2016 JRC Round 5 Report

【全日本ラリー選手権 第5戦/北海道洞爺湖町】

雨に翻弄されたタフな戦いでJN6は奴田原文雄選手組が今季初優勝、
JN5の柳澤宏至選手組とJN1の須藤浩志選手組も連勝で強さを見せた!!

JRC Round 5

開催日 2016年7月1日-7月3日
開催場所 北海道洞爺湖町 近郊
天候/路面Day1-A) 晴れ/ドライ
Day1-B) 雨/ウェット
Day2) 曇り/ウェット
グラベル(非舗装路面)
総走行距離 371.64km
SS総距離 63.76km (15SS)
得点係数 1.2 (非舗装路50km~100km)
参加台数 54台 (イノベーションクラス含)
(ヨコハマタイヤ装着車 23台)
全日本ラリー選手権 第5戦

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全9戦のカレンダーが組まれている2016年の全日本ラリー選手権は、折り返しとなる第5戦「2016 ARKラリー洞爺」が開催された。2011年から北海道を代表する温泉地のひとつである洞爺湖町をホストタウンとしている本大会も、今年で6年目。温泉街のホテルや飲食店、コンビニエンスストアにも大会ポスターが掲出されて盛り上がりを見せている。選手も温泉で鋭気を養い、夜は4月末から10月末まで毎夜打ち上げられている花火大会を楽しんでいた。

競技は前戦に続いてグラベル(非舗装路)ステージが舞台。福島に比べてハイスピードなステージ設定となり、土曜日には初登場の「BARON (2.91km)」、日曜日には2013年以来となる「SCALLOP (4.47km)」などを含む、全15本のSS(スペシャルステージ)が設定された。

金曜日の夕方にサービスパークからほど近い場所に設けられたギャラリーステージ、SS1「SSS NEW VOLCANO 1 (0.70km)」で大会は幕開け。レッキや公式車検も行われた金曜日は快晴に恵まれ、蝦夷富士の愛称で親しまれている羊蹄山もその姿をクッキリと見せて汗ばむ陽気となった。しかし一夜明けた土曜日は、朝から灰色の雲が空を覆ってしまう。そして林道ステージの皮切りとなるSS2「LAVENDER LONG 1 (9.76km)は1号車が8時51分にスタートしたが、この頃にはポツポツと雨が路面を濡らし始めてしまった。

そんな中、金曜日のSS1に続いて、SS2でもステージベストを奪ったのは新井敏弘選手/田中直哉選手組(WRX STI)。ところがSS3「BARON 1 (2.91km)」で痛恨のスピン、道幅が狭いところで車が180度まわってしまい方向転換に時間を要してしまうことに。このタイムロスが結果としては最後まで響いてしまい、新井選手組は4位でフィニッシュした。

前線の通過に伴い、天候は下り坂となった土曜日。午前のセクション1で完全なドライでは無くなっていたが、昼から雨足が急速に勢いを増した。洞爺湖町での観測によると、13時までの時間雨量は0mmだったが、14時には4mm、15時には9mmという猛烈な雨が降り、路面はヘビーウェットへと転じた。さらにこの地域は土質に火山灰を含んでいることもあり、ウェットでは想像以上にスリッパリーとなる傾向も強い。

このようなコンディション変化に対して、奴田原文雄選手/佐藤忠宜選手組(ランサー)は、午前のセクションをADVAN A053で走りきった後、サービスでタイヤをADVAN A031に交換。SS3からトップに立っていたが、SS7「AZALEA 2 (4.18km)」でステージベストを刻むなど快走を見せて、Day1を2番手に12.2秒差のトップで終えた。一夜明けて日曜日、雨はあがったもののステージは前日の豪雨の影響が残っている。そこでこの日もADVAN A031でスタートした奴田原選手組、2本のステージベストを刻むなどして最後はリードを13.1秒に拡大してフィニッシュ。待望の今シーズン初優勝を飾ることに成功した。

JN5クラスでは、柳澤宏至選手/中原祥雅選手組(208 R2)が今回も序盤から優勢に戦いを運んだ。金曜日のオープニングステージを制してクラストップに立つと、15本のうち9本のSSでベストをマーク。一度もトップを譲ることなくライバルを全く寄せつけない独走でマシンを運び、三連勝でランキングトップの座をさらに磐石なものとした。

