2015 SUPER GT Round 7 Report

【SUPER GT 第7戦/オートポリス】

B-MAX NDDP GT-Rが第3戦・タイ以来の今季2勝目、
WedsSport ADVAN RC Fが最後にまさかの展開も7戦連続入賞!!

SUPER GT Round 7

開催日 2015年10月31日-11月2日
開催場所 オートポリス
(大分県)
天候 曇り のち 雨
路面 ドライ ~ ウェット
決勝周回数 65周 (1周=4,674m)
参加台数 42台
(ヨコハマタイヤ装着車 24台)
2015 SUPER GT 第7戦

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秋も深まってきたとはいえ、標高800mを超える高地にあるオートポリスは、一足先に冬を迎えたかのような寒さ。そんな厳しい状況の中で、SUPER GTシリーズの第7戦が開催された。前回のスポーツランドSUGO同様、アップダウンに富んだテクニカルコースとして知られ、特に後半のセクター3は上り勾配のきつい、しかも絶えずステアリングを切り続けていなければならない難所。アンダーステアが出やすく、タイヤにも負担を大いに強いることでお馴染みである。

そのオートポリスでは3週間前にテストが実施され、「D’Station ADVAN GT-R」が総合トップタイムを記録。ヨコハマタイヤユーザーは好感触で抱いて乗り込んできたが、テスト時とは温度差が大きく、路面温度が低い中、タイヤがベストパフォーマンスを発揮できるかが、大いに鍵となった。

GT300の予選では、JAF-GT勢が絶好調。中でもヨコハマタイヤユーザーで気を吐いたのが、最強のジェントルマンドライバーと呼ばれる、高橋一穂選手だった。3番手で難なくQ1を突破。「シンティアム・アップル・ロータス」をQ2担当のパートナー、加藤寛規選手に託すこととなる。すると加藤選手は、高橋選手の奮闘に応えるかのように大激走。それまでトップだった「TOYOTA PRIUS apr GT」を1000分の1秒差で下し、第5戦・鈴鹿以来となる今季2回目、そして通算12回目のポールポジションを獲得する。

なお、今回Q2進出を果たしたヨコハマタイヤユーザーは、今季最多となる10台。冒頭でも触れたとおり、JAF-GT勢が上位を占める中、「グッドスマイル初音ミクSLS」を駆る片岡龍也選手がFIA-GT3勢の最上位となる5番手につけ、6番手には連勝狙う「VivaC 86 MC」の土屋武士選手が。前週に行われたスーパー耐久で本来のパートナー、松井孝允選手が怪我を負ってしまったため、第5戦以来の出場となる谷川達也選手が、しっかりと穴を埋めることとなった。

GT500の予選では、公式練習でもトップだった「D’Station ADVAN GT-R」が引き続きQ1でも絶好調。佐々木大樹選手がチェッカー直前に、狙い澄ましたアタックを決めてトップに。これを受けたミハエル・クルム選手が、Q2でチーム初のポールポジションを狙ったが、トップ争いは大接戦となり、結果は4番手。しかし、これは予選における今季最上位。近藤真彦監督は「結果的にはクルムを先に行かせ、大樹にQ2を走らせた方が良かった。でも、うちは決勝に強いから、明日は表彰台の一番高いところに行きたいね」と自信をうかがわせた。

一方、「WedsSport ADVAN RC F」はQ1で関口雄飛選手が4番手に入り、Q2では脇阪寿一選手が6番手にポジションを下げたとはいえ、これもまたチームの今季最上位。2台揃ってのトップ争いも期待できる結果となった。

土曜日までは肌寒いとはいえ、上空には青空が広がっていたが、日曜日になると天候は一変。白い雲がサーキットを覆うようになっていた。しかも、決勝レースの最中に雨が降り出すという不穏な天気予報さえも……。ともあれ、スタート時にはドライコンディションが保たれ、「D’Station ADVAN GT-R」のクルム選手、「WedsSport ADVAN RC F」の関口選手は、それぞれ2列目、3列目のアウト側からレースを開始。クルム選手は4番手をキープし、関口選手は5番手にポジションを上げていく。

