2015 JRC Round 3 Report

【全日本ラリー選手権 第3戦/福井県おおい町】

JN4クラスの番場彬選手が全日本ラリーで初優勝、
JN3ではいとうりな選手が優勝争いの一角に食い込んだ!!

JRC Round 3

開催日 2015年6月5日-7日
開催場所 福井県・おおい町 近郊
天候/路面Day1) 雨 のち 晴れ/ウェット ~ ドライ
Day2) 晴れ/ドライ
ターマック(舗装路面)
総走行距離 278.79km
SS総距離 510.57km (14SS)
得点係数 1.0 (舗装路50km~100km未満)
参加台数 61台 (オープンクラス含)
(ヨコハマタイヤ装着車 20台)
全日本ラリー選手権 第3戦

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開幕からのターマック(舗装路)三連戦、その締めくくりとなる第3戦「若狭ラリー2015」が福井県おおい町をホストタウンに開催された。昨年までの京都府・丹後半島から福井県の若狭地方に舞台を移した一戦には、オープンクラスを含めて61台のエントリーが集まった。

豊かな自然に囲まれた複合レジャー施設「うみんぴあ大飯」を拠点に、4.02kmの「Sekiya」、9.37kmの「Furusato」というふたつの林道、さらに観光有料道路の三方五湖レインボーラインを貸し切った8.14kmの「Rainbow」、おおい町総合運動公園の中を走る0.59kmの「PlayPark」と4つのSS(スペシャルステージ)が設けられた若狭ラリー。林道はアップダウンに富み、路面のコンディションも場所によって変化が大きく、攻略し甲斐のあるステージだ。一方で有料道路は二車線のハイスピードコース。風光明媚なロケーションで日本国内のラリーとしては特徴的な風景が参加選手にも好評だった。

Day1が行われた6日(土)は、前夜からの雨が降り続いている中で午前7時にゼッケン1をつける奴田原文雄選手/佐藤忠宜選手組がスタート。前戦のように苔こそ生えていないものの、スリッパリーな林道ステージが選手たちを待ち構えていた。そんな中、オープニングの「Sekiya 1」で幸先よいステージベストを奪ったのが奴田原選手組。チャンピオン争いのライバルである勝田範彦選手組に5.0秒、キロ1秒以上の差をつける快走で戦いは幕を開けた。

その後、SS2「Furusato 1」こそ2.0秒差で勝田選手組に続く2番手となった奴田原選手組だったが、リピートとなるSS3とSS4で連続ステージベストをマーク、セクション1の4本中3本でベストを奪って、勝田選手組に7.7秒差をつけADVAN A050の優れたウェット性能を遺憾なく発揮した。

1回目のサービスに入った頃には雨もあがり、ギャラリーが見守る「PlayPark 1」では新井敏弘選手/田中直哉選手組がベストを刻んでファンの期待に応える。そして2回連続で走行する「Rainbow」は青空の下でドライコンディション、奴田原選手組は1走目をセカンドベスト、2走目はサードベストであがり、最終の「PlayPark 2」もしっかり走りきって4.5秒差のトップでこの日の最終サービスに戻ってきた。その後、勝田選手組が最終TCへの遅着ペナルティを受けたため、その差は14.5秒となって初日を終えた。

Day2の7日(日)は、朝から好天に恵まれた。残るステージは6本、合計距離は30.84km。逃げきりが期待された奴田原選手組だったが、SS10「Rainbow 4」をスタートしてまもなくターボトラブルに襲われてしまい、無念のリタイアとなった。一方で新井選手組は粘りの走りで3番手をキープ、フィニッシュまでマシンを運んで表彰台の一角に立った。

JN4クラスでは前戦・久万高原で3位だった番場彬選手が、開幕戦と同じく亀森隆志選手とのコンビで出走。マシンは同じトヨタ86ながら、今回から新車を投入した。その番場選手、SS1こそ1秒差の2番手だったが、SS2で6秒勝って香川秀樹選手組を逆転してトップに立つと、こちらはADVAN A08Bのウェット性能を活かしてSS3でもステージベストをマーク。SS4で2番手にドロップするも、SS5「PlayPark 1」でベストを刻むと、SS6「Rainbow 1」で再び香川選手組を逆転。初日を終えて18.7秒差をつけ、大量マージンを背景にDay2へと臨む。

番場選手組の好走は2日目に入っても留まることなく、朝一番のSS9「Rainbow 3」では惜しくも0.4秒差でベストには届かなかったものの、香川選手組に対しては10.4秒引き離す速さを見せる。このまま最後まで安定したラリー運びを見せた番場選手組は新車のデビューウィンを飾るとともに、自身も全日本ラリーでの嬉しい初優勝を飾ることに成功した。