JN1クラスでも、前戦・福島を制している須藤浩志選手/新井正和組(スイフト)が強さを見せた。こちらも全体の半分以上となる8本のSSでベストを叩き出し、後続を全く寄せつけない独走ぶり。最後は2番手に1分以上の大差をつけてフィニッシュ、須藤選手と新井選手のコンビでは昨年から4戦に出場して4勝目、勝率100%をキープする連勝となった。

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DRIVER VOICE

奴田原文雄 選手 [ADVAN-PIAA ランサー]

【今回の成績 : JN6クラス 優勝】
土曜日に降った雨の影響がどのぐらい出るのか、それを日曜日にも考えなければならない難しいラリーでした。ですが、守備範囲の広いADVAN A053と軟質路面向けのADVAN A031を上手く状況に応じて使い分けて今シーズン初優勝につなげることが出来ました。マシンもチームが最良の状態に仕上げてくれましたし、気持ちよく走れましたね。なかなかTeam ARKさん主催のラリーでは勝てなくて、今シーズンという面でも2位が続いて洞爺を迎えましたが、今回は私に勝つ番がまわってきましたね(笑)。この調子で次のモントレー以降も連勝していけるように頑張ります。

柳澤宏至 選手 [YH クスコ ラリープラス 208 R2]

【今回の成績 :JN5クラス 優勝】
今回はヘイキ・コバライネン選手が初参戦ということもあって、注目度の高いJN5でしたね。そんな中、前戦と違ってハイスピードなのでパワーのある方が有利だから厳しい面もあるかなと思っていました。土曜日はとにかく1ループ目をとにかくプッシュして走り、2ループ目はあまりにも条件が悪化したので多少抑えるところは抑えつつ、ハイスピードでの車の挙動などを確認しながら走りました。タイヤは雨の中も通じてADVAN A053で走りました。ADVAN A031という選択もありましたが、テストを事前にしていなかったので実績のあるADVAN A053というチョイスです。日曜日も集中力を保ってフィニッシュまで運びましたが、3連勝ということで次のモントレーに臨みますが、地元なので気合いが入ってしまいますが失敗してしまったこともあるので、大事に戦って連勝したいと思います。

須藤浩志 選手 [スマッシュ BRIG コマツ YH スイフト]

【今回の成績 :JN1クラス 優勝】
雨は好きじゃないんですが、なぜか雨はタイムが出るんです(笑)。荒れた道(BARON)もありましたが、私自身は全然気にならなくて「どこのステージが荒れていたの?」という感じで。土曜日は午後から土砂降りでしたが、別に違和感も無くて自分のペースを守って走りきれましたね。昔の自分は“小さく勝って大きく負ける”タイプだったのですが(笑)、いまは逆になって今回も大きく差をつけて勝てました。車を福島の後に大きくセッティング変更していて、福島で苦労したハイスピードにしっかり適応させられて、金曜日のSS1で手応えを感じていました。今回は車を振り回さないようにと思っていましたが、気持ちよく動いてくれるので「すいません!!」という感じで振って走らせられたので楽しかったしタイムも出せました。次のモントレーは雨の中で勝ちましたが、また雨を呼ばなければなりませんね(笑)

TECHNICAL INFORMATION

土曜日の午後から豪雨となった洞爺湖地方、その影響は日曜日にも残って路面はウェットコンディションに終始した。路面状況の見極めとタイヤ選択も重要なポイントとなったが、軟質路面用のADVAN A031を効率的に使ったのがJN6を制した奴田原選手組。金曜日のショートステージと土曜日の前半セクションをADVAN A053、雨が降った土曜日の後半はADVAN A031を選択。日曜日はADVAN A031でスタート、後半はADVAN A053に交換しつつ「SEA TANGLE」のみADVAN A031を2本装着するという戦略で臨んだ。

雨に翻弄され、コースオフや川渡りでトラブルに見舞われてしまう選手もあったが、ヨコハマタイヤ勢が最高峰のJN6を含む3つのクラスを制して、タフなコンディションで見せた強さが光る一戦となった。