2015 JRC Round 5 Report

【全日本ラリー選手権 第5戦/福島県棚倉町】

新井敏弘選手組が洞爺に続いてグラベルラリーを連勝、
ADVAN A053が国内デビューから3年連続で福島を制した!!

JRC Round 5

開催日 2015年7月24日-26日
開催場所 福島県・棚倉町 近郊
天候/路面Day1) 晴れ/ドライ
Day2) 晴れ/ドライ
グラベル(非舗装路面)
総走行距離 458.94km
SS総距離 62.02km (15SS)
得点係数 1.2 (非舗装路50km~100km未満)
参加台数 44台 (イノベーションクラス含)
(ヨコハマタイヤ装着車 19台)
全日本ラリー選手権 第4戦

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前戦・洞爺から2週間という短いインターバルをはさみ、全日本ラリー選手権のカレンダーは第5戦のラリーウィークを迎えた。「がんばろう!福島 MSCCラリー2015」は今年も福島県の棚倉町をホストタウンに、隣接する鮫川村や浜通り方面のいわき市までをフィールドとする。

SS(スペシャルステージ)は、15本を設定。Day1は昨年から使われている「西根 (5.29km)」、大会最長の「鶴石山リバース (11.06km)」、「長草萱山 (4.38km)」、そしてサービスパーク隣接の「ルネサンス (0.50km)」を各2回ずつ走行。Day2では「流・岡田 (4.34km)」を3回、昨年とは逆方向で設定された「東野牧野リバース (2.33km)」、ギャラリーが見守る雄大な風景の観光牧場内を走る「鹿角平 (0.94km)」を2回ずつ走行する。

2戦連続のグラベルラリーとなる福島。しかし道のキャラクターは前戦の洞爺とは大きくことなり、こちらは狭くツイスティなステージで構成される。路面そのものもやや荒れたところが多く、いわゆる“ガレ場”と称されるような雰囲気が強い。ゆえにタフな展開になることが多く、過去にはDay1で半数以上がリタイアを喫したこともある。

今年は昨年と比べて開催時期がおよそ1ヶ月うしろになったこともあり、2日間の競技はともに天候に恵まれた。ただし土曜日Day1については、金曜日の夜に降った強い雨の影響がステージに残り、路面は完全に乾くまでには至らず、オープニングの「西根 1」などにはところどころマッディな箇所も残った。ただ、それよりも厳しい暑さがクルーやマシンを容赦なく襲ったラリーでもあった。最高気温は30度を超え、湿度が高く蒸し暑さが厳しい週末となった。マシンも水温や油温がシビアになり、各クルーは暑さという見えない敵との戦いにもなったのである。

こうした中で幕を開けた戦いは、洞爺を制した新井敏弘選手/田中直哉選手組と、今回からVAB型にマシンをスイッチしたライバルの勝田範彦選手組による、VAB型WRX STI同士の一騎討ちという展開が、ステージを重ねるごとに色濃くなっていった。

SS1「西根 1」こそ勝田選手組が新井選手組を3.9秒離したものの、SS2「鶴石山リバース1」で新井選手組がステージベストを奪いラリーリーダに立つ。さらにSS3「長草萱山 1」は新井選手組が連続ベスト、奴田原文雄選手組、炭山選手組、新井大輝選手組と続いて、ADVAN A053を装着するヨコハマタイヤ勢が速さを見せる。SS4「ルネサンス 1」はショートステージを得意とする炭山選手組がベスト、新井(敏)選手組、新井(大)選手組と親子が続いて、こちらもベスト3を独占、セクション1を終えてトップは新井(敏)選手組で勝田選手組との差は6.0秒。

セクション2のリピートステージではSS6を終えて勝田選手組が1.8秒差にまで詰め寄ってきたが、SS7「長草萱山 2」では新井(敏)選手組が3回目のベストを奪ったのを筆頭に再びヨコハマタイヤ勢がトップ4を占めてライバル勢を突き放し、最終の「ルネサンス 2」は新井(大)選手組がこの大会初のステージベスト、新井(敏)選手組も勝田選手組を上回るタイムでフィニッシュ。Day1を終えてトップは新井(敏)選手組、2番手の勝田選手組との差は5.7秒となる。3番手争いは奴田原選手組と炭山選手組が8.2秒差、その2.5秒後ろに新井(大)選手組と、こちらはヨコハマタイヤ勢による三つ巴の展開だ。

