2015 SUPER GT Round 3 Report

【SUPER GT 第3戦/チャーン(タイ)】

B-MAX NDDP GT-Rが今季初優勝でタイ大会2年連続制覇、
WedsSport ADVAN RC Fが開幕から3大会連続で入賞!!

SUPER GT Round 3

開催日 2015年6月20日-21日
開催場所 チャーン・インターナショナル・サーキット (タイ)
天候 晴れ
路面 ドライ
決勝周回数 66周
(1周=4,554m)
参加台数 38台
(ヨコハマタイヤ装着車 19台)
2015 SUPER GT 第3戦

[Photo]

[Photo]

[Photo]

[Photo]

[Photo]

[Photo]

[Photo]

[Photo]

年に一度、海を超えて海外でレースを行うSUPER GT、その新たな舞台としてタイ、ブリラムに新設されたチャーンインターナショナルサーキットが選ばれて、今年が2回目。昨年は10月に行われ、当初は今年も同時期の予定だったものの、急きょスケジュールが改められたのは、ご存知のとおり。シリーズ第3戦として、6月20〜21日に「BURIRAM SUPER GT 300km RACE」が開催され、激しい暑さをモノともしない、熱い戦いが繰り広げられた。

予選では、GT300のQ1からヨコハマタイヤユーザーがトップの好発進。「シンティアム・アップル・ロータス」の加藤寛規選手が1分34秒456をマークする。続くQ2では終了間際に「VivaC 86 MC」の土屋武士選手が1分33秒915を記録して今季初、そして自身にとっては16年ぶりのポールポジションを獲得する。これに続いたのは「B-MAX NDDP GT-R」の高星明誠選手で、1分33秒988をマーク。Q2に挑んだ13台中、8台をヨコハマタイヤユーザーが占めることとなった。

一方、GT500では「WedsSport ADVAN RC F」のQ1担当、関口雄飛選手が1分25秒576をマークし、2番手でQ2進出に成功する。若手の奮起に応えようと、脇阪寿一選手は走りで、チームもセッティングで攻めるも、これが仇に。車高をギリギリまで下げたことで、ボトムと路面が接触し、コントロールを失ってしまったのだ。タイヤを傷めてしまったこともあり、以降のアタックを断念。それでも決勝レースには8番手から挑むこととなった。また、「D’station ADVAN GT-R」はルーカス・オルドネス選手がQ1を担当、先頭で走り出すなど積極的な姿勢を見せたものの、肩に力が入り過ぎてしまったのか、1分26秒400を記すに留まり、14番手で佐々木大樹選手にバトンを渡すことはできなかった。

決勝当日は高い降水確率が告げられており、それもいったん降り出せばスコール。コンディションを一変させると予想されていた。しかし、タイムスケジュールが進んでいっても、上空には雲は浮かびこそしていたが、降り出しそうな気配を一切見せなかった。グランドスタンドを埋め尽くした地元ファンの熱気が、どうやら雨雲を吹き飛ばしてしまったようだ。

脇阪選手がスタートを担当した「WedsSport ADVAN RC F」は、フォーメーションラップでタイヤを温め切れず、スタートでひとつ順位を落としたばかりか、3周目には12番手まで後退してしまう。その上、順位を挽回していく最中の5周目の黄旗提示区間で後続車両に接触され、スピンを喫することに。ダメージはなかったものの、復帰に要したロスが最後まで影響を及ぼしてしまう。

しかし、そこからのペースは決して悪くなく、30周目に交代した関口選手が攻めの走りを見せる。交代直後の12番手から着実に前を行く車両を捕らえ続け、入賞圏となる10番手に浮上したのが44周目で、それから10周後には9番手に。そのまま順位を保ってチェッカーを受け、開幕から3戦連続の入賞を果たして、またも貴重なポイントを獲得することとなった。

「D’station ADVAN GT-R」は、オルドネス選手の追い上げに期待がかかっていた。14番手からのスタートながら、早朝のフリー走行では佐々木選手が2番手タイムをマーク。昨年も2位に入って、よほど相性のいいサーキットであるのだろう、交代した後の激走が容易に想像できたからだ。まずはポジションキープからレースを開始したオルドネス選手だったが、3周目には逆にひとつ順位を落としてしまう。この頃からすでにエンジンは不調を来しており、パワーが路面に伝わらなくなっていた。そして、4周目にはそのエンジンが完全に音を上げたこともあり、ピットでのリタイアをチームともども決意することとなった。

一方、GT300では「B-MAX NDDP GT-R」の星野一樹選手が、スタート直後から気を吐くこととなった。予選こそ2番手だったものの、鋭いダッシュを見せてポールシッターで「VivaC 86 MC」を駆る土屋選手に食らいついて離れず。そればかりかターン4でトップに立つや否や、そのまま引き離しにかかったからだ。土屋選手は2周目に「GAINER TANAX GT-R」の先行を許すも、3番手はしっかりキープして周回を重ねていく。

