2015 WTCC Round 7&8 Report

【FIA世界ツーリングカー選手権 第7戦&第8戦/ニュルブルクリンク (ドイツ)】

WTCC史上前例の無い超ロングコースを舞台とした一戦、
伝統のニュルでもシトロエン勢が速さを見せた!!

WTCC Round 7&8

開催日 2015年5月14日-16日
開催場所 ニュルブルクリンク
(ドイツ)
天候 第1レース:晴れ
第2レース:晴れ
路面 第1レース:ドライ
第2レース:ドライ
決勝周回数 第1レース:3周
第2レース:3周
(1周=25,378m)
2015 WTCC 第7&8戦

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昨年同様に全12大会/24戦のカレンダーが組まれている、2015年のWTCC(FIA世界ツーリングカー選手権)。12会場のうち初めてのWTCC開催がオフシーズン中から注目を集めていたのが、ドイツ・ニュルブルクリンクである。

“世界最大の草レース”とも称される24時間レースとの併催となった、WTCCドイツラウンド。その舞台は24時間レースと同じく、全長25kmにおよぶ北コース(ノルドシュライフェ)。1927年のオープン以来、幾多の伝説を生んできた名門コースであるが、スプリントレースのWTCCにとって一周が25kmというのは前例のないスケールである。また、決勝距離は他の大会より若干伸びたものの、周回数は僅かに3周。もっとも、長いコースの中にはさまざまな要素が織り込まれているが、例えばドライバーや車種の得意・不得意が出る箇所があったとしても、通過する回数は限られるために駆け引きやレースの組み立てが難しいところだ。

他のシリーズ戦とは違いも大きいニュルブルクリンク、今年でワンメイクタイヤサプライヤー10周年を迎えたヨコハマタイヤでは、ニュルブルクリンク専用のウェットタイヤを開発し、FIA(国際自動車連盟)の承認を受けて供給した。従来のものに対してはよりソフトなコンパウンドを採用しており、雨になると気温/路面温度ともに下がる当地の気象条件に対応している。

この専用ウェットタイヤは、金曜日のフリープラクティス(FP)1でポテンシャルの高さを実証した。木曜日のテスティング走行はドライコンディションとなりシトロエン勢がトップ3を独占したが、一夜明けて金曜日は朝から雨模様。コースが濃い霧に包まれたことから、朝一番に予定されていたFP1はスタート時刻が順延となった。そしてコースオープンを迎えたが、濡れた路面に対して大半のマシンが専用ウェットタイヤを装着。シトロエン勢は雨に対するセットアップの確認などでタイムはそれほど伸びなかったが、一方でラーダ勢が速さを見せて今季初参戦のヤープ・ヴァン・ラーゲン選手とロブ・ハフ選手がワン・ツーとなった。

FP2はコンディションが回復したため、シトロエン勢が再び速さを見せてホセ・マリア・ロペス選手がトップタイム。上位5台のうち4台をマニュファクチャラ―登録のシトロエンが占めたが、そんな中でシボレーRMLのヒューゴ・ヴァレンテ選手が2番手に食い込む力走を見せた。

そして予選でもこのオーダーは変わらず、第1レース(第7戦)のポールポジションを獲得したのはロペス選手。ヴァレンテ選手が2番手、3番手にはセバスチャン・ローブ選手(シトロエン)というスターティンググリッドに。さらに4番手はノルベルト・ミケリス選手(ホンダ)が陣取り、車種が入り混じるグリッドが形成される展開となった。

今回は併催のため、土曜日の24時間レーススタート前に行われた決勝。長いフォーメーションラップを経て、17台が9列の第1レース(第6戦)スターティンググリッドについた。注目のスタート、レッドシグナル消灯とともに各車が一斉にアクセルオン、しかし2番グリッドのヴァレンテ選手が一寸出遅れ、イン側から抜きにかかってきたミケリス選手と接触。この混乱をよそにロペス選手が先行、ターン1~2ではインを奪ったローブ選手とイヴァン・ミューラー選手が前に出てシトロエン勢が早々に1-2-3フォーメーションを構築した。

