2016 JRC Round 9 Report

【全日本ラリー選手権 第9戦/愛知県新城市】

JN2クラスの明治慎太郎選手が嬉しい自身初のチャンピオンに輝き、
大ベテランの中原祥雅選手はおよそ30年ぶりの全日本タイトルを獲得!!

JRC Round 9

開催日 2016年11月4日-11月6日
開催場所 愛知県新城市 近郊
天候/路面Day1) 晴れ/ドライ
Day2) 晴れ/ドライ
総走行距離 410.401km
SS総距離 106.91km (17SS)
得点係数 1.2 (舗装路100km~150km)
参加台数 73台 (オープンクラス含)
(ヨコハマタイヤ装着車 28台)
全日本ラリー選手権 第9戦

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今年もシリーズ最終戦として開催される「新城ラリー 2016」は、去る2月に新東名高速道路が延伸開通して新城インターチェンジの供用が開始されたことから、メイン会場となる新城総合公園へのアクセスは利便性が格段に向上。週末を通じて好天に恵まれたこともあり2日間で53,000人(新城市役所発表)の観客が観戦に訪れた。

新城総合公園と鬼久保ふれあい広場に設けられたギャラリーステージを含め、17本のSS(スペシャルステージ)合計106.941kmを設定、総走行距離は410.401kmというアイテナリー。SS合計が100kmを超えるターマック(舗装路)ラリーとなるため、ポイント係数は1.2となる。

ステージはタイトコーナーが連続する独特のロケーションである雁峰林道を使う「雁峰北 (11.123km)」や、新東名高速道路のパーキングエリアに由来する名称とされた「長篠設楽原 (8.831km)」、地元特産の日本酒に由来する名称の「ほうらいせん一念不動 (7.305km)」、「上平井 (5.216km)」、ハイスピードな本宮山スカイラインを走る「鬼久保 (6.984km)」など、変化もある攻略し甲斐のある道が揃っている。

多くのクラスでチャンピオンをかけた最終決戦となった新城、JN6クラスでは奴田原文雄選手/佐藤忠宜選手組(ランサー)がランキングトップの証であるゼッケン1をつけて5日(土)の7時ちょうどに戦いをスタート。SS1「雁峰北 1」は7.0秒差のセカンドベストを刻み、ライバルに食らいついていく。そして続くSS2「長篠設楽原 1」、その後の「鬼久保」は有利に戦える条件が揃っていたこともあり、「長篠設楽原」はひとつの勝負どころと目されていた。

オープニングからフルプッシュの応酬となった戦い、SS2で主導権を取り返すべくスタートから攻めていく奴田原選手組。しかし、スタートから1.6km先にあるヘアピン状のジャンクションはライバルよりも速いタイムで駆け抜けたが、その先の約2.3km地点でまさかのコースオフ。金曜日のレッキ終了後に通行した車両が出したと思われる砂や土が路面に浮いており、ここで足をすくわれてしまい立ち木に衝突。クルーは無事だったが、無念のリタイアを喫する残念な結果となってしまった。

ヨコハマタイヤ勢同士のチャンピオン争いとなったJN2クラス。前戦でフルポイント優勝を決めて最終戦に望みをつないだ小濱勇希選手(BRZ)は、最終戦を待たずしてナビゲーター(コ・ドライバー)部門のチャンピオンを決めた馬場雄一選手とのコンビで今回も好走。オープニングステージからクラスで唯一人の10分切りでベストを奪うと、初日、そして二日目と後続を寄せつけない速さで第8戦に続いてデイポイントを含めた満点優勝を飾ることに成功。一方、2位でもドライバー部門のチャンピオンが決まるランキングトップの明治慎太郎選手(86)も北田稔選手とのコンビで安定した戦いぶり、こちらもフィニッシュまでしっかりマシンを運んで2位を獲得。この結果、明治選手は自身初となるシリーズチャンピオンに輝いた。

