2015 JDC Round 5 Report

【全日本ダートトライアル選手権 第5戦/切谷内】

真夏を思わせる厳しい暑さのなかで戦われた東北ラウンド、
SA2クラス荒井選手が2位、SC2クラス太田選手が3位を獲得!!

JDC Round 5

開催日 2015年7月11日-12日
開催場所 スピードパーク切谷内
(青森県)
天候 晴れ
路面 ハーフウェット(散水) ~ ドライ
参加台数 115台
(ヨコハマタイヤ装着車 29台)
2015 全日本ダートトライアル選手権 第5戦

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全日本ダートトライアル選手権第5戦が、青森県八戸市近郊のサーキットパーク切谷内を舞台に開催された。今年は全8戦が組まれているシリーズは、いよいよ後半戦へと突入した。

2006年に全日本の1戦に組み込まれ、2008年からは継続して全日本イベントを開催するたこのコースは、全国でも屈指の超硬質路面を有するコースとして知られている。直線区間が短く、テクニカルな中低速コーナーが連続するレイアウトが基本なのだが、簡易舗装が施されているコーナーが多いため、路面グリップはかなり高い。そのため、テクニカルレイアウトとは言えどもコーナリングスピードはかなり高く、コーナーをアクセル全開で攻めることができるチャレンジングなコースでもある。また、コース全体に高低差があり、コーナーによってはGが強くかかった状態でシフトチェンジを行わなければならず、シフトミスが誘発されやすいというのもこのコースの特徴だ。

さらに今年は、内周区間の島を大きく回る新コーナーが増設されたのだが、この区間は他の区間よりも砂利が多い軟質な路面となっていた。それに加え、決勝前日の土曜日から気温が30度近くまで一気に上昇。散水の効果がほとんどないほど路面が乾燥し、第2ヒートは路面のアウト側にレコードラインから掃けた大量の砂利とダストが堆積した。レコードラインを少しでも外すとこの砂利につかまり、舞い上がったダストが視界を遮る。アクセルの全開度が高いコースだが、わずかなミスがタイムに大きく影響してしまう難しいコンディションとなった。

開幕戦から第4戦まで、毎戦ウィナーが変わるという混戦模様のSA2クラス。昨年のディフェンディングチャンピオンの荒井信介選手は、ここまで勝ち星はないものの2位2回、3位1回という安定した成績を残し、タイトル争いの一角を担っている。シリーズを優位に戦ううえでも、必勝態勢でこの大会に挑んだ荒井選手だが、最もスピードが乗るギャラリーコーナーの進入で舞い上がったダストに一瞬視界を遮られ、走行ラインを乱してしまう。結果的にはこのミスが響き、トップタイムには0.142秒という僅差で惜しくも2位となった。シリーズポイントも2位に後退したが、トップとの差はわずか5ポイント。2年連続チャンピオンを目指し、残り3戦を全力で戦う。

SC2クラスは、太田雅文選手が第1ヒートのトップタイムをたたき出した。今シーズンは第1戦から第3戦を欠場し、第4戦のタカタラウンドから出場してきた太田選手だが、そのブランクはまったく感じさせず、砂利が掃けた硬い路面をしっかりとトレースする堅実な走りでトップに躍り出た。だが、勝負どころとなった第2ヒートは、下りのコーナーでシフトミスを連発してしまう。ゴール後、「第1ヒートのタイムにも届かないと思った」と語るほど痛恨のミスだったが、それでも第1ヒートのベストタイムを更新。最終的にはふたりのライバルに抜かれ3位となったものの、2012年の第3戦以来となる3位表彰台を獲得した。2009年と2010年には2年連続SC1クラスのチャンピオンを獲得した太田選手。SA2クラスと同様に混戦模様となっているSC2クラスを、さらに面白くさせてくれる存在となりそうだ。

そのほか、第2戦から第4戦まで3連勝を飾ったPN1クラスの宝田ケンシロー選手は、超硬質路面ながらも滑りやすい区間もある特異なコンディションに戸惑い8位となったが、シリーズトップの座はしっかりと堅守。このコースをホームグラウンドとし、昨年の切谷内ラウンドを制したN2クラスの星盛政選手は、「攻めすぎた結果、タイムダウンしてしまった」と言いながらも4位に入賞。第4戦で今季初優勝を飾ったSA1クラスの中島孝恭選手も4位に入賞し、シリーズポイントをしっかりと加算して後半3戦に望みをつなげる結果となった。また、開幕から3連勝を飾ったDクラスの谷田川敏幸選手は、タイヤ選択に悩み4位となったが、シリーズポイントはライバルに並ばれながらもトップの座は譲らなかった。

DRIVER VOICE

荒井信介 選手 [ADVAN クスコ itzz ランサー]

【今回の成績 : SA2クラス 2位】
第2ヒートは走り自体悪くはなかったと思います。このコースは超硬質路面であることは間違いないのですが、部分的に柔らかい路面や砂利が多い路面がある複合路面でもあるんです。そういった路面に対しても超硬質路面用のADVAN A036はしっかりとカバーしてくれますし、走らせ方もうまく組み立てられたのですが、ギャラリコーナーの手前でホコリに視界を奪われ、イン側に入りすぎてしまいました。今シーズンは、そういったほんの少しの差で優勝を逃してしまっているのですが、逆にそういった時でもしっかりと2位を獲得することができているので、残り3戦もまだまだチャンスはあると思います。次戦も優勝を狙い、全力で挑みます。

太田雅文 選手 [ADVAN ゼスト ITO ランサー]

