2017 SUPER GT Round 3 Report

【SUPER GT 第3戦/オートポリス】

王者の貫禄見せたVivaC 86 MCがポール・トゥ・ウィンで今季初優勝、
WedsSport ADVAN LC500の連続入賞は今回で21に!!

SUPER GT Round 3

開催日 2017年5月20日-21日
開催場所 オートポリス
(大分県)
天候 晴れ
路面 ドライ
決勝周回数 65周
(1周=4,674km)
参加台数 45台
(ヨコハマタイヤ装着車 25台)
SUPER GT 第3戦

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ゴールデンウィークに行われ、2日間で92,100人もの大観衆を集めた富士スピードウェイでの第2戦の興奮も冷めやらぬ、わずか2週間後にオートポリスでSUPER GTシリーズの第3戦が開催された。昨年は熊本地震の影響で中止になったことで2年ぶりのレースとあって、第2戦にも負けぬ観客の興奮ぶりが印象的だった。

第2戦では関口雄飛選手と、国本雄資選手の代役として起用された山下健太選手がドライブする「WedsSport ADVAN LC500」が10位に入り、20戦連続入賞を達成。予選では初のGT500ドライブとなった山下選手がQ2を担当し、6番手につけて評価を高めることとなった。その一方で、武藤英紀選手と中嶋大佑選手のドライブする「MOTUL MUGEN NSX-GT」はエンジン系のトラブルでリタイアを喫し、佐々木大樹選手とジョアオ・パオロ・デ・オリベイラ選手のドライブする「フォーラムエンジニアリングADVAN GT-R」は二度に渡るペナルティが響き、12位に留まっていた。

もちろん、今回目指すのは開幕戦以来となる3台揃っての入賞。特にホンダ勢はNSX-GTに対し、今回よりミッドシップハンデが15kg軽減されることもあって、「MOTUL MUGEN NSX-GT」には大逆襲の期待が込められていた。

一方、GT300では予選3番手のはずがペナルティで14番手に降格、決勝でも序盤のスピンによって大きく順位を落としていた、藤井誠暢選手、スヴェン・ミューラー選手のドライブする「D’station Porsche」が3位入賞を果たし、「速いポルシェ」の復活をアピール。今年もまだ2戦を終えただけとはいえ、ランキング上位陣にポイントの分散が目立つことから、ヨコハマタイヤユーザーが今回の結果次第で、一気にトップに立つことも十分に考えられる。

アップダウンに富んだテクニカルコースという印象の強いオートポリスは、大半をハンドルが切り続けられることから、タイヤへの攻撃性も強いのも特徴のひとつ。タイヤにはタフネスが求められるとともに、ドライバーには的確なコントロール能力も求められる。

春を通り越して、一気に夏に突入した感さえあった予選当日の土曜日。なんと気温は26度、路面温度は46度にまで達し、まさに夏日になっていた。GT300ではQ1で山下健太選手が、そしてQ2では松井孝允選手がともにトップタイムを記録し、「VivaC 86 MC」がポールポジションを獲得。ディフェンディングチャンピオンとして、大いに貫禄を示すこととなった。「クリアラップを取るのに手間取って、アタックラップには反省点もありましたが、その中でもうまくまとめられることができて良かったです」と松井選手。

Q2にヨコハマタイヤユーザー8チームが進出を許され、3番手は福岡にチームの本拠地を置くTeam MACHの「マッハ車検86MC GTNET」が獲得。やはり福岡出身の坂口夏月選手がQ1を突破し、しっかりインフォーメイションを受けた藤波清斗選手が一気にタイムを縮めるという、ふたりともルーキーらしからぬ大活躍を見せていた。一方、2戦連続ポールを狙った谷口信輝選手と片岡龍也選手のドライブする「グッドスマイル初音ミクAMG」は、惜しくも6番手ながら、決勝での激しい追い上げを誓っていた。

GT500は予選で力強い走りを発揮できなかった。「WedsSport ADVAN LC500」は関口選手がQ1を担当し、果敢にアタックしていったが、0.4秒届かず10番手で敗退。「フォーラムエンジニアリングADVAN GT-R」も佐々木選手がアタックをしたもののトラフィック等もあり、うまくタイムを出せず13番手となった。

 

一方、「MOTUL MUGEN NSX-GT」は武藤選手が8番手でQ1突破を果たすと、続くQ2では中嶋選手がタイムアップにも成功して5番手につけることとなった。セッション終了後、他社にペナルティが課せられたため、最終的に4番手に繰り上がって予選を終了。今季ベストのポジションを得た。今年からヨコハマタイヤを履き、決勝では苦しんでいる部分もあるが、予選での一発勝負ではマシンのセットアップ、タイヤとのマッチングをつかみ始めている様子だった。

日曜日も厳しい暑さとの戦いになると思われたものの、上空には薄い雲が広がり、穏やかなコンディションに改まっていた。スタート時の気温は22度、そして路面温度は31度にまで下がっていたほどだ。