JN5クラスは、前戦で柳澤宏至選手(208 R2)がドライバー部門のチャンピオンを決めているが、コンビを組む大ベテランの中原祥雅選手のチャンピオン獲得を賭けて最終戦に臨んだ。そしてオープニングステージで、中原選手とタイトルを争うライバルのマシンがリタイア、対する柳澤選手と中原選手のコンビは表彰台圏内のポジションをガッチリとキープしてフィニッシュまで運んだ。最終的には3位を獲得、中原選手は1985年に神岡政夫選手と日産・フェアレディZで獲得して以来となるナビゲーター(コ・ドライバー)部門の全日本タイトルを手中におさめた。

今回、最後の最後まで激しいチャンピオン争いが演じられたJN1クラス。ベテランの須藤浩志選手/新井正和選手組(スイフト)は、チームメイトの若手と一騎討ちでチャンピオン争いを展開。序盤から激しいシーソーゲームとなり、SS6までのセクション2を終えた時点で両者の差は0.0秒、全くの同秒1位という互いに一歩も引かない接戦となる。

Day1を終えて、SS9「長篠設楽原 3」でライバルがややリードを築き2番手となった須藤選手組、逆転を期するDay2はオープニングのSS11「県営新城公園・リバース 3」からベストを刻み、SS13からも3連続ベストで差を詰めていく。SS16ではライバルがベスト、最終ステージを残して5.4秒差の2番手というポジションになった須藤選手組。ハイスピードの「鬼久保 5」に全てを賭けてフルアタック、見事にベストタイムを叩き出して締めくくるも106.941kmを走ったトータルでは惜しくも僅か1.0秒届かず。チャンピオンにはあと一歩届かなかったが、ベテランらしい“いぶし銀”の走りで最後まで戦い抜いた須藤選手組の走りはギャラリーの記憶に深く刻まれるものとなった。なお、この結果により須藤選手と一年を共に戦ってきた新井選手は、ナビゲーター(コ・ドライバー)部門のチャンピオンを獲得した。

このほか、JN6クラスの新井敏弘選手/田中直哉選手組(WRX STI)、JN4クラスの山口清司選手/島津雅彦選手組(86)がそれぞれ2位でフィニッシュ。JN2クラスは山本悠太選手/安藤裕一選手組(86)が3位、加納武彦選手/横手聡志選手組(BRZ)が4位で続きヨコハマタイヤ勢がトップ4を独占。最終戦でも各クラスで、ヨコハマタイヤ勢が好走を見せて一年間の戦いを締めくくった。

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DRIVER VOICE

柳澤宏至 選手 [YH クスコ ラリープラス 208 R2]

【今回の成績 :JN5クラス 3位 (シリーズチャンピオン)】
前戦から自身初のシリーズチャンピオンを意識した戦いにもなりましたが、チャンピオンはちょっと歯車が狂うと獲れないので、プレッシャーから運転がぎこちなくなっていた面もありました。しかし、気持ちを切り換えて過度にチャンピオンにこだわらず、ひとつのSS毎に集中して走ることを自分に言い聞かせながら今回も戦ってきました。今回も中原選手のチャンピオンが決まる重要な一戦でしたが、気持ち的には楽に戦うことが出来ました。オープニングステージでライバルがリタイアしたのは予想外でしたが、その後もモチベーションを保ってコンスタントに走ることを心がけていき、最終的には良いラリーが出来たと思っています。

明治慎太郎 選手 [YH Gd 高崎くす子 86]

【今回の成績 :JN2クラス 2位 (シリーズチャンピオン)】
2位でもシリーズチャンピオンという条件でしたが、山本悠太選手も出場しているので気を抜けない一戦でした。新城ラリーは自分にとって得意な方のステージが多いので、勝ってチャンピオンを決めたいとも思っていたので、オープニングステージからプッシュして行きました。小濱勇希選手にSS5「雁峰北 2」で離された時には「もうダメかな」と思ったりもしましたが、「長篠設楽原」のSS6とSS8で大きく勝てて「ちょっと頑張ってみようかな」となって(笑)。結果としてはDay2で離されてしまいましたが、そこは状況を見ながらしっかりチャンピオンを獲ることに目標を定めて走りました。15年近いラリー歴の中でずっと狙ってきたチャンピオンを、ようやく獲ることが出来て“めっちゃ”嬉しいです!! (笑)

小濱勇希 選手 [YH フェイスクラフト BRZ]