当然、ここからのポジションアップが期待されるも、「D’Station ADVAN GT-R」のクルム選手のペースが一向に上がらない。それどころか、10周目を過ぎてから一気に失速し、やがて最後尾まで後退。22周目で緊急ピットイン、給油とタイヤ交換を行って佐々木選手に交代する。佐々木選手はトップより速いタイムを刻んで追い上げるものの、45周目に再び予定外のピットストップが。いったんはレースに復帰したが、53周目にも力なくマシンはピットに戻り、ガレージにおさめられることに。これでレースを終えることになった。

一方、関口選手が5番手をキープして、38周目に脇阪選手に交代した「WedsSport ADVAN RC F」は混乱の中、一時は7番手までポジションを下げたものの、中盤からポツリポツリと降り始めてきた雨が強くなり始めると、難しいコンディションで脇阪選手が本領を発揮。残り5周となる60周目に6番手に浮上、さらに上位を狙っていく。ところが、最終ラップに入った直後の1コーナーで、まさかのコースアウト! 復帰ならず、無情にもチェッカーが振られてしまう。しかしながら、規定周回を満たしていたこともあって、1周遅れながら9位で2ポイントを獲得。これにより、GT500でただ一台続けていた、全戦ポイントゲットを継続。最終戦での飛躍を期待させる走りを見せてくれた。

GT300ではポールシッターで「シンティアム・アップル・ロータス」を駆る加藤選手が、絶妙のスタートダッシュを決めてトップで1コーナーに進入。オープニングの1周だけで3秒のリードを築く。最も恐れていたライバル、「TOYOTA PRIUS apr GT」がピットスタートを余儀なくされていたことが、加藤選手から肩の力を抜かせていたのは間違いなく、そのまま一気に逃げていく。

その後方では6台による激しい2番手争いが繰り広げられており、その中には予選8番手だった「B-MAX NDDP GT-R」の星野一樹選手や、予選7番手だった「Audi R8 LMS ultra」の藤井誠暢選手、さらに予選13番手だった「RUNUP Group & DOES GT-R」の吉田広樹選手、そして「グッドスマイル初音ミクSLS」の片岡龍也選手も。それぞれ予選より順位を上げていたが、さらに状況を好転させるべく、この中で最も早くアクションを起こしたのが星野選手だった。先行する車両3台よりもペースでは上回っていたものの、逆転の機会を与えられなかったため、20周目に高星選手とバトンタッチ。これが功を奏して、たった一台を残し、ライバルがドライバー交代を行うと2番手に。その一台こそ、トップを走る「シンティアム・アップル・ロータス」だった。

42周目、ようやく加藤選手がピットに戻って、「シンティアム・アップル・ロータス」のステアリングを高橋選手に託すも、「B-MAX NDDP GT-R」の高星選手はすぐ背後に。そして、次の周のストレートで両者はポジションを入れ替える。トップに立った高星選手は逃げ続ける一方、高橋選手もしっかりポジションをキープ。ヨコハマタイヤユーザーによるワンツーフィニッシュも決して夢ではないと思われた、その矢先の50周目に「シンティアム・アップル・ロータス」はデブリを踏んで左リアのタイヤがパンク。無念のリタイアを喫してしまう。

これにより2番手以下がひとつずつ順位を上げ、「Studie BMW Z4」のヨルグ・ミューラー選手が3番手に。さらに終盤になって雨が勢いを増すと、圧倒的にライバルをペースで上回るようになったのが「ケーズフロンティアDirection 458」の峰尾恭輔選手。15番手スタートからじっくり追い上げ、50周目の8番手から、あれよあれよという間に順位を上げて、最終ラップには「Audi R8 LMS ultra」のリチャード・ライアン選手をも抜いて4番手に。あと一歩のところで表彰台には届かなかったが、ピットで迎えたチームメイトの横溝直輝選手、そしてチームスタッフの笑顔がなんとも印象的だった。

