2017 SUPER GT Round 4 Report

【SUPER GT 第4戦/SUGO】

MOTUL MUGEN NSX-GTが今季ベストリザルトを獲得、
GT300はFerrari 488 GT3が2位入賞、VivaC 86 MCも2戦連続の表彰台へ!!

SUPER GT Round 4

開催日 2017年7月22日-23日
開催場所 スポーツランドSUGO
(宮城県)
天候 雨 のち 曇り
路面 ウェット
決勝周回数 81周
(1周=3,704km)
参加台数 43台
(ヨコハマタイヤ装着車 23台)
SUPER GT 第4戦

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夏休みが始まったばかりのスポーツランドSUGOを舞台に、SUPER GTシリーズの第4戦が開催された。オートポリスでの第3戦からは約2か月のインターバルを置いたものの、その間にはSUGOだけでなく、鈴鹿で公式テストが行われ、またタイヤメーカーテストも行われている。従ってタイヤもマシンも、より鍛え上げられた状態で、この一戦に挑んだ格好になる。

前回のレースでは関口雄飛選手と国本雄資選手のドライブする「WedsSport ADVAN LC500」が8位でゴールし、連続入賞記録を21戦に伸ばせば、佐々木大樹選手とジョアオ・パオロ・デ・オリベイラ選手のドライブする「フォーラムエンジニアリング ADVAN GT-R」も9位と、ヨコハマタイヤユーザーの2台が入賞を果たした一方で、武藤英紀選手と中嶋大佑選手がドライブする「MOTUL MUGEN NSX-GT」は予定外のピットストップを強いられた影響が大きく、入賞まであと一歩の11位でのゴールとなっていた。

それぞれインターバルのテストでマシンをレベルアップさせて臨んでいたが、特に「フォーラムエンジニアリング ADVAN GT-R」はいち早く2基目のエンジンを導入。ニッサン勢が抱えている苦境から脱するための対策とあって、躍進に大きな期待が込められることとなった。

一方、GT300では松井孝允選手と山下健太選手のドライブする、「VivaC 86 MC」がポール・トゥ・ウィンを達成。ランキングのトップに躍り出た一方で、58kgものウェイトハンデを背負うこととなったため、どれだけ上の順位でフィニッシュできるか、注目された。

当初、レースウィークの天気予報は高い確率での降水を伝えていたものの、こと土曜日に関しては予選の直前に弱い雨が降っただけで、路面はドライコンディションが保たれていた。GT300のQ1は本格的なアタックが始まろうという頃に、コースアウトした車両があって赤旗中断が。再開後は、終了間際に「UPGARAGE BANDOH 86」の川端伸太朗選手が2番手に浮上し、3番手には「VivaC 86 MC」の山下選手がつけることになった。

9台のヨコハマタイヤユーザーが進出を果たしたQ2では、「少しアンダーステア気味だった」という山下選手からのインフォメーションを受け、土屋武士監督兼エンジニアがしっかりアジャストした「VivaC 86 MC」で、松井選手が激走。ラストアタックを完璧に決めてトップに浮上、そして2戦連続のポールポジションを獲得することとなった。2番手は「UPGARAGE BANDOH 86」の中山友貴選手が獲得し、3番手は「SYNTIUM LMcorsa RC F GT3」の吉本大樹選手が獲得。過去2年間、苦労を重ねたマシンは今年になってモデルチェンジ、ようやく本領を引き出すことに成功した。

GT500では、3台が揃ってQ1を突破。「WedsSport ADVAN LC500」の関口選手が2番手、「MOTUL MUGEN NSX-GT」の中嶋選手が3番手、そして「フォーラムエンジニアリング ADVAN GT-R」の佐々木選手が7番手につけることに。続いて行われたQ2では「WedsSport ADVAN LC500」の国本選手が4番手で、ヨコハマタイヤユーザーの最上位を獲得。「このサーキットとヨコハマタイヤの相性がいいので、過去3戦よりいいフィーリングで戦えています」と、国本選手は自信をみなぎらせていた。そして、「MOTUL MUGEN NSX-GT」の武藤選手が5番手、「フォーラムエンジニアリングADVAN GT-R」のオリベイラ選手が6番手で続き、それぞれ決勝で上位入賞を期待させるグリッドにつけていた。

決勝が行われる日曜日は、いよいよ本格的な雨に見舞われる。時折強く降った雨は、スタート直前には止んでいたことから、各チームがグリッド上でタイヤ選択に悩まされることとなる。フォーメーションラップの開始が間近に迫った段階でポツリポツリと雨粒が落ちてきたことから、「MOTUL MUGEN NSX-GT」はウェットタイヤを選択。その一方で、「Weds Sport ADVAN LC500」と「フォーラムエンジニアリング ADVAN GT-R」はドライタイヤを選択してスタートを切る。

 

