2016 SUPER GT Round 3 Report

【SUPER GT 第3戦/もてぎ】

フォーラムエンジニアリングADVAN GT-Rがタイヤ無交換で今季2勝目、
GT300はExcellence Porscheとマネパ ランボルギーニGT3が表彰台に並ぶ!!

SUPER GT Round 7

開催日 2016年11月11日-12日
開催場所 ツインリンクもてぎ
(栃木県)
天候 晴れ
路面 ドライ
決勝周回数 53周
(1周=4,801m)
参加台数 44台
(ヨコハマタイヤ装着車 25台)
SUPER GT 第3戦

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2016年のSUPER GT、第3戦はオートポリスで開催されるはずだったが、熊本地震の影響で中止になり、代替レースが最終戦と合わせ、「MOTEGI GT GRAND FINAL」としてツインリンクもてぎで開催されることとなった。その第3戦は土曜日のうちに予選、決勝レースを行い、また7戦目に当たるレースということもあり、全戦に出場している車両はウエイトハンデが通常の半分となる。

前戦のタイで優勝した、「WedsSport ADVAN RC F」にとっては、まさに光明。本来なら、この優勝で82kgのウエイトハンデを積むところが42kgで済むからだ。しかも、2週間前には国本雄資選手がSUPER FORMULAで初のチャンピオンを獲得、関口雄飛選手がランキング3位に輝いており、いま最も波に乗っているドライバーふたりがドライブするだけに、期待は高まる一方だ。一方、佐々木大樹選手と柳田真孝選手がドライブする「フォーラムエンジニアリングADVAN GT-R」も同様だ。一昨年はこのもてぎで予選14番手に沈みながら、決勝で猛烈な追い上げを見せて4位に食い込んだほど。両チームともに今季2勝目、そして逆転のタイトルを目指して、まずは最初の予選に挑むこととなった。

GT300は前戦で土屋武士選手と松井孝允選手の駆る「VivaC 86 MC」が優勝を飾り、2位も星野一樹選手とヤン・マーデンボロー選手の駆る「B-MAX NDDP GT-R」が獲得、その結果ランキングでもヨコハマタイヤユーザーの、この2台が1位、2位につけることとなった。王座獲得に、最も近い存在であるのは間違いないが、2レース開催とあってこのレースウィークだけで最大42ポイントの加算が可能なため、現時点で14位までのチームにチャンピオンの権利があると言えるため、決して予断は許されない状況にあった。

今回のタイムスケジュールは通常とは異なる、1日のうちに予選と決勝を行うスケジュールのため、公式練習は金曜日に実施され、また予選は早朝に、しかも15分間の1セッションで行われることに。ドライバーはひとりのみ走ればいいが、土曜日にアタックしたドライバーは、日曜日に連続して予選に挑むことは許されていないため、どこにエースドライバーを投じるかも作戦のひとつとなった。

その予選は金曜日までの悪天候から一転、強い日差しが注ぐまで天気は回復したが、路面はまだ濡れたまま。中にはドライタイヤを投じたチームもあったが、想いのほか乾きが悪くウェットタイヤの選択が正解となった。そんな中、GT300でヨコハマタイヤユーザーの最上位は、「triple a ランボルギーニGT3」をドライブする、佐藤公哉選手の6番手。これに「VivaC 86 MC」の土屋選手が続いて、前日に激しいクラッシュを喫した「JMS LMcorsa 488 GT3」の新田守男選手が、無事修復なって8番手につけることとなった。

GT500では「フォーラムエンジニアリングADVAN GT-R」は佐々木選手が、「WedsSport ADVAN RC F」は関口選手がアタックを担当。ここで観客を沸かせたのは佐々木選手だった。計測開始から間もなくトップタイムを叩き出し、元F1ドライバーのヘイキ・コバライネン選手とシーソーゲームを繰り広げたからだ。最後はわずかに届かず2番手ながら、今季最上位からスタートに。0.065秒の僅差だったこともあり、大きな期待とともに決勝を迎えることとなった。一方、関口選手は思うようにタイムを上げられず。8番手に終わったものの、タイヤ無交換作戦も視野に入れて、大きくセッティングを変えずに戦略で活路を見出すことを誓っていた。

予選終了からわずか4時間足らずで、決勝レースのスタート進行が開始。同時に行われたウォームアップは普段より8分長い15分とされ、それぞれ最終確認を行うこととなる。この時が、このレースウィーク初めてのフルドライコンディションとあって、時間は有効に活用されていた。「フォーラムエンジニアリングADVAN GT-R」は佐々木選手が、そして「WedsSport ADVAN RC F」は関口選手がスタートを担当。