29周目、トップの「B-MAX NDDP GT-R」は、実に13秒ものリードを築いてピットイン。続いていた「GAINER TANAX GT-R」も同じ周にピットに入ったが、素早い作業で高星明誠選手をコースに送り出し、さらにリードを広げることにも成功する。大量の貯金に守られた高星選手は後続車両との間隔を意識しつつ、タイヤをいたわりつつコンスタントに周回を重ねていく。高星選手は難なく逃げ切りを果たし、自身にとってはスーパーGTの初優勝を、そしてチームと星野選手にとっては昨年の、このタイラウンド以来の勝利を挙げることとなった。

3位でフィニッシュしたのは、「Studie BMW Z4」のヨルグ・ミューラー選手と荒聖治選手だった。予選6番手からレースを開始し、順位を落としこそしたが、荒選手が4番手を争う集団の中で周回を重ねていく。そして、24周目にミューラー選手はタイヤを交換せずにコースイン。それから2周後に片岡龍也選手から谷口信輝選手に代わった「グッドスマイル初音ミクSLS」もタイヤ無交換策を採るも、ミューラー選手はひとつ前のポジションにつけることになる。タイヤの厳しさを感じさせない走りで、ミューラー選手は「VivaC 86 MC」の松井孝允選手に迫り、48周目には3番手に浮上した。

惜しまれるのは、「VivaC 86 MC」に燃料系トラブルが発生し、ゴールまであと5周というところで再給油を余儀なくされたこと。それでも7位でゴールできたのは不幸中の幸いか。また「グッドスマイル初音ミクSLS」は6番手走行中の40周目に左リアのタイヤにトラブルが発生。何とかピットに戻って交換はできたものの、この時のロスが響いて13位と、ポイント獲得ならず。その一方で、黒澤治樹選手と蒲生尚弥選手の駆る「LEON SLS」が5位でゴールし、2戦連続の入賞を果たすこととなった。

DRIVER VOICE

脇阪寿一 選手 [WedsSport ADVAN RC F]

【今回の成績 : GT500クラス 9位】
土曜日の予選から決勝にかけて、チームに迷惑をかけてしまいました。今回は持ち込みのセットが合わず、予選ではスピンしてしまいましたし、決勝でも序盤に追突されて順位を落とし、ペースを上げられなかったという状況でした。SUPER GTはふたりで戦うレースなので、揃ってパフォーマンスを上げられるよう、これからも頑張りたいと思います。

関口雄飛 選手 [WedsSport ADVAN RC F]

【今回の成績 : GT500クラス 9位】
厳しいレースにはなりましたが、今回のタイヤはとてもいい状況だったと思います。予選でのパフォーマンスも良かったですし、決勝でも最後までタイヤは性能を維持しては知ることができました。いいペースで走れたのですが、展開に恵まれない部分が会ったので、それが残念です。結果は9位でしたが、内容としては手応えを感じるレースでした。

ルーカス・オルドネス 選手 [D’station ADVAN GT-R]

【今回の成績 : GT500クラス リタイア】
これまではちょっと残念なレースが続いていましたが、タイでの第3戦ではマシンはとても速く、力強く戦うことができると思っていたのですが、トラブルで残念な結果になってしまいました。私がGT500を戦うのは、今回で最後になりましたが、非常に多くのことを学ばせてくれたチームと、横浜ゴムには感謝したいと思います。

星野一樹 選手 [B-MAX NDDP GT-R]

【今回の成績 : GT300クラス 優勝】
タイで2連勝できて良かったのと、やっと勝ててホッとしています。今年のGT-Rは強いぞ、と言っていながら、開幕戦がダメで、前回も2位で何やっているんだと。絶対にタイでは勝とうとミツ(高星選手)と話していたので、1周目のうちに25号車(VivaC 86 MC)を抜いて、その後はギャップを作って楽をさせてあげるつもりでした。毎周、プッシュしつつ……、それでもタイヤには不安がなかったので、セーブして走ることもできました。ミツの走りも安心して見ていられて、ようやく優勝できる運が向いてきたな、と思いました。

高星明誠 選手 [B-MAX NDDP GT-R]

【今回の成績 : GT300クラス 優勝】
一樹さんが10数秒も差を作って僕に代わってくれたばかりか、ピットストップも素早くて、差をさらに広げることもできました。僕は後ろとの間隔を見ながらレースできたので、一樹さんやチームにものすごく感謝したいです。タイヤもいたわることができましたし、前回のようなことが起こらないよう、気をつけて走っていました。優勝を実感したのは、チェッカーを受けて、一樹さんがピットで「よっしゃ〜!」ってやってくれたのを見た時。それまではクラッシュしないよう、ぶつけないよう、そういうのを強く意識して走っていました。

荒 聖治 選手 [Studie BMW Z4]