しかし、路面には思った以上の水が乗っており、ドライタイヤで走るには困難な状態だった。「WedsSport ADVAN LC500」の関口選手は、スタート直後の1コーナーで止まりきれずにコースアウト。「フォーラムエンジニアリング ADVAN GT-R」の佐々木選手も、まったくペースを上げることができず、早々に上位争いから脱落してしまう。それでも2台ともレース3分の1にあたる27周目までタイヤ交換を引き延ばそうと必死の抵抗を見せるも、コンディションは回復せず。結局、トップから2周遅れとなった「WedsSport ADVAN LC500」は10周目に、「フォーラムエンジニアリング ADVAN GT-R」は16周目にピットイン。ウェットタイヤに交換して、レースを続行する。

一方、「MOTUL MUGEN NSX-GT」は武藤選手がスタートを担当し、ホンダ勢のトップ争いが白熱する中、一時は2番手まで浮上。直後に3番手に落ちたとはいえ、力強い走りで周回を重ねていく。しかし、路面が徐々に乾き始めるとペースが伸び悩むようになり、スティント後半には守りに入らざるを得ず……。

32周目には「フォーラムエンジニアリング ADVAN GT-R」がオリベイラ選手に交代。すでに雨も止んで路面も乾き始めていたため、ドライタイヤに交換される。しかし、ピットアウトしてから2周後の最終コーナー手前で、乾ききっていなかった路面に足元をすくわれてコースアウト。スポンジバリアに激突、オリベイラ選手に怪我はなかったのは何よりだったが、これで今季初のリタイアを喫することとなった。

「WedsSport ADVAN LC500」は37周目にピットイン。こちらもドライタイヤに交換し、国本選手が走行するがトップとの周回差は如何ともし難く、トップから4周遅れの12位でフィニッシュ。ここまで21戦に渡って続いていた入賞も、ついに途絶えることとなってしまった。

そして、「MOTUL MUGEN NSX-GT」は37周目にピットインして、中嶋選手に交代。スティント序盤は前のマシンに食らいつくアグレッシブな走りを見せるが、前半同様スティント終盤でペースが伸び悩み、最終的に6位でフィニッシュ。予選よりも順位を下げこそしたが、チームとしては今季ベストリザルトを残すこととなった。

一方、GT300では3台を除く各車がウェットタイヤで挑む中、スタートからトップを快走したのは「VivaC 86 MC」の山下選手だった。これに「UPGARAGE BANDOH 86」の中山選手、「SYNTIUM LMcorsa RC F GT3」の飯田章選手、予選は5番手だった「B-MAX NDDP GT-R」の星野一樹選手とヨコハマタイヤユーザーが続いていく。しかし、中山選手がGT500車両との接触で遅れ、さらに雨足が強まると、それぞれのペースが上がらないようになり……。山下選手ですら20周目にトップを明け渡したばかりか、その後6番手にまで後退を強いられる。

レース中盤には2度目、3度目のセーフティカーランが行われ、その合間のベストタイミングにピットに入って新田守男選手から都筑晶裕選手に交代した「Ferrari 488 GT3」が、それまでの10番手から一気に順位を上げて46周目には事実上のトップに浮上。51周目に1台の先行を許すも、全車がドライバー交代を済ませると2番手を走行するようになる。そして、その時点で3番手を走行していたのは「グッドスマイル初音ミクAMG」の谷口信輝選手で、4番手は「VivaC 86 MC」の松井選手。やがて3番手争いが熾烈を極めるようになる。

そして松井選手は64周目の1~2コーナーで切れ味鋭く、谷口選手をかわして3番手に浮上。そのままポジションを守り抜いて、「VivaC 86 MC」のふたりは2戦連続で表彰台に上がり、ランキングトップもキープするとともに、6ポイントのマージンを築き上げることとなった。そして、今季初完走がいきなり入賞となった「Ferrari 488 GT3」、都筑選手は2011年の第2戦・富士以来となる表彰台に立つことに成功した。

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DRIVER VOICE

中嶋大佑 選手 [MOTUL MUGEN NSX-GT]

【今回の成績 : GT500クラス 6位】
雨雲レーダーを見て、雨が降ってきそうだったので、ウェットタイヤでスタートしました。その選択が的中して良かったです。武藤選手が序盤にポジションを上げてきたりしましたが、最初に選んだタイヤが乾いてくると厳しくなって、スティント終盤は苦しくなりました。レース後半は少し濡れたままでしたから、比較的柔らかいドライタイヤを選びましたが、ウォームアップも早くできて、順位を上げることができました。それでも、しばらく走るとペースが上がらなくなって、守る一方のレースになってしまいました。その中でも、6位フィニッシュは悪くないと思います。

関口雄飛 選手 [WedsSport ADVAN LC500]