佐々木選手はスタート直後に一台にかわされ、3番手に後退するも、そのポジションはしっかり守って周回を重ねる。それから間も無くGT300のアクシデントにより、セーフティカーランが行われる。その間は言うまでもなく、バトル再開後も遅れをとることはなく、大きなミスさえなければチャンスがあるという状況が続いた。そして実際に、レースは序盤のうちに動いた。

先行する2台が早めのピットストップを相次いで行ったこともあって、21周目から佐々木選手はトップに浮上。そして、そのまま後続にギャップを築き続けていく。快調に走行する佐々木選手は34周目になってようやくピットに入り、給油して柳田選手に交代。もちろんタイヤ交換はなし。柳田選手はトップのままコースに復帰し、後続との差を約5秒とする。その「フォーラムエンジニアリングADVAN GT-R」を追いかけてくるのは、予選同様コバライネン選手。まさに因縁の対決となり、ラスト2周はテール・トゥ・ノーズ状態となるも、柳田選手はしっかりガードを固めて逆転を許さず。今季2回目のトップチェッカーを受けることとなった。

「今日は本当に作戦どおりだった。一番はちょい濡れの予選で、大樹がフロントローにつけたこと。ヨコハマタイヤはウェットでいちばん良かったと思う。大樹が無線でいけるといってきたので、無交換を決めた。最後の2周は柳田がよく堪えてくれた。『任せた!』とはいったけど、内心はヒヤヒヤだったよ」とは近藤真彦監督の偽らざる本音か。

「WedsSport ADVAN RC F」もまた、胸のすくレース展開を見せてくれた。関口選手が次々と前のクルマを抜き去り、オープニングラップのうちに6番手、2周目に5番手に浮上。そのまま29周目には国本選手にシートを委ねる。こちらもタイヤ無交換。最小限のロスで国本選手は4番手に浮上する。しかし、無交換であったがゆえのタイヤの負担は大きく、40周目に1台の先行を許すが、堂々の5位でフィニッシュ。連勝はならなかったものの、連続入賞も17戦にまで伸ばすこととなった。

そしてGT300では、2周目に2か所のアンダーブリッジでアクシデントがほぼ同時に発生。うち一件はフロントが大破して、オイルも激しく撒かれていたことから、即座にセーフティカーが導入されることとなり、5周に渡って行われることに。ヨコハマタイヤユーザーの中で最上位を走ったのは、「VivaC 86 MC」の土屋選手で、セーフティカーラン直前、オープニングラップのうちにひとつ順位を上げて6番手に。ランキングトップにつけていることもあって、あえてリスクを冒さず、しばらくはポジションキープに徹することとなった。

しかし、ドライバー交代は素早く18周目には行い、「VivaC 86 MC」のステアリングを、土屋選手は松井選手に託すことに。タイヤはすべて交換したこともあって、しばらくの間は中団におさまるも、全車がドライバー交代を終えると7番手を走行する。そして、その時点で前を走行するヨコハマタイヤユーザーが、レースを大いに盛り上げることとなった。

ドライバー交代を32周目まで伸ばしたこともあり、26周目からトップに立っていたのは山野直也選手の駆る「Excellence Porsche」。ヨルグ・ベルグマイスター選手への交代と併せ、タイヤを4本すべて交換する間に5番手に交代するも、37周目にはひとつポジションをアップ。そしてタイヤ無交換で「マネパ ランボルギーニGT3」を織戸学選手から引き継いでいた、平峰一貴選手に続くこととなる。

その後、この2台は2番手を走行する車両を相次いで攻略すると、続いてバトルを繰り広げることとなり、その激しさは観客の視線を釘づけにしたほどだった。だが、無交換と4本交換の違いは歴然で、最終ラップの最終コーナー立ち上がりで平峰選手に襲い掛かったベルグマイスター選手は、ストレートで並んで1コーナーまでには完全に前に出る。その結果、トップの車両だけは逃げ切りを許してしまったものの、ポルシェとランボルギーニを操るドライバーたちが、久々の表彰台に立つこととなった。

