2015 JRC Round 1 Report

【全日本ラリー選手権 第1戦/佐賀県唐津市】

インポートマシンの参戦も注目を集める全日本ラリー選手権、
今年も九州・唐津の地を舞台に華やかに開幕!!

JRC Round 1

開催日 2015年4月10日-12日
開催場所 佐賀県・唐津市 近郊
天候/路面Day1) 曇り/ウェット~ドライ
Day2) 晴れ/ドライ
ターマック(舗装路面)
総走行距離 301.97km
SS総距離 71.23km (14SS)
得点係数 1.0 (舗装路50km~100km)
参加台数 55台 (オープンクラス含)
(ヨコハマタイヤ装着車 25台)
全日本ラリー選手権 第1戦

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昨年は6クラス中5つのクラスでヨコハマタイヤ勢がチャンピオンを獲得した全日本ラリー選手権。2015年のシーズンが、佐賀県唐津市を舞台とする「ツール・ド・九州2015 in 唐津」で幕を開けた。

昨年同様に唐津東港の一角に設けられたサービスパークを拠点に、5つの林道SS(スペシャルステージ)と、サービスパークに隣接しており手軽に観戦できるショートステージで構成される開幕戦。Day1は「林の上 (4.26km)」と「黒木平 (3.95km)」を各3回、大会最長となる「三方 (11.76km)」を2回ずつ走行。Day2は「白木々場 (3.62km)」と、三方の一部をDay1とは逆方向に使う「陣の山 (7.52km)」、そしてサービスパーク隣接の「SSSシーサイド (0.40km)」を各2回ずつ走行。全14本のSS合計距離71.23kmで競われるターマック(舗装路)ラリーである。

大会は12日(土)の朝に市内の唐津神社で行われた恒例の安全祈願からスタート。全選手が出席して今シーズンの安全を祈願、選手を代表して昨年のチャンピオンである奴田原文雄選手と佐藤忠宜選手が神前に玉串を奉奠した。その後、坂井俊之唐津市長らが振るフラッグを合図に各車がスタート。大勢の市民がおくる声援を受けながら、まずはオープニングステージとなるSS1「林の上 1」へと向かう。

前日夜まで降った雨が残り、ウェットコンディションとなった序盤戦。そんな中でオープニングステージは現行型のスバルWRX STIを投入した新井敏弘選手/田中直哉選手組がベストを奪い、0.1秒差で奴田原文雄選手組が続く。さらにSS2「黒木平 1」は奴田原選手組がベスト、新井(敏)選手組がセカンドベストを奪うのみならず、3番手に炭山裕矢選手/保井隆宏選手組、4番手に新井大輝選手/伊勢谷巧選手組、5番手に竹内源選手/加勢直毅選手組と続き、上位をヨコハマタイヤ勢が独占。最大のライバルである勝田範彦選手組に奴田原選手組は8.4秒、キロ2秒以上の差をつける速さを見せつけた。

サービスをはさんでセクション2、SS5としてリピートする「黒木平 2」はドライコンディション。ここでも奴田原選手組がベスト、新井(敏)選手組がセカンドベストのワン・ツーであがり、さらに奴田原選手組は3回目の走行となるSS7「黒木平 3」も制してこのステージを完全制覇。しかし距離のある「三方」で差を詰めてきたのが勝田選手組、Day1最終となるSS8「三方 2」で奴田原選手組は惜しくも逆転を喫し、デイ順位は2番手となった。

一夜明けた13日(日)は、夕方から雨の天気予報も出されていたが、結果的には日中の気温が20℃に達する陽気に恵まれ、オールドライコンディションとなった。Day1は2番手だった奴田原選手組だが、勝田選手組との差は僅かに0.5秒。逆転が期待されたが、SS12「白木々場 2」こそベストを奪ったものの、あと一歩及ばず2位でフィニッシュする結果となった。

JN6クラスの3番手は新井(敏)選手組。ニューマシンのデビュー戦ということでセッティングに苦労した面もあったが、しっかり表彰台を獲得。4位に食い込んだのは新井(大)選手。惜しくもステージベスト奪取こそならなかったものの、Day2オープニングのSS9「白木々場 1」では勝田選手組と僅か0.2秒差のセカンドベストを叩き出すなど快走を見せて周囲の期待に応え、最後までマシンを壊すことなくフィニッシュへと運びDay2を3番手であがってデイポイントを獲得した。そして新井(大)選手とポジションを入れ替える形にはなったものの、「SSS シーサイド」の2本でともにベストを刻んだ炭山選手組が5位でフィニッシュ。1回目のシーサイドが全日本ラリー選手権におけるVAB型WRX STIの初ステージベストである。JN6クラスの上位は、その多くをヨコハマタイヤ勢が飾る結果となった。

