2016 SUPER GT Round 8 Report

【SUPER GT 第8戦/もてぎ】

GT300で「VivaC 86 MC 」が優勝を飾って王座を掌中に、
GT500は「WedsSport ADVAN RC F 」が3位表彰台獲得!!

SUPER GT Round 8

開催日 2016年11月11日-13日
開催場所 ツインリンクもてぎ
(栃木県)
天候 晴れ
路面 ドライ
決勝周回数 53周
(1周=4,801m)
参加台数 44台
(ヨコハマタイヤ装着車 25台)
SUPER GT 第8戦

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2016年のSUPER GTシリーズ第8戦、「MOTEGI GT GRAND FINAL」は、文字どおり泣いても笑っても今シーズン最後の戦いとなる。今大会はオートポリスで行われるはずだった第3戦の代替レースを土曜日に行い、その興奮も冷めやらぬ翌日が最終戦ということになる。

土曜日の決勝レースでは、予選2番手から今季2勝目を飾った、佐々木大樹選手と柳田真孝選手の「フォーラムエンジニアリングADVAN GT-R」、そして予選8番手から5位に食い込んだ、関口雄飛選手と国本雄資選手の「WedsSport ADVAN RC F」。ともに大活躍の要因となったのは、タイヤ無交換作戦だった。最終戦はご存知のとおり、ノーハンデとなるだけに、必然的に期待は高まるばかり。「WedsSport ADVAN RC F」は、トップから14ポイント差のランキング5位に、「フォーラムエンジニアリングADVAN GT-R」は、19ポイント差のランキング7位にそれぞれ浮上、シリーズチャンピオンの可能性を残している。王座獲得、そのためには勝つしかない。両チームの全スタッフが「優勝」を唯一の目標に、まずは予選に挑むこととなった。

一方、第6戦終了時に、GT300では14チームにチャンピオン獲得の権利が残されていたが、第3戦代替レースを終えた今、候補は一気に7チームまでに絞られた。そのうちヨコハマタイヤユーザーは、依然としてトップの土屋武士選手と松井孝允選手の駆る、「VivaC 86 MC」と、2位につける星野一樹選手とヤン・マーデンボロー選手の駆る、「B-MAX NDDP GT-R」の2台で、その差は9ポイントとなっていた。果たして「VivaC 86 MC」の逃げ切りなるか、「B-MAX NDDP GT-R」の逆転なるか、大いに注目された。

土曜日も素晴らしい天気に恵まれたが、日曜日はまさにそれ以上。このレースウィークで初めて、予選がドライコンディションで行われた。15分間の一発勝負であることは、土曜日と同様。GT300で最初に1分46秒台につけ、トップに立ったのは「グッドスマイル 初音ミクAMG」の谷口信輝選手。早々と走行を終了したが、その直後に「LEON CVSTOS AMG-GT」の蒲生尚弥選手が逆転し、そのまま逃げ切るかと思われたものの、最後の最後に一台の逆転を許して2番手に。そして、蒲生選手と谷口選手の間には、「マネパ ランボルギーニGT3」の平峰一貴選手、「GULF NAC PORSCHE 911」の吉田弘樹選手が割って入る。チャンピオンを争う2台は「VivaC 86 MC」の松井選手は6番手だったものの、前日に無得点だった「B-MAX NDDP GT-R」のマーデンボロー選手は14番手とやや厳しいポジションに。

一方のGT500、「フォーラムエンジニアリングADVAN GT-R」は柳田選手がアタックを担当。土曜日の優勝会見で「まだ明日があるので、爆発的な嬉しさがこみ上げてこない」と、すでにこの予選のことを考えていたが、いざ走り出すと思うようにタイムが伸びず、まさかの12番手。しかし、「昨日と同じタイヤでアタックした」とあれば、決勝には問題ないはず。追い上げが期待された。逆に気を吐いたのが、「WedsSport ADVAN RC F」の国本選手だった。終盤になって4番手に浮上したのだ。土曜日のようなポジションアップを再現できれば、優勝もきっと見えてくる。有終の美を飾るべく、決勝レースに臨むこととなった。

決勝レースはより天気が良くなって、見渡す限り雲ひとつない、まさに快晴となっていた。「WedsSport ADVAN RC F」の関口選手は、気合いのこもった走りで13周目には3番手に浮上し、23周目にピットイン。そこで土曜日とは違った光景を目にすることとなる。そう、タイヤは4本すべて交換されたのだ。