そして、「B-MAX NDDP GT-R」は難なく逃げ切って、第3戦・タイに続く今季2回目の表彰台の中央に星野選手と高星選手が立ち、その脇には予選12番手だった「Studie BMW Z4」のミューラー選手と荒聖治選手も並んでいた。

DRIVER VOICE

脇阪寿一 選手 [WedsSport ADVAN RC F]

【今回の成績 : GT500クラス 9位】
最終ラップのスピンは、後ろの本山哲選手のプレッシャーに負けた僕のミスです。マシンは好調で、もっと上に行けるつもりだっただけに残念です。まだまだトップの連中は速いですが、マシンも作戦もじっくり組み立て直して、最終戦でいい結果を出せるよう頑張りたいです。

関口雄飛 選手 [WedsSport ADVAN RC F]

【今回の成績 : GT500クラス 9位】
一度ポジションを下げてしまいましたが、挽回できました。雨がぱらつき出してからはタイヤのパフォーマンスも良くて、前に追いつくことができたし、いいレースができたと思います。最後は残念な結果になりましたが、ポイントも獲れて開幕戦からすべてポイントゲット。最終戦も頑張ります。

佐々木大樹 選手 [D’station ADVAN GT-R]

【今回の成績 : GT500クラス 15位】
クルムさんが走っている時に、リヤダンパーが壊れたようです。僕に代わってから速さがあり、チャンスはあると思ったのですが、今度はエンジンが吹けなくなって、それで終わってしまいました。勝てるビッグチャンスを逃した感じで、悔しいですね。練習走行の時も実はフロントダンパーが壊れて、今回はトラブル続きでもありました。いったいマシンに何が起きたのか徹底的に調べ、気を引き締めて最終戦に臨みたい。最後はウエイトハンデがないので、絶対に勝ちたいです。

星野一樹 選手 [B-MAX NDDP GT-R]

【今回の成績 : GT300クラス 優勝】
勝つことができて、とにかく嬉しい気分です、タイ戦の100倍ぐらい嬉しい(笑)。スタートしてからは、自分のベースがいいのは分かっていたので、何台かパスできたものの、2 番手争いの中では抜きあぐねていました。それでチームが判断して、早めにいれようと。後半はミツ(高星選手)の長いスティントになってしまいましたが、絶対にやってくれると信じて。タイヤも作戦も展開も、もちろん僕たちもきちんと仕事をすることができましたし、すべて噛み合って優勝できました。最後のもてぎでも勝って、来年に向けていい形で締めくくりたいです。

高星明誠 選手 [B-MAX NDDP GT-R]

【今回の成績 : GT300クラス 優勝】
タイ戦で優勝してから、Q1も通れないようなレースが続いていて、本当に悔しい思いをしました。ただ、可能性がある限り諦めないと、僕たちもチームも思って、ここまでやってきましたので、2勝目を挙げられたことを本当に嬉しく思っています。僕が乗り込む時に「長いな」と思いましたが、チームの判断に間違いはありませんでしたし、雨が降ってきて不安もありました。でも、ヨコハマさんが用意してくれたタイヤ、チームが用意してくれたクルマが良かったから、この結果を出すこともできました。次のもてぎは集大成として、また優勝を目指します。

荒 聖治 選手 [Studie BMW Z4]

【今回の成績 : GT300クラス 3位】
予選の一発は厳しくて、トップと比べると約2秒も離れていて、ベストラップだけだとJAF-GT に歯が立たない状況だったんですが、クルマ、タイヤ、それに僕らドライバーも安定して走らせる方が今回は得意だったので……。まぁ、分からなかったですけどね、どこまで勝負できるか。あまりに速さに差があったから。その中で、オートポリスではいかに安定して走ることが大切か、改めて感じさせられました。あと後半のミューラー選手、雨にスリックっていうコンディションにすごく強いので、いっぱい抜いてくれて、すごく感謝しています。

峰尾恭輔 選手 [ケーズフロンティアDirection 458]

