2015 SUPER GT Round 5 Report

【SUPER GT 第5戦/鈴鹿】

WedsSport ADVAN RC Fが表彰台まであと一歩の4位入賞、
GT300ではStudie BMW Z4が激戦の末に、2位でゴール!!

SUPER GT Round 5

開催日 2015年8月29日-30日
開催場所 鈴鹿サーキット
(三重県)
天候 曇り 一時 雨
路面 ウェット〜ドライ〜セミウェット
決勝周回数 173周 (時間規定により、163周で終了)
(1周=5,807m)
参加台数 43台
(ヨコハマタイヤ装着車 25台)
2015 SUPER GT 第5戦

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全8戦で争われるSUPER GTは、ここから後半戦に突入。シリーズ第5戦は伝統の一戦、「インターナショナル鈴鹿1000km」として開催された。例年、8月の終わりに行われることもあり、残暑厳しき中での戦いになるのだが、このウィークエンドは一度も青空が見えることなく、時おり雨に見舞われもして、まるで「鈴鹿1000km」らしからぬコンディションとなっていた。

走り始めとなる土曜日の公式練習は、前夜からの雨こそやんだものの、ところどころ濡れた部分を残す難しいコンディション。どのチームも満足なデータを得られぬまま、ドライに転じた予選に挑むこととなった。

GT300ではマザーシャシー勢が大健闘。5台すべてがQ1を突破する。特にCドライバーとして起用された濱口弘選手の奮闘に応えたのが、「シンティアム・アップル・ロータス」の加藤寛規選手で、1分58秒248をマークしてポールポジションを獲得する。「公式練習は3人での参戦ということで、走る機会が少なくなったため、セッティングを詰めていくのが難しかったんですが、チームがうまくアジャストしてくれて、ヨコハマタイヤのスタッフもロータス用のタイヤをうまく開発してくれたので、こうしてポールを獲ることができました。本当に感謝しています」と加藤選手。今回はヨコハマタイヤユーザーは8台がQ2に進出し、他にも「Studie BMW Z4」の荒聖治選手が3番手に、そして「マネパ ランボルギーニGT3」の織戸学選手が5番手につけていた。

一方、GT500のQ1は「WedsSport ADVAN RC F」の関口雄飛選手が力走を見せたが、早めに開始したアタックが災いしてクリアラップが取れなかったばかりか、続けてのアタックも赤旗で出ばなをくじかれてしまい、あと一歩届かず10番手に。「D’station ADVAN GT-R」は佐々木大樹選手が挑んだが、前回の優勝で背負ったウエイトハンデが影響して、思うようにタイムが上げられず。13番手に留まるも、事前にチームは方向を転換。Q1を、決勝セットを試す場に。今回は決勝レース前にフリー走行が設けられず、わずか20分間のウォームアップ走行があるだけとあって、「セッティングは確認できたので、決勝は行けると思います」と佐々木選手。

決勝レースはいったんやんでいた雨が、再び降り始める状況でスタートが切られた。その直前に行われたウォームアップ走行では、なんと「D’station ADVAN GT-R」が1周も走行できず。夏場のレースに最大のドライバーエイドとなる、エアコンが故障してしまったのだ。メカニックが必死に修復を試みるが、グリッド整列までに間に合わず、エアコンなしで挑む羽目となってしまう。そればかりか、スタートしてから徐々に強さを増す雨が、ヨコハマタイヤユーザーたちの行く手を阻む。「WedsSport ADVAN RC F」は関口選手が、そして「D’station ADVAN GT-R」は佐々木選手がスタートを担当、それぞれジャンプアップを目指したものの、思うような走りができず、逆に順位を落とすこととなってしまう。

雨がやんだ状況を見て、佐々木選手は予定より早めにピットストップを敢行して、ドライタイヤに交換するも、その後もなかなかペースアップが許されず。147周目にミハエル・クルム選手が最終スティントに挑んだものの、ピットロード出口で左リアホイールが脱落するトラブルが発生。ここでレースを終えることとなってしまう。

同様に、一時か13番手にまでポジションを落とした「WedsSport ADVAN RC F」は、関口選手が我慢の走りを続け、脇阪寿一選手に交代すると、路面が乾き始める中、激しい追撃が始まった。レースのほぼ折り返しで8番手にまで浮上し、その後も関口選手、脇阪選手ともに手綱を緩めることなく、160周目には4番手へ。関口選手が3番手の車両に迫ったところで規定時間に達し、163周目にチェッカーフラッグが振られる。あと少しのところで表彰台を逃す結果となったものの、今季最上位となる4位で、5戦連続のポイント獲得に成功。詰めかけたファンからも、大きな声援が飛んだほど強烈な追い上げを見せていた。