代わってステアリングを握った国本選手も猛然とダッシュ。上位陣のドライバー交代が終わった時にも、3番手がキープされ続けていた。しっかりグリップを保ったタイヤで、国本選手が前の2台を少しずつ詰めていったものの、逆転するにはほんの少しだけ周回が足りなかった。それでも3位フィニッシュということで今シーズン2回目の表彰台に立ち、連続入賞記録も「18」へと伸ばすこととなった。

だが、「フォーラムエンジニアリングADVAN GT-R」は無念のレースに……。土曜日の優勝を再現するには、序盤のうちに柳田選手はポジションを上げねばならなかったが、前を走る車両に行く手を阻まれることとなり、思うとおりの走りができず。ポジションも上げられずにいたため、チームは早めのピットインを決断。19周目に、引き続きタイヤ無交換で佐々木選手をコースに送り出すが、やはりトラフィックが厳しく追い上げもままならず。10位でのフィニッシュとなり、2日間で酸いも甘いも味わってシーズンを終了することとなった。

GT300ではトップ3がポジションキープでレースは開始され、「LEON CVSTOS AMG-GT」の黒澤治樹選手と「マネパ ランボルギーニGT3」の織戸学選手が連なって、トップにプレッシャーをかけ続ける。だが、織戸選手は8周目に突然のスローダウンの後に、緊急ピットイン。ドライブシャフトが音を上げてしまったのだ。勝ちに行っていたレースを失い、ピットからはため息が漏れた。

一方、十分なマージンがあるとはいえ、1ポイントでも多く稼ぎたい「VivaC 86 MC」の土屋選手は、オープニングラップで6番手から10番手に順位を落とす。しかし、それはグリッド上で無交換作戦にスイッチしたため、「今まで見たことがないほど、低い内圧」としていたためだ。

なかなかトップを抜けない状況に、いち早く「LEON CVSTOS AMG-GT」は対応。16周目に蒲生選手と交代するとともに、リアタイヤのみを交換する。この周にはまた、「VivaC 86 MC」もピットイン。予定どおり松井選手を無交換で送り出す。一方、トップは次の周にドライバー交代を行い、やはり無交換としたため、ポジションは保たれることに。だが、間もなく蒲生選手と順位を入れ替えた松井選手がトップの背後につけることとなり、バトルは再開。そして、少しのためらいもなく、34周目のV字コーナーで一撃勝負。抵抗を許すことなく、トップに浮上する。

その後の焦点となったのは、「LEON CVSTOS AMG-GT」の蒲生選手が繰り広げていた2番手争いだ。逆転も時間の問題と思われたが、まさかの緊急ピットイン。ミッションにトラブルが発生したのだ。代わって見せ場を作ったのは、その時3番手に浮上していた「B-MAX NDDP GT-R」のマーデンボロー選手と、「グッドスマイル 初音ミクAMG」の谷口選手による3番手争い。その軍配は45周目のV字コーナーで谷口選手に上がり、逆にマーデンボロー選手は後続からの相次ぐアタックで6番手に後退。それでも予選から8ポジションアップで、チェッカーを受けることとなった。

そうして後方では激しいバトルが繰り広げられていたにもかかわらず、まったく危なげない走りで松井選手は逃げ切りを果たし、「VivaC 86 MC」がタイでの第7戦に続く今シーズン2勝目をマーク。同時に悲願のタイトルを獲得する。「今までカートでしかチャンピオンの経験がない」と語っていた土屋選手にとっては、これがもちろん初戴冠。今年限りでレギュラーシートを離れて、エンジニアに専念すると宣言しており、無冠の帝王返上で有終の美を飾ることとなった。表彰台の上で、愛弟子の松井選手と喜びを分かち合っていた。

3位は「グッドスマイル 初音ミクAMG」が獲得。谷口選手と片岡龍也選手は、開幕戦以来の表彰台に立つことに。5位は山野直也選手とヨルグ・ベルグマイスター選手の「Excellence Porsche」が、そして「B-MAX NDDP GT-R」に続く7位は元嶋佑弥選手と近藤翼選手の「TAISAN SARD FJ AUDI R8」が獲得、ともに連続入賞を果たしていた。

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DRIVER VOICE

関口雄飛 選手 [WedsSport ADVAN RC F]

【今回の成績 : GT500クラス 3位】
ピットインで、もっと順位を上げるつもりでしたが、難しかったですね。序盤はペースが悪かったのですが、中盤からは良くなってきてポジションを上げることができました。今年1年を通して、決勝ではポジションを上げてきたし、シーズン後半の展開は良かったと思います。来年はシーズン前半からパフォーマンスを発揮したいですね。