今回から元嶋佑弥選手のパートナーが近藤翼選手に改められた、「TAISAN SARD FJ AUDI R8」が6位でゴール。特に近藤選手はGTデビュー戦とは思えぬ好走を見せていた。これに続く7位でフィニッシュしたのが「VivaC 86 MC」だった。ポイントの近いライバルが揃ってリタイアしたり、下位に沈んだりして得点できなかったため、9ポイントのマージンを背負って、より優位な形で今季最後の戦いに臨むこととなった。

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DRIVER VOICE

佐々木大樹 選手 [フォーラムエンジニアリングADVAN GT-R]

【今回の成績 : GT500クラス 優勝】
前2台のRC Fは速かったけれど、着いていければ勝てると思っていました。もてぎのコースはクルマにあっているので、自信はありました。今日、無交換だったので、明日はもっといいパフォーマンスを見せられると思います。ああ、今夏も成功したからといって、『無交換の佐々木』と呼ばれるのは嫌ですね(笑)。僕ら以上にタイヤマネージメントができるコンビは、他にないと言う自負はありますよ。

柳田真孝 選手 [フォーラムエンジニアリングADVAN GT-R]

【今回の成績 : GT500クラス 優勝】
大樹がスタートから順調に走ってくれました。優勝して爆発的な喜びが湧いてくるんじゃなく、実は僕自身もヒヤヒヤしていましたよ。大樹も僕も、タイヤを保たせるのは自信がありました。SUGOで優勝してからが良くなくて、チームにも迷惑をかけましたので、本当にまた勝てて良かったです。明日の第8戦はノーハンデなので、頑張ります!!

関口雄飛 選手 [WedsSport ADVAN RC F]

【今回の成績 : GT500クラス 5位】
予選は少し足りないところがありましたが、決勝は心配なく走れました。24号車(フォーラムエンジニアリングADVAN GT-R)くらいのペースがあれば、また違った展開になっていたんじゃないかと思うんですけどね。でも、いい走りができましたし、明日は今日より上に行ける、いい結果になると思います。

国本雄資 選手 [WedsSport ADVAN RC F]

【今回の成績 : GT500クラス 5位】
無交換でしたので最後はタイヤが厳しかったのですが、まわりのペースを考えれば、いい走りができました。作戦的にも早めにピットインしていれば2位、3位だったと思うと悔しいですけど、予選8番手から5位フィニッシュは悪くない結果だと思います。明日はもっと前からスタートしたいですね。

山野直也 選手 [Excellence Porsche]

【今回の成績 : GT300クラス 2位】
予選はまず、ウェットコンディションだったので僕の中ではドライタイヤはなくて、ウェットタイヤで出ていったら予想どおりでした。セオリーどおりなら最後の方でアタックした方が、路面は良くなるのは間違いないから、しばらくはコースのコンディションを見ながら走っていたんですが、自分としては納得のいくアタックはできました。もうちょっと上の順位だったら良かったんですけど、決勝では今年の目標である表彰台に上がることができました。まわりより硬いタイヤを選んで、満タンでスタートしたんですが、それでも最後までパフォーマンスをキープしてくれました。

織戸 学 選手 [マネパ ランボルギーニGT3]

【今回の成績 : GT300クラス 3位】
今回はノー交換しかないでしょうっていうテーマで進めてはいたので、データはなかったから何とも言えなかったけど、そういった意味では想定どおりの、どこまで行けるか選手権だったんですが、いいレースができたと思います、チーム全体で。タイヤ的にはほとんど問題がなくて、今回はブレーキがきつかったです。すごくいいパフォーマンスを出してくれたと思います。

ENGINEER VOICE

藤代秀一 [ヨコハマ・モータースポーツ・インターナショナル SUPER GT開発統括]

第3戦の予選は今まででしたら、うちが最も苦手とするコンディションでしたが、新しく投入したスペックがうまくマッチしました。いつも通りなら2台揃って最後尾に並んでしまうような状況の中、ポールポジションを争えたのは、ひとつ大きな進歩があったと思います。

そのポジションをうまく利用して、2台とも無交換作戦をしましたが、24号車(フォーラムエンジニアリングADVAN GT-R)に関しては、非常にうまくはまりました。これで2勝目となり、19号車(WedsSport ADVAN RC F)の1勝を加えてヨコハマタイヤとしても3勝と、年間最多勝タイになれたことは非常に良かったと思います。

その一方でGT300に関しては、予選でコンディションに合うタイヤがなくて、ユーザーさんにも迷惑をかけてしまいました。その影響が決勝レースにも残ってしまい、優勝を逃してしまった事は残念でした。