Day2のオープニングは「流・岡田リバース 1」。このステージのみは3回走行することから勝負どころと目されており、特にワダチが掘れていない1回目の走行は重要なポイントとなる。そんな流・岡田の1走目で一気に勝田選手組を引き離したのが新井(敏)選手組。4.5秒とキロ1秒離してその差を10.2秒に拡大すると、SS13「東野牧野リバース 2」、SS14「鹿角平 2」でもステージベストを刻んで逃げきり、洞爺に続く連勝、福島では2011年のスポット参戦以来となる優勝を飾った。

3番手争いはSS9で新井(大)選手組がコースオフを喫して戦列から離れた一方、炭山選手組はDay2のオープニングをセカンドベストであがると、続くSS10「東野牧野 1」でベストを叩き出す。そしてリピートとなるSS12「流・岡田リバース 2」でこの日2回目のベストを刻んで奴田原選手組を逆転、3番手にポジションをアップ。最終の「流・岡田リバース 3」でもベストをマーク、洞爺に続いて3位表彰台を獲得した。

このほか、JN2クラスでは中西昌人選手/廣島真選手組が、クラス移籍後の初優勝を飾った。中西選手にとっては昨年のRALLY HOKKAIDO以来、廣島選手は全日本選手権初優勝である。JN5クラスではベテランの石田雅之選手/遠山裕美子選手組が3位表彰台を獲得、後輪駆動勢の最上位となった。JN3クラスでは唐釜真一郎選手/松浦俊朗選手組が3位でフィニッシュした。

DRIVER VOICE

新井敏弘 選手 [富士スバル アライモータースポーツ WRX]

【今回の成績 :JN6クラス 優勝】
洞爺から時間がなかったこともあって、事前のテストをする時間がほとんどなくて3kmほどを走っただけで迎えた本番でした。狭くツイスティでコーナーが続く道ですが、海外でも例えばキプロスとかギリシャには似たようなところがあるので、こういうところもしっかり走ることが求められますよね。勝田選手組はタイヤをまめに替えて最適なものを選んでいましたから、そこは砂利がある1走目と掃けた後の2走目で状況に合わせられるので特に2走目では強みですよね。でも、初日をトップで終えてホッとしましたが、その差は何かワンミスで簡単にひっくり返るものでしたから、普通にミスの無い走りを心がけました。Day2はオープニングで離してやれば精神的にも相手にダメージを与えられるので、SS9はアクセルを踏んでいきましたね。

炭山裕矢 選手 [CUSCO ADVAN WRX-STI]

【今回の成績 : JN6クラス 3位】
Day1でセッティングに悩んだ面があり、ちょっとリズムに乗るのが遅れてしまいました。後半から良くなってきたので、夜はコ・ドライバーの保井選手ともども反省して気合いを入れ直して、Day2に臨んでいきました。それも実ったか、3位表彰台に立てました。ラリーはたまたま運良くフィニッシュまで行ける、ということは無いと思うんですよ。距離の短いダートトライアルなら「あいつ、危ないよ」なんていう走りでも、なんとかゴールできることもあり得ますけれど、ラリーではそうはいきません。結局は自分の技量の100%に如何に近いところで走れるか。Day2の序盤、三つ巴の展開でしたがオープニングで思ったよりもタイムが悪くなかったので、そのままベストを次でとれて3位フィニッシュ。同じ3位ですが、追い上げて抜いての3位ですから洞爺よりさらに収穫ですね。3位があれば2位、そして優勝とステップがありますから、これをバネにさらに上を目指していきます。

中西昌人 選手 [ADVAN・WM・KYB マクゼス スイフト]

【今回の成績 :JN2クラス 優勝】
今年からクラスをJN2にしたのですが、我慢の戦いが続いてきました。車の速さとしては高橋(悟志)選手と真っ向勝負では難しい面もあるかと思ったので、タフなステージが多いDay1をなんとかペースを守って走りきれば勝負になるな、と。そうしたら、やはりセクション2で高橋選手がギャップにすくわれて、私が逆転してトップに立つという展開になりました。さらにSS8、ここでスタートを止められて。前走の高橋選手が足を壊して、これで差が大きく広がったことから、Day2は完走ペースで走りきりました。暑さが厳しい週末でしたが、雨続きだった九州より暑くて。でもRPN車両はエアコンがついているので、ステージ以外はエアコン全開で走ったので、これには助けられましたね(笑)

TOPICS

タフな一戦で全日本初優勝を飾った廣島真選手!!