国本雄資 選手 [WedsSport ADVAN RC F]

【今回の成績 : GT500クラス 3位】
もちろん優勝を狙っていましたので、満足できる結果ではありませんが、仕方ないですね。それでも今日、自分たちが持っている状況の中で、チームも僕たちドライバーもベストを尽くせたと思います。

佐々木大樹 選手 [フォーラムエンジニアリングADVAN GT-R]

【今回の成績 : GT500クラス 10位】
ポジションを上げてゴールできたので、それほど悪くはないと思っています。ただ、レクサス勢が予想以上に速かった。今日は来年に向けて、いいデータが獲れたのではないでしょうか。

柳田真孝 選手 [フォーラムエンジニアリングADVAN GT-R]

【今回の成績 : GT500クラス 10位】
前の渋滞に捕まって、そのペースにはまってしまいました。ペース的にはトップ集団にも着いていけたので、そう考えると改めて予選の重要さを感じずにはいられません。ヨコハマタイヤはシーズンを通じてすごく進化したと思いますし、チームにも大樹にも高いポテンシャルがあると思うので、来年はいい方向に向かうと思います。

土屋武士 選手 [VivaC 86 MC]

【今回の成績 : GT300クラス 優勝 (シリーズチャンピオン)】
こうしてチャンピオンが獲れたのは、今まで僕らを支えてくれた仲間のおかげです。本当に感謝していますし、最高の結末になりました。こんな結果が得られた要因は、僕の中でふたつあって、ひとつはタイヤ。無交換を前提としたタイヤをエンジニアと考えて、開発したものがあってこそ。そして、もうひとつが孝允の成長。今日から昨日にかけても成長していたし、シーズンを通じた成長ぶりは僕の想像も超えていました。圧倒的に突き抜けた速さを今は身につけているので、上(GT500)にもお勧め。今年で(レギュラー)ドライバーをやめると言って、初めてのチャンピオンが獲れたので、今は本当に幸せです!!

松井孝允 選手 [VivaC 86 MC]

【今回の成績 : GT300クラス 優勝 (シリーズチャンピオン)】
まさかチャンピオンが獲れるとは思っていませんでした。このコースでは僕らのクルマは苦しいと思っていたんですが、とにかくできるだけのことはしようと。とはいえ、エンジニアの武士さんと(土屋)春雄さんが最高のクルマに仕上げてくれたので、今回も僕は速く走ることだけに専念できました。このご恩に応えるためには、もっともっと速くならなきゃいけない。このチームでやれたことは、本当に幸せでした。僕に代わってから2番手に上がり、そのままの順位でもチャンピオンが獲れたのですが、追いついてきたなら勝ってチャンピオンをと。勝ちたい、負けたくないという気持ちが、そう思わせたのだと思います。

ENGINEER VOICE

藤代秀一 [ヨコハマ・モータースポーツ・インターナショナル SUPER GT開発統括]

GT300は特に25号車(VivaC 86 MC)が予選6番手から苦手な茂木でいかに勝つかといった戦略から、タイヤ無交換作戦を敢行し、優勝してくれました。戦略はもちろん、高いチーム力と2人のドライバーの力が一つになった結果だと思います。なおかつ勝ってチャンピオン獲得というのは、ヨコハマとしても嬉しいことでしたね、また2年ぶりにチャンピオンを取り戻すことができました。今日のドライ路面に関しては、予選・決勝共に他社以上のパフォーマンスが全車に発揮できたと思います。

GT500は19号車(WedsSport ADVAN RC F)が昨日とは違う作戦を採って、予選をソフト目のコンパウンドで行って、2スティント目もソフトで、要はソフト~ソフトでつないだのですが、路面温度の上昇でパフォーマンスを発揮しきれませんでした。それでも二人のドライバーがうまくレースラップを重ねてくれて、表彰台で終われたのは良かったと思います。

逆に24号車(フォーラムエンジニアリングADVAN GT-R)は昨日と同じ戦略で、ミディアムでタイヤ無交換としましたが、ミディアムでの予選では上位につける事は難しく、レースでもなかなか前に行けませんでした。来年に向けては、ギャンブル的な要素を含んだ作戦を取らなくても速いレースラップを刻め、上位でフィニッシュできるタイヤを作っていきたいと思っています。

そして、来年は車両が新型車に変わる為、開発スピードを上げ車両のパフォーマンスを引き出すタイヤを開発し、今年以上の成果を得られるよう今からエンジン全開で頑張りたいと思います。1年間ご声援ありがとうございました。