一方、GT300ではスタートと同時に「シンティアム・アップル・ロータス」の加藤選手が、予選同様の速さを見せてトップを快走。得意のロングスティントで35 周目に、濱口選手にバトンを託す。ドライバー交代の違いもあって、濱口選手は3番手に退くが、トップも視界におさまっており、まだまだ逆襲は十分可能だと思われた。しかし、2時間目を過ぎて間もなくSCランが実施され、ピットロードがオープンになる前に戻ってきてしまう。これがペナルティの対象となり、90秒ストップを科せられて勝負権を失うことに。

その後、78周目からトップを走行したのは、「マネパ ランボルギーニGT3」の織戸選手。平峰一貴選手と交代した94周目までポジションをキープしたものの、路面状態の向上とともに、ストレートパフォーマンスの不足から次第に順位を落としてしまう。

代わってレースを盛り上げてくれたのが「Studie BMW Z4」だった。第2スティントを担当したヨルグ・ミューラー選手がピットを離れる際にホワイトラインをカット、ドライビングスルーペナルティを科せられていたものの、周回を重ねるごと荒選手ともども順位を挽回。中盤までに3番手へと浮上する。そして、荒選手が112周に2番手に。それから10周後の最後のピットストップは、3番手の車両と同時タイミング。給油時間の違いにより、先行を許してしまうものの、すぐにミューラー選手はスプーンで逆転を果たし、今度はトップの「GAINER TANAX GT-R」を追いかけることとなった。

チェッカーまであとわずかとなった段階で、2台はテール・トゥ・ノーズ状態となるものの、トップは最後までミスを冒さず。わずか1秒の差で涙を飲んだが、「Studie BMW Z4」は今季最上位となる2位を獲得。また、「マネパ ランボルギーニGT3」が4位で、リチャード・ライアン選手と藤井誠暢選手の駆る、「Audi R8 LMS ultra」が5位でのフィニッシュを果たしている。

DRIVER VOICE

脇阪寿一 選手 [WedsSport ADVAN RC F]

【今回の成績 : GT500クラス 4位】
走るたびにバランスが良くなってきて、決勝では戦える感触もあったのですが、雨に見舞われてしまって……。最初のウェットタイヤがコンディションに合いませんでした。1回ピットインを減らす作戦でいったので、それを守って走り続け、表彰台にはあと一歩のところで届きませんでしたが、目いっぱいやった結果です。僕も攻める走りができたし、次のレースがすごく楽しみです。

関口雄飛 選手 [WedsSport ADVAN RC F]

【今回の成績 : GT500クラス 4位】
(3位の車両に)追いついたけれど、少し足りませんでした。燃費が良かったので、途中から5スティントに切り替えることもできたんですが、もう少し早く路面が乾いていれば3位だったと思うと悔しいですね。でも、ノーミス、ノートラブルで走りきれたのは大きな成果ですし、きっと次につながると思います。

近藤真彦 監督 [D’station ADVAN GT-R]

【今回の成績 : GT500クラス 13位】
いろいろトラブルに見舞われ、最後までドライバーたちに思いっきり走らせてあげられなかったばかりか、リタイアに終わったのが残念です。今は速いウェットタイヤを狙って開発していますが、まだまだ開発途中。今回はチョイスしたタイヤが、路面状況に合いませんでした。ドライタイヤはすごく良くなったので、今後はウェットタイヤをもっと良くしていきたいですね。

ヨルグ・ミューラー 選手 [Studie BMW Z4]

【今回の成績 : GT300クラス 2位】
最後はすごくいいショーをお見せできたと思う。でも、ホワイトラインをカットしてしまうという、僕のミスでペナルティを受けてしまってね。それがなければ優勝できたと思う。でも、テレビにはよく映っていたから、BMWはすごく喜んでいたんじゃないかな? その意味ではいいレースだったと思います。最後の10周はトップも苦しそうだったから、僕は近づいていけたんだけど、彼らはミスなく走っていたからね、勝つべきチームだったと思うから、本当におめでとうと伝えたいね。

荒 聖治 選手 [Studie BMW Z4]

【今回の成績 : GT300クラス 2位】
悔しいですね、また勝てませんでした。ペナルティはレースだから仕方ないけど、それがなければ勝てるだけのポテンシャルはありました。ウェットタイヤが新パターンになってから初めて履いたものですから、ちょっと確信のないまま走らざるを得なかったんですが、以前のよりも進化していて、その進化にも助けられました。残り3戦、まだまだ優勝を目指して頑張ります。