決勝レースはスタート直後こそ混乱はなかったものの、5周目の最終コーナーでGT500車両とGT300車両が絡むアクシデントが発生。セーフティカーランが、実に8周にわたって繰り広げられることとなった。4番手からスタートした「MOTUL MUGEN NSX-GT」はホンダ勢が全体的に好調の中、表彰台の獲得さえ期待された。スタートは武藤選手が担当したが、まだロングランのデータが少ないこともあり、うまくペースを上げられず19周目に5番手に後退。そのままポジションをキープし、30周目にピットイン。現状でのバランスを考慮し、給油とリアタイヤ2本のみの交換で、中嶋選手はコースに送り出されていた。

しかし、後半スティントでは特にピックアップ(注:路面に落ちているほかの車両のタイヤカスを踏んで自車のタイヤにつくこと)に苦しめられペースダウン、中嶋選手はドライビングを変えてみるなど、さまざまな対処方向を試みるも状況は改善せず、残り10周で再びピットにマシンを戻すことになる。4輪すべて交換し、残る周回ではペースも回復したが、予定外のピットの影響は大きく11位でフィニッシュ。ポイント獲得はならなかった。

「WedsSport ADVAN LC500」は関口選手がスタートを担当したが、予選同様にライバルに競り勝てるようなペースで走れず苦戦。それでも途中にはGT-Rの一台と接近戦のバトルを繰り広げたが、追い抜くまでには至らなかった。31周目には国本選手と交代し、全体的に苦しい展開にはなったものの、ふたりともミスのない安定したレースを披露。ポジションをふたつ上げ、8位でチェッカーを受けた。内容的には決して満足のいくものではなかったが、これで連続での入賞記録を21回に伸ばした。

佐々木選手がスタートを担当した「フォーラムエンジニアリングADVAN GT-R」は、前を行く車両をなかなか抜けずにいたため、ピットストップで逆転するために、規定の1/3を終えた22周目にピットイン。交代したオリベイラ選手は前方にライバルがいないところで、ペース良く走ることを試みた。これが功を奏し、終盤には9番手にまで浮上。ポイント圏内に駒を進めた。残り10周で一台に抜かれ10位でのチェッカーとなったが、上位の一台にペナルティによるタイム加算があったため、最終的に9位となり、今季2度目のポイント獲得を果たしている。

GT300ではポールポジションからスタートした「VivaC 86 MC」の山下選手が、トップを譲らずレースを開始したばかりか、じわりじわりと差を広げていく。その状況において、5周目からのSCランは少なからず貯金を吐き出してしまったものの、リ・スタート後も後続を一切寄せつけず。そして29周目に松井選手と交代する。

その3周後にピットに入った「SUBARU BRZ R&D SPORT」に、さらに2周後にも「ARTA BMW M6 GT3」の先行を許しはしたが、それぞれのアウトラップのうちに松井選手は抜き返して、トップを死守。その2台のバトルが激しくなっていた間に、リードも5秒ほどに広げることとなった。ところが、ゴール間際になって「SUBARU BRZ R&D SPORT」が一気に差を詰めてくる。実は燃料ポンプにトラブルが発生し、ペースを思うように上げられなくなっていたのだ。

最後はストレートで横に並ばれた「VivaC 86 MC」だったが、0.091秒差でからくも逃げ切りに成功。あと1周あったら……と胆を冷やす光景ではあったが、ディフェンディングチャンピオンに相応しい強さも見せて、今季まず1勝目を挙げることとなった。

なお、4番手を走行していた車両にホイール脱落によるリタイアがあったこともあり、土壇場で5番手を争っていたヨルグ・ミューラー選手と荒聖治選手の駆る「Studie BMW M6」、谷口信輝選手と片岡龍也選手の駆る「グッドスマイル初音ミクAMG」がひとつずつ順位を上げて、4位、5位でフィニッシュ。ランキングでは松井選手と山下選手がトップに躍り出て、谷口選手と片岡選手は3位に退いたものの、わずか2ポイント差で続き、ランキング上位の独占を大いに予感させることとなった。

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DRIVER VOICE

関口雄飛 選手 [WedsSport ADVAN LC500]

【今回の成績 : GT500クラス 8位】
全体的にペースが悪かったです。途中でセーフティカーが入った影響で、前のクルマに着いていくことができましたが。12号車に一回追いついたのですが、単独で走るとペースが良くなくて離されてしまいました。予選から苦戦を強いられましたが、決勝に向けてセットも変えて、できることはやりましたし、ふたりともドライビングは良く、ピット作業も早かったので、結果としては8位でスタートポジションよりアップできました。やりきれたかな、とは思います。SUGOまでにテストがあるので、そこでライバルとの差を縮められるようにしたいです。

佐々木大樹 選手 [フォーラムエンジニアリングADVAN GT-R]