また、JN4クラスでは前戦で番場選手に続く4位入賞している小濱勇希選手/馬場雄一選手組も力走。初日を終えて3番手だったが、SS9で香川選手組を逆転して2番手にポジションをアップ、ヨコハマタイヤ勢がワン・ツー・フイニッシュとなった。

JN3クラスを大いに盛り上げたのは、いとうりな選手/新井祐一選手組。既に全日本ラリーではお馴染みとなったピンクのマツダ・デミオを駆って、得意のハイスピードステージである「Rainbow」では男性ドライバーに全くひけをとらない豪快な走りを披露。SS7「Rainbow 2」ではステージベストを奪ったほか、セカンドベストも数多くマークして一時はトップに立った。

惜しくも接戦の末にポジションをドロップしてしまったものの、最後までしっかりマシンを運んで3位でフィニッシュ。初の表彰台獲得には、多くのギャラリーからも惜しみない拍手が贈られていた。

さらにJN2クラスでも、スイフトを駆る須藤浩志選手/新井正和選手組が3位表彰台を獲得した。

DRIVER VOICE

新井敏弘 選手 [フジスバル アライモータースポーツ WRX]

【今回の成績 :JN6クラス 3位】
全日本として初開催となる若狭ラリーですが、道はとても面白いしクレストがあったり路面のアンジュレーションも複雑で、とても面白い一戦でした。これで序盤のターマック三連戦が終わりましたが、VAB型のWRX STIについてはターマックでどれだけ旋回性能をあげるセッティングを見いだせるかが肝になると考えています。久万高原から今回までの間に手を加えていますが、まだまだ詰めていかなければなりませんね。次からはグラベル(非舗装路)が続きますが、実はグラベルをVABではまだ走っていないのです。だから洞爺までの間にグラベルテストを何度かやって、車をしっかりあわせていこうと思っています。

番場彬 選手 [ADVAN Gd 高崎くす子 86]

【今回の成績 : JN4クラス 優勝】
国内ラリーではBICCカップをプロトンで勝って以来、全日本選手権では初優勝です!! 今回のラリーは同じステージを2日間使うので、最初からプッシュしていく戦い方にしました。序盤は雨だったこともあって、みんな最初は様子見をしてくるだろうと思ったので、そこでマージンを稼ぐ作戦です。コンディションは悪かったのですが、車は全て僕の好みに仕上げてもらったのでウェットでもまったく怖くありませんでした。セクション2でRainbowの2本目からはセットを硬めに変えていきましたが、それも当たりましたね。タイヤは初日を4本そのままローテーションもしないで走りきり、2日目のスタートでフロントに新品を投入。最終ステージ前でリアの左にスペアで積んでいたタイヤをつけたのですが、これは右回りのステージだったのでデイポイントを狙う意味でも攻めていきました。残念ながらベストは更新できましたが、0.4秒届きませんでした(苦笑)。

小濱勇希選手 [ADVAN フェイスクラフト BRZ]

【今回の成績 :JN4クラス 2位】
今回は小浜(おばま)市も開催地域ですが、名前の字が同じな小浜(こはま)です(笑)。セクション1のウェット、それ以降はドライで、ふたつのラリーを走っているような変化に富んだ一戦でしたね。林道は奥が深くて騙されるような場所もありましたが、久万高原と違って同じウェットでも苔が無いので全然走りやすかったですね。セッティングも久万高原の後にウェット寄りに変えたのも当たりましたし、タイヤも難しいコンディションにマッチしていて熱も入りやすいし排水性も良いので、タイヤに助けられた部分も大きかったですね。「Rainbow」は全日本の中でも屈指の気持ちよいステージでした。モントレーにもハイスピードステージがありますが、あそこまで長いストレートが無く、路面もフラットでとにかく気持ちよかったですね。この後はターマック3戦に参戦の予定ですが、その間にセットアップを詰めて戦闘力を高めていくつもりです。

いとうりな 選手 [ADVAN p.mu エムスポーツ デミオ]

【今回の成績 :JN3クラス 3位】
「Rainbow」のような広いハイスピードコースは大好きなので、気持ちよく走れました。初日のセクション1は雨だったこともあるので無難にまとめて、セクション2でドライに転じて好きなハイスピードステージなので、そこは行くしかないでしょう、と(笑)。一時はトップにも立ちましたが、特にプレシャーはありませんでした。むしろ私がトップ争いの一角にいたことで、みなさんのプレッシャーになったかもしれませんね。優勝は意識しませんでしたが、入賞できればいいなと思って走ったので、初めてのラリーでの表彰台に立てて嬉しいです!!