織戸 学 選手 [マネパ ランボルギーニGT3]

【今回の成績 : GT300クラス 4位】
今回の結果には十分満足しています。今回からエンジンがちょっと良くなったこともあって、もはや古いクルマの状況としては、ベストレースにはなったんじゃないでしょうか。タイヤもまったく問題なかったです。ただ、ウェットセットに振ってしまったので、ちょっとドライコンディションがきつかったかな。でも、一時はトップを走れたので満足です。

藤井誠暢 選手 [Audi R8 LMS ultra]

【今回の成績 : GT300クラス 5位】
新しいウェットタイヤが、水の多いコンディションも少ないコンディションでも、僕らのクルマにはマッチして、リチャード(・ライアン)が最初、いいペースで走ってくれました。その後、路面が乾いてしまったのは僕らにとって、あまりプラス要素ではないのですが、ミスなくレースをコントロールできたので、まわりのミスやペナルティにも助けられ、5位という結果を得ることができました。そのまま雨が降り続いてくれたなら……とも思ったんですけど、それは仕方ないですね。

CLOSE UP

■GT500で初優勝を飾っても浮かれることなし、佐々木大樹選手がもう1勝を誓う!!

前回の富士でGT500の初優勝を飾り、一躍時の人となった「D’station ADVAN GT-R」を駆る佐々木大樹選手。終盤にあれよ、あれよという間にポジションを上げ、やがてトップに浮上するという、ドラマチックな展開に魅了された方も決して少なくないことだろう。ゴールして涙し、マシンを降り立ってミハエル・クルム選手の姿を見て、再び涙した佐々木選手。

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しかし、『今の心境は?』と尋ねると、いたってクール。「もう次のレースに切り替わっていますので」と。また、トップに立った時の心境を聞いても、「レース中に関しては無我夢中で走っていて、これはチャンスだと思った瞬間に集中して、プッシュして優勝できて良かったです」と、これまた。だが、それは優勝という結果に浮かれてはいけない、絶えず志は高くという意識によるものなのだろう。

だからこそ、今後の目標を「しっかり高得点を獲り続けていって、1勝と言わず、もう1勝したいですね。それによって、最終戦までチャンピオンの可能性を残せれば」と語っていた佐々木選手。残念ながら、第5戦はリタイアという無念の結果に終わってしまったが、一時はファステストラップを記録するなど、積極果敢な姿勢も見せていた。その宣言どおり、もう1勝を挙げてくれることを期待したい。

ENGINEER VOICE

藤代秀一 [ヨコハマ・モータースポーツ・インターナショナル SUPER GT開発統括]

昨年の鈴鹿1000kmに比べれば、良い終わり方ができたと思いますが、ちょっと複雑な心境です。GT500はウェットタイヤのパフォーマンスが、もう少し高ければ「Weds Sport ADVAN RC F」は確実に表彰台に上がっていたと思うので……。

でも脇阪選手も関口選手も非常に速いコンスタントラップを刻んでくれて、最後には前回の佐々木選手のように怒涛の追い上げを見せてくれたので、ファンの皆様を多いに盛り上げる事ができたと思います。本来、鈴鹿は決して我々が得意としているサーキットはないのですが、「ここで速ければ、どこでも速い」と、クルマもタイヤも開発の重点を置くサーキットでドライタイヤの速さを見せられたのは良かったと思います。

こんなにレースウィーク、過ごしやすいコンディションになるとは想定していなくて、路面温度は高めの想定でしたが、鈴鹿の場合はタイヤへの入力が大きいので、路面温度は下がってしまいましたが、ゴム自体はうまく発動する事ができました。

ただ、ウェットタイヤが……。特にGT300は新しいウェットタイヤを前回の富士から準備していたのですが、その時は使う機会がなく、今回初めて使ったのですが、課題もいろいろ見つかりました。クルマによって合う、合わないというのが出ていたので、ゴムと構造のマッチングを吟味して、もっとみんなが使えるようなチューニングは必要だと感じました。

GT500に関しても、課題を確実に解消していって、もっとコンペティティブにしなければ、と思っています。もちろんドライタイヤも前回優勝からの勢いを維持して、少なくてももう一回は表彰台を目指してやっていくつもりです。GT300に関しても、何とか巻き返せるよう、残り3戦、気合いを入れていきたいと思っています。