今回の福島、JN2クラスで今季初優勝を飾ったのが中西昌人選手/廣島真選手組。昨年はJN1クラスに現役女子大学院生だった美野友紀選手とのコンビで参戦してチャンピオンを獲得した中西選手、今年は廣島選手とのコンビで参戦するが、今回の優勝は廣島選手にとって全日本選手権初優勝という記念すべき一勝になった。

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「10年前に大学の自動車部で計算ラリーをはじめて、学生の大会で1回優勝しています。その後も年に何回かはコ・ドライバーとしてオールスターなどに参戦してきました。2013年のオールスターで高篠孝介選手と組んで、昨年はシーズンを通じて高篠選手と全日本に参戦しました。そして今年はJN2で中西選手と組ませていただいています」

全日本選手権には2年目のシリーズ参戦となる廣島選手。コンビを組むのは昨年のJN1クラスでチャンピオンを獲得している、ベテランの中西選手。ディフェンディングチャンピオンのコ・ドライバーをつとめるということで、学ぶこともたくさんあるようだ。

「去年も全日本にはシリーズ参戦しましたが、まだまだコ・ドライバーとしての経験が足りないので、勉強することがたくさんあります。コ・ドライバーはマルチタスクな人が適していると思うのですが、僕はひとつのことに集中すると他のことを忘れてしまいがちなので、いろいろ中西選手に迷惑もかけてしまっているかと思います。そんな中で、たとえ上とタイムが離れても粘りの走りでしっかり最後まで勝負することの大切さを知りました。コ・ドライバーとしては視野を広くもって、周りから色々な情報を常に収集して戦略を作るといった、先を見て動けるようになるべく頑張ります」

中西選手も「情報収集能力が豊富で、若いのに素晴らしいコ・ドライバーです。これからさらに伸びるためにも、体力もしっかりつけて頑張ってほしいですね」と語った。年齢差は親子以上というコンビ、さらなる活躍に期待が集まる。

AREA GUIDE

大草原の中で、バーベキューなどを楽しめる鹿角平!!

一昨年はじめてリエゾンルートとしてラリーに組み込まれ、昨年からはギャラリーステージとしてファンにも楽しまれているのが、鹿角平(かのつのだいら)のステージ。このステージは鮫川村にある鹿角平観光牧場の中を走る道が使われており、緑の大草原を貫く道をラリーマシンが駆け抜けていく様子は、ヨーロッパのラリーを彷彿とさせる美しいロケーションである。

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鹿角平観光牧場は、その名の通り観光スポットとしての整備もされており、家族連れで一日を大自然の中で楽しめる。バーベキューハウスは多彩なセットメニューが用意されており、手ぶらでやってきても美味しさを満喫できる。バンガローやキャンプ場も用意されており、クロスカントリーコースで汗を流すことも可能だ。

さらにこの鹿角平には天文台があり、5名以上で事前予約するとインストラクターによる天体観望案内を受けられる。天文台は今回のラリー開催にあわせて特別観望会も開催、ギャラリーステージ隣接のラリーパークでもブースを出していた。東京から200km、車で3時間ほどという距離はドライブにも最適。夏休みの一日を、星空の大草原に囲まれて過ごされてみてはいかがだろうか。

TECHNICAL INFORMATION

開催時期が7月後半になったことから、暑さも厳しい中で行われた今年の福島ラウンド。使われたステージはタフな路面で、初日は前夜の雨によってコンディションも難しい一戦となった。そんな中、ADVAN 053は持ち前の対応領域の幅広さを遺憾なくアピール。前戦・洞爺ではハイスピードステージへの高い適応性を見せたが、今回は真逆にアベレージスピードが低くツイスティなステージであったが強さを見せた。

海外ラリーで鍛えられたADVAN A053、その国内仕様が全日本ラリー選手権にデビューしたのは2013年の福島。デビュー戦でワン・ツー・フィニッシュ、昨年も優勝、そして今年で3年連続の優勝となった福島。つまりADVAN A053は福島で負け知らずということであり、日本のラリーにおいても優れたパフォーマンスを発揮するその象徴とも言える大会であった。