JN5クラスはトヨタ86/スバルBRZなどに対して、輸入車が3車種新たに名を連ねて注目を集める。そんな輸入車のうち、2台が参戦するプジョー・208GTiがヨコハマタイヤを装着するが、柳澤宏至選手/中原祥雅選手組が4位でフィニッシュ。SS2とSS5の「黒木平」でステージベスト、SS4「林の上 2」ではセカンドベストを刻み、輸入車勢の最上位を初戦で獲得した。また、森康宏選手/菅野総一郎選手組の208GTiも9位でしっかり完走を果たし、これからの戦いぶりにも期待が膨らむ結果を残した。

そして、輸入車勢を迎え撃つかたちとなった日本車勢の中で速さを見せたのが、石田雅之選手/遠山裕美子選手組のトヨタ・86。Day1は4番手に留まったものの、Day2に入って安定した速さを見せ、昨年に続いて唐津で準優勝を飾った。

JN4はDay1で3回のステージベストをマークした、スバル・BRZを駆る小濱勇希選手/馬場雄一選手組が準優勝。3位には2010年以来の全日本選手権復帰となった番場彬選手が亀森隆志選手とのコンビで、FR(後輪駆動)には不慣れと語りながらもDay1とDAY2でセッティングを見直すなどして、しっかり走りきって表彰台を獲得した。

このほか、JN3ではマツダ・デミオの藤田幸弘選手/藤田彩子選手組が準優勝、トヨタ・ヴィッツの本名修也選手/湊比呂美選手組が3位表彰台を獲得。JN2はスズキ・スイフトの須藤浩志選手/新井正和選手組、JN1もマツダ・RX-8の喜多見孝弘選手/木原雅彦選手組が、それぞれ準優勝を飾った。

DRIVER VOICE

奴田原文雄 選手 [ADVAN-PIAA ランサー]

【今回の成績 : JN6クラス 2位】
Day1の序盤でトップに立ちましたが、今回のラリーは三方が厳しかったですね。Day2の陣の山は三方の逆走なので、どちら向きに走っても大きな違いはありませんでした。そんな中でタイヤについてはDay1序盤のウェットが残っているところでも強さを見せられたと思います。電動減衰力調整式のサスペンションを使っているのですが、これも効果があって結果としてタイヤに対する負担も軽減してくれます。Day1は序盤がウェットだったということもありますが、6本で走りきれたのはこのサスペンションのお蔭もありますね。次の久万高原はポイント係数も大きいので、しっかり勝ちたいと思います。

新井敏弘 選手 [フジスバル アライモータースポーツ WRX]

【今回の成績 :JN6クラス 3位】
VAB型の現行モデルを投入しましたが、今回はなかなか車が曲がらなくて大変でした。Day1序盤はウェット路面が残っていましたが、そういう状況でハイスピードなコースであればどうにか思ったところに近いかたちで車を動かせるのですが、ドライのクネクネしたコースになると厳しかったですね。2速や3速を使うスピード域の低いところでは回頭性を詰めきれておらず、ロングコーナーは特に大変でした。そのためタイヤに過度な負担をかけてしまったところもあり、私のタイヤは摩耗が他の選手よりも進んでしまいました。しかし、VAB型は安定感が高く破綻をきたさずにハイスピードコーナーを駆け抜けられるというキャラクターの持ち主。その特性を活かしつつ、低速コーナーの多いラリーに対しても車を煮詰めていこうと思います。

石田雅之 選手 [加勢eレーシング86]

【今回の成績 :JN5クラス 2位】
ちょっと自分のドライビングでマズかったのは、Day1のSS1とSS2でした。路面が濡れているところに砂が出ていたりして、単純なウェットはいいのですが、砂のあるところを警戒しすぎてタイムを縮められませんでした。ドライの三方を走ってみて悪くないなという感じでしたが、それでもターボエンジン勢に差をつけられてしまいましたね。しかし、Day2の道は思っていた以上に86に合っていて、ポジションを上げられたのは良かったですね。実はちょっと恥ずかしい話なのですが、車については私が乗るようになってからダンパーのクリックひとつ触ったことが無いんです(笑) 三好秀昌選手が乗っていた車を受け継いで、最初に走りに行って「悪くないな」と。結局、いままでそのままの状態なんです。三好選手とドライビングスタイルは違うと思うのですが、昨年の最終戦が終わってからはオイル類を換えてアライメントをとったくらいなんですが、本当に車の素性のよさに尽きるんでしょうね。

柳澤宏至 選手 [ADVAN クスコ RALLY+ 208GTi]

【今回の成績 :JN5クラス 4位】
車が仕上がってから1度テストして作動確認をして臨んだ開幕戦でした。テストしての印象は、なにしろ久しぶりのFF(前輪駆動)車ですし、速いんだか遅いんだかサッパリわからなくて(笑) もう何十年ぶりのFF車ですが、タイヤの使い方とかタイムの出し方をいろいろ試しながら走った開幕戦でしたが、車も細かくセットアップしたわけではない中で勝負にならないほど遅いわけでもなかったのでデビュー戦としては上出来だと思います。これからやるべきことも色々とあるので、これからポテンシャルがどのくらい上げて行けるのかも楽しみですね。

TOPICS

全日本ラリー選手権に巻き起こるインポートカーのムーブメント!!

