2015 JRC Round 6 Report

【全日本ラリー選手権 第6戦/群馬県嬬恋村】

雨を制してJN6はヨコハマタイヤ勢がワン・ツー・フィニッシュ、
新井敏弘選手組は3連勝で今シーズン4つめの勝ち星を獲得!!

JRC Round 6

開催日 2015年8月28日-30日
開催場所 群馬県・嬬恋村 近郊
天候/路面Day1) 雨 時々 曇り/ウェット~ハーフウェット
Day2) 雨/ウェット
ターマック(舗装路面)
総走行距離 286.589km
SS総距離 65.452km (17SS)
得点係数 1.0 (舗装路50km~100km未満)
参加台数 63台 (イノベーションクラス含)
(ヨコハマタイヤ装着車 19台)
全日本ラリー選手権 第6戦

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北海道洞爺、福島とグラベル(非舗装路)での2連戦を終えた全日本ラリー選手権のカレンダーは、3戦ぶりのターマック(舗装路)で群馬県嬬恋村を舞台に開催された。伝統の「モントレー」を冠した第6戦は昨年よりも開催時期が1ヶ月後ろとなったが、今年も雨が勝負の分かれ目となった。

昨年に続いて標高1,300mのパルコール嬬恋スキーリゾートを拠点とする「モントレー2015 in 嬬恋」。土日の2日間で17本のSS(スペシャルステージ)、合計65.908kmが設けられたターマックラリーだが、Day2にはグラベルが設定されておりSS全体の11%ほどを占める。また、本大会は規則により使用出来るタイヤの制限があり、他のターマック戦においてRPN車両以外では主戦力となるADVAN A050のような競技用スポーツラジアルタイヤの装着が禁止された。このためヨコハマタイヤ勢はADVAN NEOVA AD08Rがメインとなり、さらにグラベルを見越して舗装路から超硬質ダートに対応するADVAN A036の使用も視野に入ってくるかたちとなった。

土曜日のDay1は未明からの雨が路面を濡らす中、9時30分にゼッケン1をつける新井敏弘選手/田中直哉選手組がスタート。オープニングは「Panorama Ⅰ (7.054km)」、ウェットとなった全日本屈指の高速ステージでは奴田原文雄選手/佐藤忠宜選手組がステージベスト、新井敏弘選手組、吉澤哲也選手/井手上達也選手組と続いてトップ3をヨコハマタイヤ勢が独占。今回、ライバル勢は新商品を投入してきたが、これを装着した最上位となった福永修選手組に対して奴田原選手組は14.6秒、キロ2秒近いリードでADVAN NEOVA AD08Rのウェットグリップ性能がパフォーマンスを遺憾なく発揮した。

続くSS2「Imai Kadokai Ⅰ (5.467km)」は雨が小康状態となったが、ここでも奴田原選手組がステージベストを奪って速さを見せる。「Omae Suzaka Down (5.316km)」、「Palcall Ⅰ (0.491km)」と4本のステージをこなしてセクション1を終えて、トップは奴田原選手組、6.8秒差の2番手が新井敏弘選手組とヨコハマタイヤ勢がワン・ツー・フォーメーションを構築した。

その後、雨はほぼ止んだ状態となりリピートステージの路面は完全なドライにはならなかったものの、路面の水はかなり掃けていく。こうした中でヨコハマタイヤ勢の力走が続いたが、上り方向に転じた「Omae Suzaka」を含むリピートステージで構成されるセクション2で惜しくも順位をドロップ、奴田原選手組は3番手、新井選手組は4番手で初日を折り返した。

一夜明けたDay2は朝から再び雨模様。ただし前日よりも雨足は強く、残る距離は23.755kmながらグラベルも含まれるため、勝負は雨とグラベルを如何に制するかが鍵となる。ここで戦略が分かれ、奴田原選手組は前日に引き続き18インチのADVAN NEOVA AD08Rを装着、対する新井選手組はブレーキまわりを朝の20分サービスで交換して15インチのADVAN A036を装着した。

2日目のオープニングは、今年新たに設けられたステージであるSS11「Sajiki」。法面から泥が流れ出ている箇所もある難しいコンディション、ここでライバル勢を圧倒する速さを見せたヨコハマタイヤ勢だったが、フィニッシュ手前300mほどのところで先頭スタートの福永選手組がクラッシュして道を塞いだため、このステージは奴田原選手組など後続車両に一律タイムが与えられた。