【今回の成績 : GT300クラス 4位】
タイヤはかなり良くて、柔らかめのコンパウンドをチョイスしていたんですけど、コンディションにもフェラーリにも合っていて、雨が降ってきた時、まわりよりワンランク、グリップレベルが高いかな、という感じでした。それでちょっと左フロントだけ守りながらペースを合わせていた感じなのですが、逆にそれが良くて後半みんな落ちてきた時に抜けたのかな、と思います。とりあえず上位でフィニッシュできたので、次は表彰台を目指します。

CLOSE UP

■予選での激走が光った「シンティアム・アップル・ロータス」の高橋一穂選手!!

今回のレースにおけるトピックスのひとつが、やはり「シンティアム・アップル・ロータス」のGT300ポールポジション獲得ではないだろうか。実は、その背景にはドラマがあった。さかのぼること3週間前、オートポリスではタイヤテストが行われ、高橋一穂選手がクラッシュしてしまったのだ。このクルマがポールポジションを獲得するのは、第5戦以来2回目ではあるが、その時Q1を担当したのは、かつてのチームメイトでもあり、現在はGT アジアに軸を移し、トップ争いも演じている濱口弘選手。したがって、加藤寛規選手のポール獲得には貢献したわけではない。その上、テストのクラッシュである。今回のレースを前に、どんな心境であったか、想像に余りある。

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しかし、3週間で完璧にチームが修復してくれたからには、恩返しをしなくてはならない、そう高橋選手は考えていた。それにはQ1突破がマストであると。そして、期待に応えた。それも周囲の期待以上の3番手という結果で!!

加藤選手はこう語っている。「今回は事前のテストをしていたことが、役に立ちました。その結果、持ち込みセットの状態で速く走れましたから。それにしても高橋選手、3番手ととても速かったですね!」と。

決勝では加藤選手が独走し、高橋選手に代わってから2番手に落ちたとはいえ、何事もなければ、予選後に「あんまり欲かかずに走るつもり」と語っていたとおり、きっとポジションを最後まで保っていたことだろう。それだけにリタイアが惜しまれる。

ENGINEER VOICE

藤代秀一 [ヨコハマ・モータースポーツ・インターナショナル SUPER GT開発統括]

GT500に関して言うと、事前のテストで調子が良くて、我々も勝つつもりで来ていたんですが、コンディションの変化というか、今回の路面温度の低い状態に、ちょっと合わせ切れなかったかなと思います。予選のように晴れてくれれば、全然展開は違ったと思うのですが……。「D’Station ADVAN GT-R」にはマシンにトラブルがあって、ペースを上げられないというのがありましたし、エンジンが吹けないといったトラブルがあって、残念な結果になってしまいました。

「WedsSportADVAN RC F」も、スタート直後に関口選手がフラットスポットを作ってしまい、振動は出たというのですが、そのまま走っていて。ただ、後でタイヤを見たら、「これでよく走ったな」って感じで(苦笑)。そういうこともあって上位についていく事が難しい状況となっていました。また脇阪選手に交代する少し前から小雨となり、脇阪選手は難しいコンディションの中の走行となってしまったのですが、最終ラップにコースアウトしてしまい、結果9位になってしまいました。それでも、連続ポイント獲得は継続できたので良かったと思います。

最終戦のもてぎでは、今回の雪辱を果たせるように、頑張りたいと思います。

GT300に関しては「B-MAX NDDP GT-R」が巧みな戦略で2勝目を挙げてくれました。一方「シンティアム・アップル・ロータス」は、ポールも獲り、レースでも他を寄せ付けないペースで走ってくれたので、パンクでのリタイアが残念です。パンクの原因は、破損パーツの破片を拾ってしまったものと思われます。また、「Studie BMW Z4」は非常にコンスタントにラップを重ね、特に終盤の濡れた難しいコンディションでの速さが光り、表彰台にまで来てくれました。

何はともあれ、最終戦ではGT500同様、GT300も優勝で飾れるよう、できれば表彰台独占狙いで、頑張りたいと思っています。