このスタートが全て、と言っても過言ではない展開で進んでいく第7戦。アイフェルの森を駆け抜けるWTCCマシン、出遅れを喫したヴァレンテ選手はトム・チルトン選手(シボレーRML)と接触を伴う激しいバトルや、ティアゴ・モンテイロ選手(ホンダ)をストレートでスリップストリームも巧みに使って先行してポジションをアップしたが、2周目にコースオフからタイヤバリアに衝突してリタイアに。

一方で上位を固めたシトロエン勢、中でもロペス選手は終始レースの主導権を手放すことなく走りきり、今季開幕から4戦連続となる第1レース優勝を飾った。また、YOKOHAMAトロフィーは総合4位フィニッシュのミケリス選手。スポット参戦で注目を集める女性ドライバーのザビーネ・シュミッツ選手(シボレーRML)も、総合10位/YOKOHAMAトロフィー5位で初WTCCのリザルトにその名を刻んだ。

短いインターバルをはさんでスタートを迎えた第2レース(第8戦)。リバースグリッドによりポールポジションはモンテイロ選手、2番手に第1レースはリタイアを喫したトム・コロネル選手(シボレーRML)、3番手はガブリエレ・タルクィーニ選手(ホンダ)という布陣になる。スタートは混乱もなく各車はターン1へ。ここでタルクィーニ選手がベテランらしいライン取りでコロネル選手を制してターン2のインを奪って2番手にポジションアップ。しかし、その先でミューラー選手がタルクィーニ選手を加速力で制してインからパス、モンテイロ選手に照準を合わせていく。

そしてタルクィーニ選手の真後ろにつけたミューラー選手、テール・トゥ・ノーズで名物コーナーのカルーセルを抜け、2周目を待たずして長い直線で一気に前に出てトップを奪う。そのころ後方ではミューラー選手以外のシトロエン勢が、コロネル選手とメルディ・ベナニ選手(ホンダ)をなかなかかわせずに隊列状態が続いていたが、こちらもロペス選手が先陣を切って牙をむいてポジションを奪っていく。

最終的にはロペス選手がホンダ勢を2台ともパスして2番手にまで浮上したが、先行するミューラー選手をとらえるまでは至らず。ミューラー選手がモロッコの第2レース(第4戦)以来となる、今季2勝目を飾ることに成功した。2位はロペス選手で、ランキングトップの座をさらに固める結果に。3位はモンテイロ選手となり、シトロエン勢による表彰台独占を阻止した。YOKOHAMAトロフィーは総合6位フィニッシュのベナニ選手が勝ち取った。

DRIVER VOICE

ホセ・マリア・ロペス 選手 [Citroen Total WTCC]

【今回の成績 : 第7戦 優勝 / 第8戦 2位】
とても良い結果を残すことが出来ました。今回のレースでもマシンの状態は素晴らしく、シトロエンに感謝しています。私はニュルブルクリンクについて自信を持っていましたし、レースをとても楽しめました。本当に素晴らしいサーキットですし、誰もがここで勝ちたいと望む、それがニュルブルクリンクです。

イヴァン・ミューラー 選手 [Citroen Total WTCC]

【今回の成績 : 第7戦 3位 / 第8戦 優勝】
今回のレースでは、まずスタートに集中しました。そして次に、強力なダウンフォースを武器に、攻めの走りをしていきました。セクター4は決して速さを出し切れていないのですが、ストレートでの速さを活かす戦略でレースを組み立てました。神話的ともいえるニュルブルクリンク、ここでWTCCが開催されると発表された時からワクワクしていましたが、このような結果を残すことが出来てよかったです。

TECHNICAL INFORMATION

WTCC発足から11年目、これまでに無い超ロングコースでの一戦となったドイツラウンド。世界中の自動車メーカーなども研究開発の場としているニュルブルクリンク、もちろんタイヤにとっても最高のパフォーマンスが要求されるステージだ。ヨコハマタイヤは当地にテストセンターを設置して市販高性能タイヤの研究開発を行っているが、モータースポーツの世界においても24時間レースをはじめ、ニュルブルクリンクで開催されるレースへの参戦経験は豊富で、今回の専用ウェットタイヤ開発にもつながっている。

専用ウェットタイヤは容易に見分けられるように赤いラインがサイドウォールに入れられたが、このタイヤは金曜日のFP1で主要選手が装着。厳しいウェットコンディションの中を走った選手からは、非常に満足できる性能を見せてくれたというコメントが寄せられた。