TOPICS

初開催の若狭ラリーを大いに沸かせたヨコハマタイヤ勢!!

2011年のAPRC(FIAアジア・パシフィック・ラリー選手権)において、ジュニアカップのタイトルを獲得している番場彬選手。国内ラリーではタスカ・エンジニアリングの1Aチームでランサー・エボリューションを駆るなどしてきたが、これまでの最高位は3位(4WD車では5位)となっていた。そんな番場選手が待望の全日本初優勝を飾った若狭ラリー。フィニッシュ後の番場選手は喜びを次のように語ってくれた。

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「今回から新車を投入していますが、車を作る段階から例えばサスペンションのセッティングにしても、シートポジションなども、僕にあわせてもらいました。チームのお蔭で万全の体制になりましたが、これは逆にドライバーとして言い訳する余地が全く無くなったということ。だからこそ今回の初優勝は嬉しいですね」

“新車効果”も大きかったが、それ以上に今回の番場選手はラリー全体の組み立てや戦い方も万全だったという。

「例えばタイヤのマネージメントにしても、全体的な組み立て方にしても、完璧なラリーウィークになりました。タイヤについては交換のタイミングもそうですが、空気圧管理もしっかり出来ました。なによりADVAN A08Bはウェットからドライまで圧倒的なポテンシャルを持っています。それに摩耗性能も良いので、もし今回「Rainbow」がもう1回あったとしたら、よりライバルに対して大きな差をつけられたと思います」

この後はモントレーと新城への参戦を予定しているという番場選手。二勝目を期待されるところだが、「行けると思いますよ!!」と力強いコメントを寄せてくれた。



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もう一人、大いに注目を集めたのがJN3クラスのいとうりな選手。ステージベストを奪うのみならず、多くのセカンドベストも刻んで一時はクラストップに立ち、優勝争いの一角を占めた。

「ラリーを始めて5年目になりましたが、初めての表彰台を獲得できました。広いハイスピードのステージは、これからもガンガン攻めて行きます!! あまりハンドルを切りたくないので林道はまだ苦手ですが、今回の『Rainbow』みたいな道は大好きですね」

ラリーのみならず、レースやカートにも積極的に挑戦を続けている、いとう選手。その中でラリーの楽しさと今後の抱負を聞いてみた。

「ラリーは何が起きるかわからないし、走るほどにどんどん運転が上手くなるのが楽しいですね。アクセルはどんどん踏んでいきますが、怖さはありません。今年は残り全戦に出場する予定なのですが、グラベルも広い道が好きなので、Rally Hokkaidoは相性が良いと思っています。初優勝を目指して頑張ります!!」

若狭ラリーを盛り上げてくれた二人のドライバー。今後もさらなる活躍が期待される、注目の存在である。

AREA GUIDE

舞鶴若狭道の全線開通で、観光ドライブの幅も広がった若狭地方!!

今回ステージとして使われた三方五湖、そして大会の拠点となったおおい町など、福井県の若狭地方は風光明媚なスポットも多く、特にこれからの季節はドライブ旅行にお勧めのエリアだ。若狭湾沿いには豊富な海の幸を提供する店が多いほか、海水浴場もあるので、夏のレジャーで出かけてみてはいかがだろうか。

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そんなドライブでは、SSにもなった「三方五湖レインボーライン」はぜひ走ってみたいところ。何カ所かある展望駐車場からは若狭湾の絶景を望めるのに加え、第一駐車場ではゴンドラやリフトで山頂公園までアクセスすることが可能で、ここからは三方五湖を一望する素晴らしい眺望を楽しめる。また、サービスパークとなった「うみんぴあ大飯」に隣接する道の駅は、地元の幸を使った食事を楽しめるレストランや、おおい町産の果物や野菜を使ったジェラートなどを味わえるほか、特産品も豊富なラインナップが販売されている。

TECHNICAL INFORMATION

前戦の久万高原と同様に、天候の変化が大きい一戦となった若狭ラリー。Day1の雨は午前中のセクション1に影響を与え、ここでリタイアを喫したクルーも少なくなかった。そんな中、自身の全日本ラリー初優勝を飾った番場彬選手は、ワンメイクレースでも強さを見せてきたADVAN A08Bの卓越したポテンシャルを遺憾なく発揮。スリッパリーな林道ステージでステージベストをマークして優勝争いを序盤から演じた。

そしてコンディションがドライに転じたセクション2以降は、ADVAN A08Bのグリップ&コントロール性能を活かしてさらに快走。ライバルを大きく引き離して嬉しい優勝の表彰台へとマシンを運んだが、その足元をしっかりとADVAN A08Bが支えての勝利であった。