンを運び、ヨコハマタイヤ勢がこちらもワン・ツー・フィニッシュとなった。JN2クラスは明治慎太郎選手/北田稔選手組(86)が、ウェットの「Minenohara 2」で総合4番手のスーパーベストも叩き出して大量リードを構築。このまま主導権を手放すことなくフィニッシュまで運んで、今季3勝目を飾った。さらに加納武彦選手/横手聡志選手組(BRZ)、猪股寿洋選手/齊藤孝太選手組(86)が続いて、こちらはヨコハマタイヤ勢がトップ3を独占する強さを見せた。

[Photo]

[Photo]

[Photo]

[Photo]

[Photo]

[Photo]

[Photo]

[Photo]

DRIVER VOICE

新井敏弘 選手 [富士スバル アライモータースポーツ WRX]

【今回の成績 : JN6クラス 優勝】
今年はなかなか調子が出なくてまったく勝てず、事前にしっかりテストをして臨んだモントレーでした。奴田原選手との一騎討ちになりましたが、一緒にWRC(世界ラリー選手権)なども戦ってきた仲なので奴田原選手のことは良く分かっているつもりでした。ですが、奴田原選手については『53歳なのにまだ速くなるか』という感じで(笑)。若い選手にも頑張ってもらって、トップ争いに食い込んできてほしいですね。

奴田原文雄 選手 [ADVAN-PIAA ランサー]

【今回の成績 : JN6クラス 2位】
勝とうと思ってかなり頑張ったのですが、新井選手に一歩届きませんでした。細かく詰めていくのですが、コンマ差で負けたりもして、最後はマージンを詰めるところが無くて少しブレーキを遅らせたらコースからはみ出てタイヤをパンクさせてしまい決着しました。まだまだ飛び出す元気があるんだな、ということでトップ争いしている間はこれからもラリーを楽しみながら戦っていきたいですね。

柳澤宏至 選手 [YH クスコ ラリープラス 208 R2]

【今回の成績 :JN5クラス 2位】
久しぶりのラリーでしたが、地元の群馬なので恥ずかしい成績は残したくないということで、頑張って走りました。ターボ勢が速くて上りのステージは厳しく、2日目も雨が降らないかなと思ったのですがそうはいきませんでした(笑)。2日間を通じてライバルとのタイム差も見ながら、楽しく走ることが出来ました。

山本悠太 選手 [Sammy☆K-one☆ルブロス YH 86]

【今回の成績 :JN4クラス 優勝】
これでターマック4連戦が終わりましたが、ずっと苦しい戦いが続いてきた中でようやく優勝することが出来て、僕もコ・ドライバーの藤田選手も涙袋がかなり溜まっていて我慢するのが大変です(笑)。こうして沢山のみなさんに恩返しをすることが出来て、とても嬉しいです!!

山口清司 選手 [jms エナペタル ADVAN 久與 86]

【今回の成績 :JN4クラス 2位】
最後に表彰台に立てて良かったです。走りきれば良いことがある、これもラリーだと思いました(笑)。

内藤学武 選手 [YH Moty’s BRIG G4 デミオ]

【今回の成績 :JN3クラス 2位】
地元ということで、優勝を目指して走ってきました。Day1はいつものモントレーと同じで、晴れていると思ったら雨が降り始めて霧も出て。ですが「ADVAN A052」が万能なので、それほど苦労することはありませんでした。Day2はこれなら頑張れるなと思ったのですが優勝には届かなくて悔しい部分も残るのですが、前戦に続いて全日本選手権の自己最上位でフィニッシュ出来て嬉しいです。

明治慎太郎 選手 [YH Gd 高崎くす子 86]

【今回の成績 :JN2クラス 優勝】
前戦の若狭でマシントラブルと自分で車を壊してしまったこともあって、短いインターバルの中でチームには迷惑をかけてしまいましたが車を修理してもらって挑んだモントレーでした。チームとしては地元での一戦ですから必ず結果を出さなければいけない状況でしたが、無事に優勝することが出来て本当に良かったです。

加納武彦 選手 [ALEX・KYB・YH・東京スバル BRZ]

【今回の成績 :JN2クラス 2位】
私が所属しているチームはラリーを続けたい人たちを、主にサービスの面から10年ほど応援しています。私が参戦するにあたっても、いろいろとサポートしていただいている頼もしいチームです。日頃のメンテナンスやセッティングもしっかりサポートしてくれるのですが、今年はそれが実りつつあって良い流れを掴んできています。次からはグラベルラリーですが、私はグラベルラリーをしばらく走っていないのですが明治選手に負けた記憶がないので、次は絶対に勝てると思います!!

小川 剛 選手 [チームO・T・S. AN YH フィット]

【今回の成績 :JN1クラス 2位】
優勝を狙っていたのですが、ライバルが本当に速くて最後に順位をひっくり返すことが出来なくて残念でした。しかし完走をすることが出来て、順位も2位となったので納得しています。

TECHNICAL INFORMATION

開催時期が早まったものの、今年も天候の変化が大きかった「モントレー in 嬬恋」。初日はドライコンディションからスタートしたが、午後になって降り始めた雨の影響でハーフウェット~ウェットへと路面コンディションが変わり、タイヤには対応領域幅の広さが試される一戦となった。

ヨコハマタイヤ勢は「ADVAN 052」を武器にするが、新井敏弘選手組と奴田原文雄選手組が終わってみれば全16SSのうち15本でベストを奪う速さを見せた。さらにDay1スタートで装着していた4本をローテーションしながらDay2の中間サービスまでを走りきった。ドライコンディションのDay2の前半でも両選手がステージベストを分け合っており、グリップ性能のみならずライフ性能も高い次元で両立していることを証明した。