【今回の成績 : GT300クラス 3位】
タイヤはすごく良かったです。無交換という作戦を採っても、コンスタントに走れましたから。スタートからの僕のスティントは、まわりに囲まれてサイクルに入っちゃったので、タイヤをしっかり温存して、ほとんど落ちていない状態でヨルグ選手に渡すことにしました。ヨルグ選手のペースはすごく良かったし、作戦成功という感じでしたね。みんなができないほど路面温度の高い中で無交換作戦を採って、ようやく表彰台に立つことができましたので、次の富士でもしっかり別の作戦を立てつつ、あまり我慢せずに好結果を得たいです(笑)。

黒澤治樹 選手 [LEON SLS]

【今回の成績 : GT300クラス 5位】
今回は(蒲生)尚弥がすごく調子良かったし、セッティングも最近は決まって来て、今回はほとんどいじらなくてもいいぐらいでした。ヨコハマのタイヤとも合ってきましたし、いい感じで来ています。ただ、もう少しレースで作戦面を考えなくては……というのはありました。そのへんをうまく決めることができれば、次の富士では勝負できるんじゃないでしょうか。

CLOSE UP

■名門つちやエンジニアリングが復活、まずは3戦目でポールポジションを獲得!!

SUPER GTに限らず、ゼッケン25というと誰もが思い浮かべるのが、「つちやエンジニアリング」のクルマではないだろうか? 古くはマイナーツーリングの時代から、グループAやスーパーツーリングによる全日本ツーリングカー選手権を経て、モータースポーツには欠かせぬ存在だった。もちろん、近年も土屋武士選手がゼッケン25をつけ、ドライバーとしてエントラントとして活躍し続けていたが、それは武士選手の運営する「チームサムライ」としての活動。父親の土屋春雄氏がサポートはしていたとはいえ……。

[Photo]

しかし、「つちやエンジニアリング」が今年になって活動再開。きっかけはマザーシャシーにあった。モノコックとエンジンは共通だが、あとはほとんど自由という素材は、ものづくりを得意とする「つちやエンジニアリング」にはうってつけだったからである。「出来合いのものは、つまらない」と、活動を休止していた春雄氏の考えを覆させたわけだ。

武士選手と松井孝允選手の駆る「VivaC 86 MC」は開幕戦では6位と、まずまずの発進となるも、第2戦ではシフト系、そしてサスペンションのトラブルを抱え、無念のリタイア。まさに産みの苦しみを味わった格好ながら、第3戦ではポールポジションを獲得する。「セッティングを思いっきり変えてきました、本当にありとあらゆる部分を、空力もサスペンションも。キャラクターをがらりと変えたんで、どんなふうになったか、これでいいのか確かめながら。アタックも久々にうまくいきました」と武士選手。

決勝ではストレートパフォーマンスに定評のある、GT-R勢に抗うことを許されず抜かれてしまったが、それでも終盤まで3番手を走行。燃料のパーコレーションによって、再度給油を余儀なくされたのは予定外だったが、完全復活は近いといっても過言ではないだろう。土屋親子は、まだまだ産みの苦しみを楽しんでいる、何しろふたりとも妥協が大嫌いなだけに……。

ENGINEER VOICE

藤代秀一 [ヨコハマ・モータースポーツ・インターナショナル SUPER GT開発統括]

GT500に関しては、非常に残念な結果となってしまいました。「WedsSport ADVAN RC F」も「D’station ADVAN GT-R」も他車に対して遜色ないタイムが出ていましたし、練習でロングのタイムが良かったんです。そういった意味では、予選が残念な結果になってしまいましたが、優勝は無理でも追い上げていく展開ができると思っていたのですが……。

エンジントラブルを抱えた「D’station ADVAN GT-R」は、佐々木選手がすごく自信を持っていたのに、予選も決勝も走れなかったのは気の毒でした。公式練習ではすごく距離を走ったタイヤでも、ほぼトップタイムを出していて、本人もかなり行けると思っていたので残念です。

「WedsSport ADVAN RC F」も序盤に脇阪選手が接触され、スピンして10秒ぐらいロスしているので、それがなければもっといい結果を残せたでしょう。関口選手のラップタイムも非常に良かったので、それぞれ歯車がうまく噛み合っていれば、もう少しいいレースができたと思いますが、仕方ないですね。

GT300に関しては「B-MAX NDDP GT-R」が、順当に優勝したという印象です。昨年も勝っていて、このコースにクルマもタイヤも相性がいいのは事前に分かっていたので、チームも自信を持って挑んでいたでしょうし。「Studie BMW Z4」は、すごく頑張っていたと思います。タイヤ無交換だったんですが、第1スティントを担当した荒選手が、タイヤの摩耗を抑える走りで一生懸命やってくれて、第2スティントのミューラー選手も、タイヤをうまくいかすことを意識したレース運びをしてくれたと思います。ふたりのパフォーマンスには驚かされました。 その一方で「グッドスマイル初音ミクSLS」も無交換で行ったんですが、左リヤのタイヤが故障してしまって……。原因はまだ分かっていないんですが、ポイント獲れなかったのが痛いですね。

今後は富士、鈴鹿と高温の、よりハードなレースになっていくので、十分な耐久性を、きちんとレースを走りきれるタイヤを準備したいと思います。