今年の全日本ラリー選手権、オフシーズン中から話題を集めていたのがJN5クラスに参戦するインポートカーたちである。昨年までからの継続参戦となるアバルト500がOPENクラスから移行してきたのに加え、MINI JCW クロスオーバー、そしてプジョー・208GTiといった個性的な顔ぶれが揃った。

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このうちヨコハマタイヤを装着して参戦するのは、2台のプジョー・208GTi。いち早くこのマシンでの参戦を発表したTEAM CERAMの草間一朝代表は、「ラリーマシンとしての素性は、悪くないと思います。輸入車ということで不安を感じられる方もいるかと思いますが、国産車と比べても極端に大きく苦労することは無いですね」と語る。

そこであえて苦労した面をお聞きすると、「いろいろな情報がフランス語で来たりとかはありましたね(笑) いまはロールケージを組んで、純正のもので最低限に仕上げたという感じの状態ですが、車の細かいところの情報となると国産車とは少々勝手が違うところもあるのは正直な印象ですね」とのこと。しかし、「国産車も新型が出始めたころはパーツが無いとか、いろいろ苦労することもありますよね。それと同じで、時間とともに208GTiも日本のラリーでスタンダードな存在になれば、もっと楽になると思います」という。

そもそも草間代表がプジョーを選んだ理由は、「最初に僕が、2~3歳のときに父の膝の上で見たプジョー・205T16、これがキッカケでラリーを好きになったんです。プジョーはR2、R5とラリー活動を地道に展開し続けてきていますし、日本のラリーにひとつの風穴を開ける意味でもこういう車でやってみたかったんです。ぜひ僕たちの次に続いてくれる方が増えることも期待したいですし、注目を集めているので格好よく恥ずかしくない戦いを続けていきたいと思います」とのこと。

次の参戦は第4戦のARKラリー洞爺をスケジューリングしているというTEAM CERAM。グラベル(非舗装路)で208GTiがどのような戦いぶりを見せてくれるのか期待したい。

AREA GUIDE

特別名勝「虹の松原」は、唐津で必ず訪れたいスポット!!

九州最大の都市である福岡から、車でおよそ1時間の距離にある佐賀県唐津市。2013年4月に行われた二丈浜玉道路の無料化を含め、西九州自動車道の整備も進んで交通アクセスは一層便利になっている。また、鉄道の利便性も高いことから、九州でも人気の観光地である。

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市内には唐津城や、11月に開催される「唐津くんち」で巡行する曳山展示場などの見どころ、そして食の分野でもご当地グルメとして有名な「呼子のイカ」や「唐津バーガー」など、注目のポイントが多い。

そんな中でも絶対に外せないスポットが、特別名勝にも指定されている「虹の松原」だ。三保の松原(静岡市)、気比の松原(敦賀市)と並ぶ日本三大松原のひとつにも数えられており、唐津湾に沿っておよそ5kmにわたって黒松林が続く光景は日本らしい美しさを見せる。鏡山展望台からも一望できる「虹の松原」、今回のラリーではリエゾンルートとして松原を抜ける県道347号・唐津街道が設定され、多くの地元の方々やラリーファン、観光客らが松原とラリーマシンの競演を楽しんだ。

TECHNICAL INFORMATION

残念ながら各クラスともに優勝にはあと一歩届かなかったが、特に前夜までの雨でウェット路面が残ったDay1の序盤ではADVAN A050の特徴である対応路面領域の幅広さが遺憾なく発揮される展開であった。

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また、今回の唐津ではTRDラリーチャレンジカップが編入されてこちらのシリーズも開幕戦を迎えている。このシリーズはターマックでもラリータイヤのみの使用が許され、サイズは規制があるもののメーカーについてはワンメイクではなくフリーとなっている。

そして今回、ADVAN A036を装着するトヨタ・86で参戦したのが、全日本選手権やAPRC(FIAアジア・パシフィック・ラリー選手権)でも活躍を見せた牟田周平選手。ベテランの星野元選手とのコンビで快走を見せた。日曜日のみの1Dayで行われたが、6本のSS・合計23.08kmの戦いにおいて、2位に47.9秒という大差をつけての圧勝を飾った。