2014 WTCC Round 21&22 Report

【FIA世界ツーリングカー選手権 第21戦&第22戦/鈴鹿サーキット (日本)】

第1レースを制したホセ・マリア・ロペス選手が王座を獲得、
第2レースではタルクィーニ選手が日本ラウンド初優勝を飾る!!

WTCC Round 21&22

開催日 2014年10月24日-26日
開催場所 鈴鹿サーキット
(日本)
天候 第1レース:晴れ
第2レース:晴れ
路面 第1レース:ドライ
第2レース:ドライ
決勝周回数 第1レース:11周
第2レース:11周
(1周=5,807m)
2014 WTCC 第21&22戦

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今年もヨコハマタイヤがワンメイクタイヤサプライヤーをつとめる、世界最高峰のツーリングカーによるスプリントレースが日本に上陸した。「FIA WTCC Race of JAPAN」は、2008年に岡山国際サーキットで初開催されてから7回目、鈴鹿サーキットでは4年連続の開催となるが、今年は初めて5,807mのフルコースを舞台とすることが話題を集めていた。

シリーズも残り2大会ということでタイトル争いの行方も気になるところだが、マニュファクチャラー部門は前戦の上海でシトロエンが獲得。そして日本ではホセ・マリア・ロペス選手とイヴァン・ミューラー選手の二人に絞られたドライバー部門の栄冠、その行方が決する可能性も高いなかでの戦いとなる。

金曜日には30分間のテストセッションが設けられたが、ここで見せたのは今年から導入されているTC1規定車両の速さ。トップタイムはロペス選手がマークした2分06秒987、これは鈴鹿フルコースのレコードタイムで言えばスーパー耐久のST1クラス(2分09秒785)を優にしのぎ、GT AsiaのGT3車両(2分04秒748)さえも視野に入るレベルである。もちろんご承知の通り、TC1車両のエンジンは排気量1,600ccのターボで、公称最高出力は380hpというスペックだ。

前日に続いて好天に恵まれた鈴鹿サーキット、土曜日は2回のフリープラクティスが午前中に行われた後、15時30分から公式予選がスタート。まずはQ1で20台から12台へと絞り込まれ、その次のQ2では5台が勝ち残るというフォーマットだ。Q1、Q2とトップタイムはイヴァン・ミューラー選手で、チャンピオン争いの白熱を予感させる展開。そしてシトロエンの3台とシボレー勢からトム・チルトン選手とヒューゴ・ヴァレンテ選手が勝ち残ったQ3は、Q2の5番手だったヴァレンテ選手から1台ずつアタックを行っていくが、次々にベストタイムが更新される流れとなる。

4番目の出走となったミューラー選手、セバスチャン・ローブ選手を上回る2分05秒514でベストを更新、タイミングモニターの最上段に名前を刻む。そして注目のロペス選手がアタックイン、しかしセクター1でミスをしてしまいミューラー選手の0.027秒遅れ、続くセクター2でも0.080秒届かない。このままミューラー選手がポールポジション獲得かとも思われたが、最終のセクター3で渾身のアタックを見せたロペス選手はトータルで0.075秒ミューラー選手を逆転、今季6回目のポールポジション獲得に成功した。

決勝が行われる日曜日は一時雨の予報も出されていた鈴鹿サーキットだったが、結果的には雨が降ることは無く日射しも照らす中で第1レース(第21戦)はスタートの時を迎えた。ロペス選手とミューラー選手、チャンピオン争いの主役たちがフロントローに並び、3番手はローブ選手、4番手にチルトン選手、5番手がヴァレンテ選手とシボレーRML、6番手にホンダのノルベルト・ミケリス選手というスターティンググリッドである。

各車がグリッドオン、レッドシグナル消灯とともに上位陣はミスなくスタートをこなして1コーナーへと飛び込んでいく。

オープニングでは130Rでヴァレンテ選手がチルトン選手をかわして4番手に浮上、一方でトップ3はハイペースで周回をこなしていく。2周目に入りトップの2台がチャージ、後続を引き離してチャンピオン争いは直接対決の様相を色濃くして行った。4周目と5周目にはトップを行くロペス選手がファステストラップを連発、5周を終えてミューラー選手に対して2.174秒のマージンを築き上げる。

しかしレースは11周、後半で巻き返すスタイルはミューラー選手の得意とするところ。昨年までにWTCC最多となる4回の王座に輝いているミューラー選手、ここからが本領発揮と思われたレース後半に入って7周目に、思いも寄らぬ事態が起こってしまう。オープニングラップや2周目で中位勢の中で激しいポジション争いが繰り広げられたこともあり、コースの一部には土や小石が散乱するダスティな状態になっていた。その中の小さな石を拾ってしまったか、ミューラー選手のタイヤがパンクしてしまいスローダウン。戦線離脱を余儀なくされ、ミューラー選手はそのままマシンをピットに戻してしまう。

このアクシデントで勝負は決した。ロペス選手は大量リードを背景にフィニッシュまでマシンを運んでウィニングチェッカー。この瞬間、WTCC初フル参戦のシーズンながら、ロペス選手のチャンピオンが決まったのである。2位は10周目のスープンでチルトン選手がヴァレンテ選手をパス、オープニングラップの借りを返すことに成功。そして3位表彰台は、チルトン選手に続いてヴァレンテ選手をかわしたローブ選手が獲得した。