続くSS12「Gunmazaka Ⅰ (5.931km)」は前半がグラベルとなるが、新井選手組がこの大会初のステージベストを刻む。前のSSで福永選手が戦列を離れたことからトップはライバルの勝田範彦選手組、奴田原選手組が1.7秒差の2番手、新井選手組はトップと5.6秒差だったが、新井選手組は奴田原選手組を6.3秒、勝田選手組を11.5秒このステージだけで引き離して一気にトップの座を奪う。

SS13はオールグラベルのショートステージである「Asama Ⅰ (0.605km)」、深く大きな水たまりが出来ているステージも新井選手組がベスト、奴田原選手組がセカンドベストをマーク。このリピートとなるSS14「Asama Ⅱ」は路面悪化によりキャンセル、続くSS15「Palcall Ⅳ (0.491km)」は新井選手組と奴田原選手組が同秒ベストと、優勝争いは両者の一騎討ちに。

リピートの2本で決する勝負、SS16「Sajiki Ⅱ」は奴田原選手組がベストで新井選手組に詰め寄るも、グラベル区間の長い最終ステージ「Gunmazaka Ⅱ」で新井選手組がベストを奪って勝負は決した。新井選手組は北海道洞爺から3連勝、今シーズン4勝目をマークしてシリーズランキングで後続をさらに引き離した。そして2番手は奴田原選手組、ヨコハマタイヤ勢がJN6クラスでワン・ツー・フィニッシュを飾った。

JN2クラスでは須藤浩志選手/新井正和選手組がADVAN A08Bを装着して快走。Day1は10本SS中8本でステージベストを刻む速さを見せた。Day2は初日で築いたマージンを背景に危なげ無い走りでトップを譲ることなく、およそ15年ぶりとなる嬉しい全日本での優勝を飾った。また、中西昌人選手/廣嶋真選手は3位でフィニッシュして表彰台を飾った。

このほか、JN5クラスではグラベル路面を見越してインテグラで参戦した石田雅之選手/遠山裕美子選手組が3位表彰台を獲得。JN4クラスでは番場彬選手/亀森隆志選手組が終盤の2ステージで見事な逆転を演じてポジションを上げて準優勝に輝いた。

DRIVER VOICE

新井敏弘 選手 [富士スバル アライモータースポーツ WRX]

【今回の成績 :JN6クラス 優勝】
Day1はADVAN NEOVA AD08R、Day2はADVAN A036を使いました。雨の降り方と、Day1トップとのタイム差を考えて、賭けに出たような感じですね。実はタイム的なアドバンテージは、A036だからと言って極端に大きい訳でも無いと思います。しかしドライバーとしての精神的な部分と、攻め込んでいける余裕が出来るので、最終的な選択としてA036になりました。これでシリーズランキングもポイント差を広げましたが、RALLY HOKKAIDOは全日本選手権枠で出場してチャンピオンを目指していく方向で考えています。

奴田原文雄 選手 [ADVAN-PIAA ランサー]

【今回の成績 : JN6クラス 2位】
今回は使えるタイヤに規制がかけられたことが、他のターマックラリーと大きく異なる要素になりました。Day2にはグラベル路面もあるのでADVAN A036という選択肢もあったのですが、サイズの関係で作業が大がかりになってしまうので、Day2朝の20分サービスでは対応出来ないのです。使うためにはDay1の最終サービスで対応しなければならないのですが、翌日のコンディションを予想するのは難しい。そこで2日間を通してADVAN NEOVA AD08Rで戦いました。Day1の序盤は2連続ステージベストでしたが、雨の中では高いポテンシャルを遺憾なく発揮してくれましたね。残念ながら優勝には届きませんでしたが、新井選手と終盤で競り合えて楽しかったですね。2位まで来たので次のRALLY HOKKAIDOでは優勝かな、と思っています。

番場 彬 選手 [ADVAN Gd 高崎くす子 86]