【今回の成績 : GT500クラス 12位】
スタート前は雨が降っていなかったので、そのままの状態が続くならチャンスがあると思い、ドライタイヤを選択しました。スタート直後の1コーナーは路面も濡れていたので、マージンを取って減速したつもりでしたが、まったく止まりませんでした……。読みが外れてしまいましたが、こればかりは仕方がないです。次回の富士も引き続き頑張ります。

ジョアオ・パオロ・デ・オリベイラ 選手 [フォーラムエンジニアリングADVAN GT-R]

【今回の成績 : GT500クラス リタイア】
スタートでは、どのタイヤを選んでいいかわからなかった。佐々木選手がドライタイヤでスタートしたけど、コンディション的には厳しい状況だった。大きくタイムロスしてしまったよ。僕に交代してから、タイヤはすでに温まっていたんだけど、最終コーナー手前のイン側のラインは、、まだ濡れている状態だった。GT300のクルマが前にいて、その位置関係で乾いたラインを走れず、アクセルを戻したけど、マシンをコントロールできなくなってコースアウトしてしまった。残念でならないよ。

都筑晶裕 選手 [Ferrari 488 GT3]

【今回の成績 : GT300クラス 2位】
気がついたら、トップに立っていたので、自分でもびっくりしました。1台に抜かれてしまったんですが、それでもずっと着いていくことはできたのですが、しばらくすると左フロントがつらくなって、このままプッシュし続けたら怖いなと思い、諦めてはいなかったんですが、ちょっと慎重に走りました。GT500との流れも、少しタイミングが悪かったですね。久々の表彰台は嬉しいです。2011年に(土屋)武士くんと一緒に走っていた時以来になります。今年になってポイントが獲れていなかったので、ここで大きなポイントが獲れて本当に良かったです。

新田守男 選手 [Ferrari 488 GT3]

【今回の成績 : GT300クラス 2位】
けっこう引っ張りましたよ、もともと引っ張る予定だったんですけど、ピットのタイミングが良かったんでしょうね。スタート時のタイヤはちょっと硬めで、雨があるうちは逆にちょっとつらい感じだったんですが、雨がずいぶん少なくなってからも、ドライできっちり行けるところまで引っ張っていくつもりでした。とにかくあんまりタイヤを壊さない走りを、序盤にしていたのが結果的には良かったんでしょう。

松井孝允 選手 [VivaC 86 MC]

【今回の成績 : GT300クラス 3位】
僕がピットアウトした後、ウォームアップに手こずっちゃったのが、本当に今回の順位の全てだったと思うのですが、その中でベストは尽くせたかな、と思います。チャンピオンシップを考えてもリードはできたので、そこはポジティブにとらえて。この後、続く富士、鈴鹿でも取りこぼしなく行ければ、きっと連覇も可能だと思います。このレースは山下選手が苦しい中でも頑張ってくれたので、結果が表彰台だというのもすごく良かったと思います。

山下健太 選手 [VivaC 86 MC]

【今回の成績 : GT300クラス 3位】
ソフト(タイヤ)を選んでいたこともあって、スタートからしばらくは後ろを引き離せたのですが、乾いてきてからは、ちょっと厳しかったですね。他社さんのタイヤが、自分の思っている以上に速かったというか……。個人的にはいっぱい抜かれたので、もうちょっと頑張りたかったです。でも、この結果には満足しています。1ポイントでも多く稼ごうと思っていたので。

ENGINEER VOICE

藤代秀一 [横浜ゴム株式会社 MST開発部 SUPER GT開発統括]

今回はスタートでタイヤ選択に悩む中、「WedsSport ADVAN LC500」と「フォーラムエンジニアリングADVAN GT-R」はドライタイヤ、「MOTUL MUGEN NSX-GT」はウェットタイヤと選択が別れました。実は“ちょい濡れ”のウェット路面に対して、今回のウェットタイヤがマッチしなかったんです。そのため、2台はウェットタイヤという選択肢をとれなかった。それが本当に申し訳なく思います。自信を持って勧められるウェットタイヤを用意しないと、今後のレースでも同じようなことが続いてしまうので、早く改善しなくてはいけないと思います。

ウェットタイヤを装着した「MOTUL MUGEN NSX-GT」は入賞しましたが、ロングの安定感が欠けていたので、そうでなければもっと上の順位でゴールできたと思います。そのあたりも今後の課題です。ただ、今回からNSX用に持ち込んだタイヤの構造はアップデートされたものでしたが、そのステップアップは確認することができました。

GT300に関しても、あのウェットコンディションでパフォーマンスを見せるのが厳しく、セーフティカーのタイミングもあって結果は残りましたが、それで良しとするわけにはいきません。今回は反省ばかりのレースになってしまいましたが、その中で「VivaC 86 MC」が表彰台に立ってくれたというのは、ウェイトハンデが厳しい状態であっただけに、チーム力、ドライバー力の高さであるのは疑う余地はないと思います。厳しい戦いは続きますが、ヨコハマユーザーによる連覇に向けて、気を抜かないようにするつもりです。