【今回の成績 :JN2クラス 優勝】
残念ながらチャンピオンには届きませんでしたが、盛り上がったクラスで戦えて良かったなと思う一年でした。クラス成立した大会の中で最多勝にもなりましたし、シーズンを通してスピードが上がったことを自分自身で実感しています。開幕戦も優勝していますが、大会を重ねる毎にライバルもスピードアップしていく中、自分もそれに負けずに速くなれたのでターマックの走り方がかなり進化したことが大きな収穫となりました。今回もフルポイント優勝が絶対条件、“オープニングステージを制する者がラリーを制する”という思いで行ってベストを刻めたので、そこからリードを守りながらどう戦っていくかを考えていました。チャンピオンを全日本2年目で獲ってしまうと面白くないので、来年にとっておきます(笑)

新井敏弘 選手 [富士スパル アライモータースポーツ WRX]

【今回の成績 : JN6クラス 2位】
小さいコーナーの曲がりこむような場所、そこが厳しい一戦となりました。シリーズ最多勝を狙ってオープニングステージからフルプッシュで攻めて行ったのですが、残念ながら優勝には届きませんでした。今シーズンは色々なことに翻弄されたのですが、自分でも第5戦の洞爺でスピンをして優勝を逃してしまったのは痛かったですね。

須藤浩志 選手 [スマッシュ BRIG コマツ YH スイフト]

【今回の成績 :JN1クラス 2位】
大きく離されると返せないと思っていたので、やられても小さく負けるようにという努力をして戦っていました。ライバルも速くなっていますが、自分もタイヤサイズを225/45R15を選んで低速対策をして臨み、とにかく勝てなくても差を縮めていこうと工夫しました。「雁峰北」は不得意なので、そこの差を縮める一方で「鬼久保」は得意なので、残るステージで同等のタイムで走って行こうという戦略でした。事前のデータ分析で「鬼久保」で得られるであろうマージンを計算していたのですが、それがライバルも速くなっていてマージンが少なくなっていて。「雁峰北」と相殺されるかたちになって、最終的には秒差の戦いになりました。この一年、最高に面白いシーズンでした。当初は3戦しか出場を予定していなかったのですが、状況が変わって「行くしかないね」となって。若いライバルのお蔭で、ここにきて走りに臨む上での気持ちの上げ方など、得るものがありました。自分も進化したシーズンになりましたね。

山口清司 選手 [jms ADVAN エナペタル 久興 86]

【今回の成績 :JN4クラス 2位】
「鬼久保」のステージは嫌いです!!(苦笑)。あそこだけでトータル50秒やられてしまいました……。シリーズ2位がかかっていたのですが、新城自体は地元ということで良く知っていますし、雁峰林道を使う距離が長いのでそこに合わせてマシンも仕上げ、必要以上に気負うこともなく臨んだ一戦でした。反省点としては、雁峰をもう少しリスクを背負ってでも攻めていかなければなりませんね。「鬼久保」の敗因はフロントタイヤの使い方にあると思っていて、ハイスピードステージですから林道とは異なりブレーキはそんなに使わずフロントタイヤのグリップを活かす走りをしないとタイムが出ないな、と。計算上で車速が4%くらい遅いのですが、Day2で走り方を変えたら2%くらい上がってタイムにも反映されたので、この走り方を会得して次につなげていきたいと思います。

TECHNICAL INFORMATION

JN6クラスでは奴田原選手組が惜しくもリタイアを喫したが、オープニングの「雁峰北」では昨年の同ステージで「ADVAN A050」を装着して刻んだタイムに匹敵するセカンドベストをマークしており、「ADVAN A052」の優れたポテンシャルを見せている。一方でJN1クラスもライバルと激しいシーソーゲームを展開、互角の戦いを支え続けた。

「ADVAN A052」がデビューして3戦目となる最終戦だが、サイズラインナップも豊富なことから多くのクラスで様々な車種を駆る選手から好印象を語るコメントが聴かれた。ここまで「ADVAN A052」で戦った3戦では摩耗性能についても良好なデータを得られており、2017年はターマック初戦となる第2戦の唐津から「ADVAN A052」を装着する選手の活躍が期待される。