第2レース(第22戦)は、ホンダのガブリエレ・タルクィーニ選手がポールポジション、ノルベルト・ミケリス選手も3番手グリッドでホンダ勢のホームコースにおける戦いぶりに注目が集まる中でスタートを迎えた。既に西へ傾いている太陽の光を浴びて、タルクィーニ選手は好スタートからトップのまま1コーナーをクリアしてレースをリード。その後方では3番手のミケリス選手が前を行くシボレーRMLのドゥサン・ボルコビッチ選手にシケインで仕掛けるも、両者は接触し順位を入れ替えることなくタイムロス。この間にもタルクィーニ選手はマージンを稼ぎ、オープニングラップで1.321秒を得ると、2周終了時点では2.263秒へと拡大した。

一方で気になるのはシトロエン勢の追撃。8番手スタートのローブ選手をオープニングラップでミューラー選手がかわすと、5周目には軽く接触を伴いながらロペス選手もローブ選手の前に出る。そしてこの5周目、ヘアピンで前を行くヴァレンテ選手のインに飛び込んだミューラー選手だったが、両者は接触しヴァレンテ選手はハーフスピンからリタイアという結果に。この接触については審議対象となり、レース結果そのものが変わることは無かった。ただし大会審査委員会は、次戦におけるグリッド降格処分を科すこととした。

レース後半ではミューラー選手とロペス選手が、時にコースをはみ出す勢いで激しくプッシュ。しかし、その行く手にはシボレーRMLのトム・コロネル選手が立ちふさがり、前に出ることを許されない。そうしている間にも完全に主導権を握って行ったタルクィーニ選手は、ボルコビッチ選手との差を一時は3.345秒にまで拡大。

このまま、終始リードを保ったタルクィーニ選手が、ホンダのホームコース・鈴鹿で優勝を飾ることに成功。タルクィーニ選手にとっても、日本で初めてのウィニングチェッカーとなった。2位はボルコビッチ選手で自身のWTCC最上位であり初の表彰台獲得。3位はミケリス選手となり、ホンダ勢はファンの期待に応えて1-3フィニッシュを飾った。

なお、TC2規定車両を対象とするYOKOHAMAトロフィーは、第21戦をフランツ・エングストラー選手、第22戦はジョン・フィリッピ選手が制した。


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DRIVER VOICE

ホセ・マリア・ロペス 選手 [Citroen Total WTCC]

【今回の成績 : 第21戦 優勝 / 第22戦 6位 (シリーズチャンピオン確定)】
「今の気持ちはどんなものか?」というのは、良い質問ですね。多くの思いが込み上げてきていますが、ひとつ確かなのは私を支え続けてくれる家族や恋人、友人に向けて「ありがとう」と言いたいということですね。そしてまた、チームメンバーとチームメイトにも感謝しています。彼ら無しに、私はここにはいられなかったのですから。
今日のレースは押し寄せるプレッシャーをよそに、とてもリラックスして戦えました。4位でも王座獲得でしたが、私は良い走りを見せたかった。第1レースはスタートも上手くいって、ミューラー選手の前をキープ出来ました。彼が後退してからはリラックスして、つまらないミスのないように気をつけました。
鈴鹿で勝てたことには大きな意味があって、私が憧れているアイルトン・セナ選手がF1で2回も優勝をしているところだということです。私はここで勝ちたかったのです。そして今、ファン・マヌエル・ファンジオ選手以来となるアルゼンチン人の世界チャンピオンになれたのですが、母国でも多くの人が喜んでくれていると思います。こんな名誉なことはありませんね。

ガブリエレ・タルクィーニ 選手 [Castrol Honda WTCC Team]

【今回の成績 : 第21戦 6位 / 第22戦 優勝】
最高の舞台で勝つことが出来ました!!
鈴鹿で勝ってホンダの強さを多くの人が喜んでくれているのを見られて、とても嬉しく思っています。昨日の予選はあまり良くない結果に落胆していたのですが、決して10番手は狙っていったものではありません。しかし今日はとても良いレースをすることが出来ました。スタートも上手くいき、序盤で後続を引き離してマージンを稼ぎ、それを守り抜いていくというのが戦略でした。そして、その戦略は完璧に上手く行きましたね。上海ラウンド同様に、良いレースラップを刻めることは実証できました。次は予選での速さを高めるために、一層の努力をしていきたいと思います。

TECHNICAL INFORMATION

初のフルコース開催となった鈴鹿でのWTCCは、大幅にポテンシャルがアップしたTC1規定車両の速さが目立つ一戦となった。130Rをはじめとした高速コーナーの存在から、WTCC開催コースの中でも屈指のタイヤシビアリティの高さが特徴の鈴鹿フルコースだが、18インチのTC1車両用タイヤはポテンシャルの余裕も大きく、各車のハイペースな走りをしっかりと支えた。
WTCCの決勝前にはスーパー耐久の決勝が行われたが、GT3車両も走るような耐久レースが併催されたのも日本ラウンドの大きな特徴。路面にはスーパー耐久車のラバーも載った状態にあったが、WTCC各車の摩耗などに影響はなく、上位陣はリアタイヤを含めて上手くタイヤのパフォーマンスを引き出していた。