【今回の成績 : GT500クラス 9位】
基本的に、このコースは前にいるクルマを抜きにくいので、アンダーカットではないですけど、早めにピットに入ってJP選手には前方がクリアなところでレースしてもらおうという形を採りました。結果的に13番手スタートから9位でフィニッシュできたので、作戦はうまくいったかなとは思います。ただ、根本的に速さが足りないので、次回以降はしっかりと速さを身につけられるようにしたいです。タイヤも含めて、もっと上げていかないと……。ヨコハマタイヤユーザーとしても沈んでいるので、それぞれ(マシンの)メーカーは違いますが、協力しあってどんどん進化させていかないとダメだと感じています。

中嶋大佑 選手 [MOTUL MUGEN NSX-GT]

【今回の成績 : GT500クラス 11位】
予選は個人的にはぶっつけ本番みたいなところはありましたが、悪くないタイムが出せましたし、クルマとタイヤの状態がすごくいいことの証明になったかな、と思います。決勝はピットストップでリアタイヤだけの交換にしたんですが、それでバランスが崩れてしまって……。しかも、ピックアップにも苦しめられてしまいました。ペースも上がらず、苦しいレースになってしまいましたが、次のSUGO戦まで時間がありますし、テストもありますから……。もう一度いろいろなものを整理して、特にロングランは開幕までの段階で完全に準備できていなかったので、そこを確認したいですね。予選の感触は悪くないので、ロングランの部分を重視して、良くしていきたいです。

松井孝允 選手 [VivaC 86 MC]

【今回の成績 : GT300クラス 優勝】
今日はスタートを山下選手に担当してもらって、期待していたのはちぎってくれることだったんですが、そううまくはいかなくて。ピットでスバルやBMWに抜かれましたが、タイヤのウォームアップは僕らの方が良かったようで、いずれも早々に抜ける自信はありましたが、そのとおりになりました。燃料ポンプのトラブルが最後に出て、スバルには追いつかれてしまいましたが、残り周回をしっかり頭に入れてコントロールして。本当にギリギリでしたが、なんとか勝つことができました。今年から僕がドライバーとしてチームを引っ張っていくことになり、昨年までと違ったプレッシャーもあるのですが、武士さんがエンジニアに専念したことで、クルマは精度もレベルも上がっているので、かえって走りやすくはなっています。

山下健太 選手 [VivaC 86 MC]

【今回の成績 : GT300クラス 優勝】
Q1、Q2とトップで、決勝のスタートは自分が担当したのですが、本当はもう少し楽に後ろを引き離せると思っていましたけど、なかなかそうもいかなかったですね。自分としては、それなりにハイペースで走れたのですが、それでもついてこられてしまいました。ギャップ作るのに苦労しましたが、GT500との絡みで少しは作れたので良かったです。松井選手がいい走りをしてくれましたが、最後はギリギリで……。チームもドライバーもギリギリのところで頑張っていましたから、優勝できて本当に良かったです。

荒 聖治 選手 [Studie BMW M6]

【今回の成績 : GT300クラス 4位】
今回はいいタイヤでしたよ。ただ「GAINER TANAX AMG」が前にいて、あれに引っかかっちゃったので、なんとか前に出られていれば違った展開もあったのかもしれませんが、そこまでの差はなくて。でも、今回やっと戦えるような感じになって、手応えのあるレースだったとは思います。予選も決勝も、このぐらいで走れるパフォーマンスはあったので、これからもこういう流れで行ければいいですね。

谷口信輝 選手 [グッドスマイル 初音ミクAMG]

【今回の成績 : GT300クラス 5位】
今回は予想どおりというか、勝負にならないほどJAF-GT勢との差がありました。だから我々はFIA-GT3勢の1位を狙おうと頑張ったんですが、BMWも速かったですね。まぁ、良くもなく、悪くもなく、予選6番手からスタートして5位だったし……。もちろんポイントが獲れたということは、チャンピオンシップにとってはいいことだと思います。トップからわずか2ポイント差ですし、今年のシリーズという意味では、まだ面白い位置にいるので頑張ります!!

ENGINEER VOICE

藤代秀一 [ヨコハマ・モータースポーツ・インターナショナル SUPER GT開発統括]

GT300では「VivaC 86 MC」が優勝し、BoP的にもこのコースはJAF-GTが強いという前評判があって、そのとおりになった感じですが、FIA-GT3勢のトップを他社に獲られたのは、非常に悔しいところではあります。とはいえ、まだシリーズは5戦もありますし、テストも次回のSUGOまでに、タイヤメーカーテストと公式テストを合わせて4回もあるので、そこでマザーシャシー、JAF-GTはもちろんですが、FIA-GT3に対してもタイヤをさらにステップアップさせて、もっと強いレースをしたいと思います。

それはGT500に関しても同様です。今回のレースではまったくいいところなしの、つらいレースになってしまいましたが……。2017年車は去年までの車に対しダウンフォースレスになっているのですが、その影響が非常に良く分かったレースでした。とはいえ方向性は見えているので、4回のテストでなんとか! しっかりと形にしたいと思っています。