【今回の成績 :SC2クラス 3位】
第1ヒートでトップタイムを奪っているので、3位という結果は自分自身では残念です。これまでのデータから、切谷内はADVAN A036が合っているというのは最初から分かっているので、その信頼感と安心感から第1ヒートはしっかりと走ることができました。路面の良いところを狙って走ったら、タイムが出ていたという感じですね。第2ヒートはシフトミスを連発してしまい、自分自身では第1ヒートのタイムにも届かないと思ったら逆にタイムアップしていたので、本当に悔しいです。やはりミスをすると勝てない。次戦はミスなくしっかりと走り切りたいと思います。

星 盛政 選手 [ADVAN ワコーズ ランサー]

【今回の成績 :N2クラス 4位】
第1ヒートは散水の影響と砂利が掃けていなかったのでADVAN A053を装着しました。第2ヒートは硬い路面が表出していたのでADVAN A036です。このコースは、やはりADVAN A036でいかにタイムを出すかが勝負どころなのですが、第2ヒートは新コーナーをオーバースピードで攻めすぎてしまい、トラクションを横方向に逃がしてしまいました。N2クラスが走る頃にはもう少し路面の砂利が飛んでいるかと思ったのですが、予想以上に砂利が多かったですね。自分自身でも得意としているコースだけに、残念です。

中島孝恭 選手 [ADVAN ルブロス インテグラR]

【今回の成績 :SA1クラス 4位】
路面的には第1ヒートも第2ヒートも超硬質路面用のADVAN A036で間違いないと思います。ただ、自分自身がまだこのタイヤの良いところをうまく引き出せておらず、苦手意識があるんです。前日の公開練習ではトップタイムが出ていただけに、なおさら悔しいですね。第2ヒートは、気持ちが焦ってしまいシフトミスが多かったことも敗因です。大きなミスを3回重ねてしまいました。このコースは、一度失敗するとそれをリカバリーするのが難しいんです。コーナーが連続しているので、ミスを取り返す区間がなかなか見つからない。他のコースももちろんですが、特にここはミスして勝てるほど甘いコースではないのは確かですね。後半戦もしっかりと頑張ります。

谷田川敏幸 選手 [ADVAN トラスト クスコ WRX]

【今回の成績 :Dクラス 4位】
第4戦でも感じたのですが、今回も公開練習の時にADVAN A036とのフィーリングが少し合わないように感じました。そこで決勝の第1ヒートはADVAN A053を装着してみたのですが、すごくフィーリングが良かったんです。自分の走り的にはこっちの方が合っていると感じ、第2ヒートもADVAN A053で走ったのですが、路面的にはやはりADVAN A036が正解だったようです。基本的なセッティングは3連勝した時から大きくは変えていないのですが、フィーリングが合わない原因がクルマなのかドライバーなのか、まだ原因は掴めていません。残り3戦、超硬質路面でADVAN A036で違和感なく走れるように、もう一度しっかりとセッティングを煮詰めようと思います。

FEATURED DRIVER

■SA2クラス :金田一聡 選手

地元・青森県八戸市から参戦している金田一聡選手は、2008年からダートトライアルを始めたという今年で43歳になるドライバーだ。

20代前半の時に三菱ミラージュカップレースに参戦していたという金田一選手は、当時マシン製作やメンテナンスでお世話になっていたトップフィールドの上野陽志夫代表(元ADVANラリーチームドライバー)に、「せっかく地元で全日本を開催できるダートトライアル場ができたのだから、走ってみれば!?」と誘われたのがきっかけで、三菱ランサーでダートトライアルを始めたという。その2008年から今年に至るまで、毎年かかさず切谷内ラウンドにスポット参戦を続けている金田一選手は、最初の頃はテールエンダーだったが、参戦3年目の2010年から表彰まであとわずかの7位となるなど頭角を現し始めた。

「最初の頃は、ターボパワーに驚きました。それまでNAしか乗ったことがなかったんですよ。あとは、ドライビングの違いに戸惑いましたね。サーキットは、できるだけステアリングを切らずに曲がるドライビングでしたけど、ダートトライアルはスパッ、スパッと大胆に切る(笑)。ランサーエボリューションⅨに乗り替えた4年前くらいから、なんとかコントロールできるようになってきました」という金田一選手は、昨年の全日本切谷内ラウンドとJAFカップで5位入賞を果たしている。本人は「お金がかかるのであまり練習はしていないんです」と言うが、地元では「切谷内の主」と言われるほど、サーキットパーク切谷内を走り込んでいる。

「好きなタイヤはADVAN A036です。急に姿勢変化をしたりしないので、安心してコーナーに入っていけるところが良いですね。信頼感のあるタイヤだと思いますよ」という金田一選手は、今年の切谷内ラウンドで6位入賞を果たした。来年も切谷内ラウンドでは注目のドライバーのひとりとなるだろう。

TECHNICAL INFORMATION

超硬質路面で名高いサーキットパーク切谷内だが、今年は浮き砂利のセクションが増えたことと、例年よりも砂利が多かったことが重なり、ADVAN A036とADVAN A053のどちらかで悩む選手も少なくはなかった。しかし、やはりこのコースは超硬質路面の割合が高く、ADVAN A036が最も適しているということはこれまでと変わりはない。

逆にタイヤ選択には間違いはなかったものの、ドライビングミスやホコリなどでタイムダウンしてしまうドライバーも多く、改めて攻略が難しいコースであることを再認識した。勝つためには、冷静な判断とドライビング技術の絶妙なコンビネーションが必要だ。