【今回の成績 :JN4クラス 2位】
Day2の「Sajiki」と「Gunmazaka」は、1走目で石川昌平選手組にどちらも5~6秒負けていました。そこでタイヤの内圧やドライビングスタイルを変えました。いままでと違う新しい走らせ方を実践したのですが、群馬の道が僕を育ててくれましたね(笑)。アドバイスをしてくれたチームのみなさんに感謝しています。若狭ラリーで全日本初優勝しましたが、気負いのようなものは特にありませんでした。でも、最終ステージはキロ2.8秒タイムアップ出来たのですが、「出来るんだったら、最初からやれ」とみなさんに怒られました(苦笑)。ポイント差も縮まって自力王座の可能性も出てきたので、残りのターマック2戦に出場してヨコハマタイヤとの縁も深い最終戦の新城でチャンピオンを決めたいですね。

須藤浩志 選手 [スマッシュ BRIG コマツ スイフト]

【今回の成績 :JN2クラス 優勝】
今回はオープニングステージから行くぞと誓って臨みましたが、雨の高速ステージからだったのでかなりプレッシャーもあって、前の晩からシミュレーションを沢山したのですが、ちょっと身体が固くて本来のよい走りは出来ませんでした。でも、ベストを奪えたことで気分は良くなりましたね。初日に17秒くらいのマージンを持っていましたが、Day2は最初の2本をそこそこ攻めて行きました。Sajikiの下りはいろいろありましたが、ベストを刻んでそのまま逃げきれました。全日本の優勝は2輪駆動部門以来、カローラFXのスーパーチャージャーだったから15年ぶりくらいですね。それからも年に何回かは出場を続けてきましたが、やはり優勝は格別ですね(笑)

TOPICS

今年も多彩なイベントで盛り上がったモントレー!!

モントレーでは昨年に続いてパルコール嬬恋スキーリゾートのサービスパークに隣接して、ラリーパークが設けられた。自動車メーカーやアフターパーツメーカーなどがブースを出展、来場者を大いに楽しませた。その中には往年のラリー車や燃料電池自動車の展示もあり、ともに来場者の高い関心を集めていた。

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また、ギャラリーステージとなったエリアでは、SS開催以外にも多彩なイベントを展開。そのひとつが今年からJAF(日本自動車連盟)の公認競技となった「オートテスト」であり、参加者はおのおのがドライビングテクニックを思う存分に発揮した。

また、デモンストレーションランには全日本ダートトライアル選手権のDクラス・ディフェンディングチャンピオンである谷田川敏幸選手も登場。お馴染みのスバル・WRX STIを持ち込み、豪快な走りを披露。間近にした観客からは歓声もあがっていた。

AREA GUIDE

日本一のキャベツ生産地として知られる嬬恋村!!

人口およそ1万人の嬬恋村は、群馬県の西部に位置しており長野と県境を接している。村内のほとんどが標高1,000m以上の高地であり、夏場は避暑地として、冬場はスキーやスノーボードなどのウィンタースポーツを楽しめる地として人気が高い。また、豊富な湯量と多彩な泉質を誇る万座温泉は、全国の温泉愛好家からの評価も高い必訪スポットのひとつである。

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そんな嬬恋村は、「日本一のキャベツ生産地」として広く知られている。社会科の教科書でも高原野菜の生産が盛んなことは紹介されているが、キャベツについては売り上げが全国総出荷量の半分を占めている。村内には広大なキャベツ畑が広がり、夏から秋にかけて出荷される。モントレーの開催時期はまさに出荷の最盛期であり、まるまると育ったキャベツが大型トラックで首都圏をはじめ各地へと出荷されていた。

パルコール嬬恋スキーリゾートに設けられたラリーパークでは、来場者に土曜日と日曜日にそれぞれ2,000個のキャベツが無料でプレゼントされた。これは観客のみならず参加チームの関係者からも大好評で、多くの選手やスタッフもキャベツをお土産に持ち帰った。

TECHNICAL INFORMATION

昨年に続いて雨が勝負をわける結果となったモントレーだが、今年はワン・ツー・フィニッシュを飾ってヨコハマタイヤ勢が借りを返すかたちとなった。本大会では特別規則によってADVAN A050など競技用スポーツラジアル銘柄の使用が禁止されたため、ヨコハマタイヤ勢はADVAN NEOVA AD08Rが主戦力となった。

日本のみならず世界各地でも販売されているADVAN NEOVA AD08Rのポテンシャルは定評が高いところだが、全日本ラリー選手権でも雨の高速ステージで上位を独占するなど優れたパフォーマンスを遺憾なく発揮。準優勝を飾った奴田原選手組はグラベル路面の多いDay2も装着したが、「Sajiki」や「Asama」でもライバル勢を寄せつけない速さを見せた。