2015 J-F3 Round 6&7 Report

【全日本F3選手権 第6戦&第7戦/岡山国際】

新しいスペックのコントロールタイヤが投入された岡山ラウンド、
キャシディ選手と山下選手がともにポール・トゥ・ウィン!!

Japanese F3 Round 6&7

開催日 2015年5月23日-24日
開催場所 岡山国際サーキット (岡山県)
天候 第6戦:曇り
第7戦:晴れ
路面 第6戦:ドライ
第7戦:ドライ
決勝周回数 第6戦:18周
第7戦:25周
(1周=3,703m)
参加台数 15台
2015 全日本F3選手権 第6&7戦

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今シーズンの第3大会となる、全日本F3選手権の第6戦と第7戦が岡山国際サーキットで開催された。今回からヨコハマタイヤはタイムの落ち幅をより抑える方向で開発した、従来のタイヤとはコンパウンドと構造が異なる新しいスペックのコントロールタイヤを投入。金曜日の専有走行からタイヤの摩耗状況も良く、ラップタイムも安定しており、またドライバーからのコメントも好評で、決勝レースがより面白くなるものと期待された。

まずは金曜日に曇り空の下、午前と午後に90分間ずつの専有走行が行われ、総合では午後のセッションの最後に1分24秒044をマークした福住仁嶺選手がトップ、2番手にはニック・キャシディ選手、そして3番手には山下健太選手が入った。また、F3-Nクラスでは小河諒選手がトップタイムをマークした。

土曜日の午前11時から公式予選が行われ、2回の予選がそれぞれ10分間ずつ行われた。岡山のコースは1周の距離も短く、コースも抜きにくいだけに、予選ポジションをひとつでも上げようと、ドライバーたちは懸命のタイムアタックを続けていく。コントロールタイヤのスペック変更の効果なのか、昨シーズンよりもラップタイムは2秒以上も向上。第6戦の予選では残り時間が4分を切ったあたりから動きがあり、各ドライバーがタイムを上げ、残り2分のところでキャシディ選手が1分22秒048のタイムでトップに立ち、山下選手もトップと0.127秒差の1分22秒175をマーク。3番手には最後にタイムを上げてきた、高星明誠選手が入った。

続いて行われた第7戦の予選でもトムス勢が速さを見せたが、1分22秒067でトップに立ったキャシディ選手を、2周続けてのタイムアタックで1分22秒049までタイムを詰めた山下選手が逆転し、ポールポジションを獲得した。一方、F3-Nクラスでは第6戦、第7戦ともにポールポジションは小河選手が獲得、第6戦では自己最上位となる2番手にDRAGON選手、3番手に三浦愛選手が入り、第7戦ではこのふたりが順位を入れ替えて2番手に三浦愛選手がつけることとなった。

予選の興奮もおさまりきらないうちに、土曜日の午後には第6戦の決勝レースが曇り空の下、18周で争われた。スタートは波乱に満ちたものとなり、2番手スタートの山下選手がエンジンストールを喫して出遅れ、大きくポジションダウン。また、2周目にはF3-Nクラスで2番手に上がったばかりの三浦愛選手が2コーナーでスピン、DRAGON選手とも接触して、2台はタイヤバリアに当たり、4周に渡るセーフティカーランが実施される。その後、福住選手と山下選手には反則スタートの裁定が下ってドライビングスルーペナルティが課され、ポジションを大きく落とすことに。また、17周目には4番手を走行していた、石川京侍選手がアトウッドコーナーの手前でコースアウト、マシンを止めた。

レースはトップを走るキャシディ選手がリードを広げていく形となった一方で、5番手からポジションを2番手に上げた、ルーカス・オルドネス選手と高星選手による争いは最後まで続いたが、チェッカーまでポジションを変えることはなかった。チームメイト同士の2番手争いを尻目に、キャシディ選手が今シーズン2勝目を挙げ、第6戦終了時でのポイントリーダーに浮上する。

F3-Nクラスでは、小河選手がスタートを決めてトップからレースを開始。強敵ふたりが早々と戦列を去ったこともあり、難なく逃げ切りを果たす。アクシデントの後、2番手を走行した三浦勝選手は、SCラン中の追い越しでドライビングスルーペナルティを科せられるも、ひとつ順位を落とすに留まり、初めての表彰台に立つ。2位はアレックス・ヤン選手で、中国人ドライバーとして初めて全日本F3の表彰台に立つことともなった。

雲は多いものの、太陽が姿を見せる天候となった日曜日。気温はそれほど高くはないものの、過ごしやすい天候の中で第7戦の決勝レースが行われた。スタート前までは曇り空だったが、スタート直前には日差しが強くなり、引き続き好天の下で25周のレースはスタートを切った。

レースをリードしたのは、ポールポジションからのスタートとなった山下選手。5番手スタートのオルドネス選手はまたしてもポジションをひとつ上げ、4番手に。トップ2を占めたトムスの山下選手とキャシディ選手がレースを引っ張っていく形となり、周回が重ねられていった。その後、上位陣はタイムを上げていき、1分24秒台での周回を重ねるように。10周目には5番手を争い合っていた福住選手と接触した、石川選手はその場でマシンを降りることとなった。

その後もトップの山下選手は後方からのプレッシャーに屈することなく逃げ切り、今季3度目となるポール・トゥ・ウィンを飾った。また、2位にはキャシディ選手が入り、トムスコンビが第3戦以来となるワンツーフィニッシュを達成した。そして、高星選手とオルドネス選手が続いて3位と4位をB-MAX勢が占め、5位と6位にもHDDP RACINGの福住選手と高橋選手が入った。

そして、F3-Nクラスでは引き続き好スタートを切った、小河選手がまったく危なげない走りで第3大会は連続ポール・トゥ・ウィンを達成。ポイントリーダーの座をさらに盤石なものにした。2位は三浦愛選手が獲得、3位はDRAGON選手というオーダーになった。

DRIVER VOICE

ニック・キャシディ 選手 [PETRONAS TOM’S F314]

【今回の成績 : 第6戦 優勝 / 第7戦 2位】
チームメンバーが素晴らしいマシンを用意してくれて、とてもいい走りができました。第6戦ではセーフティカーが入りましたが、リスタートの際も完璧なスタートができ、そのままトップでチェッカーを受けることができ、とても良かったです。もてぎ大会ではフラストレーションが残るレースとなってしまいましたが、今回は満足しています。

山下健太 選手 [PETRONAS TOM’S F312]

【今回の成績 : 第6戦 8位 / 第7戦 優勝】
第6戦ではスタートに失敗してしまったので、まずはうまくスタートを切ることに集中しました。それほどいいスタートでもなかったのですが、ポジションをキープすることができたので、レースをうまく走りきることができました。ニックがずっと後ろにいましたが、ミスをしないことを心がけて走りました。

小河 諒 選手 [KeePer TOM’S F306]

【今回の成績 : 第6戦 9位(F3-Nクラス 優勝) / 第7戦 9位(F3-Nクラス 優勝)】
今回は今シーズン初めてパーフェクトな週末が過ごせていると思います。第6戦と第7戦の両方ともポールポジションを獲ることができましたし、レースでも2戦とも勝つことができました。特に第6戦ではとてもいいスタートも切れましたし、後ろは気にせずに走るということに集中しました。これからも一戦、一戦大事に戦っていきたいです。

FEATURED DRIVER

■小河 諒 選手

2大会5戦を終えてF3-Nクラスのランキングトップに立っていた小河諒選手ながら、それだけで満足はしていなかった。13年のスポット参戦から今シーズン、フル参戦の機会を、しかもトムスから与えられてオフのテストでは絶好調。常にライバルを秒単位で引き離していた。それにもかかわらず、いざシリーズが開幕すると、タイム差はごくわずかで、鈴鹿での第2戦では三浦愛選手にポールを奪われてしまう。そればかりか、第1戦では三浦愛選手の優勝を許し、もてぎに舞台を移した第3戦もエンジンストールが原因で、激しく追い上げるも、再び三浦愛選手に優勝をプレゼントしていたからだ。

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「僕の慢心というか、関谷(正徳)さんに『お前は雑念が多過ぎる!』と言われていて、だからこんな結果になってしまったんです」と、第1戦を終えた時に、自分を戒めるかのように語っていた小河選手。

しかし、岡山に舞台を移して行われた第3大会では、2戦ともにポール・トゥ・ウィンを達成。まるで見違えるかのような完璧なレース展開を見せていた。実は、この週末は絶対に負けられない理由もあった。5月24日は、父親の小河等氏がレース中のアクシデントで亡くなった命日だったのだ。それは今から23年前の、92年のこと。しかも、スタンド裏にはトヨタのイベントで、等氏が乗っていたトヨタTS010が展示。まるで見守るために、送り込まれたかのようであった……。

ようやく完璧に期待に応えた小河選手が、これからも完璧なレースを見せ続けられるのか。さらなる成長は、誰もが望むところであるだけに。

TECHNICAL INFORMATION

本大会から投入された新スペックのコントロールタイヤ。F3協会や参加者から安定性のさらなる向上を望む声が多く寄せられたことに対して、ワンメイクタイヤサプライヤーとして要望の沿ったかたちでの仕様変更となった。

この新スペックでは、新品と中古品の性能差を少なく、ラップを重ねていった時のタイムダウンがより小さくなることを目的としており、主にコンパウンドを改良しつつ構造も最適化を施している。