2014 JRC Round 9 Report

【全日本ラリー選手権 第9戦/愛知県新城市】

奴田原文雄選手組が二年連続で新城ラリーを制覇、
新井敏弘選手組とのワン・ツー・フィニッシュで一年を締めくくった!!

JRC Round 9

開催日 2014年10月31日-11月2日
開催場所 愛知県・新城市 近郊
天候/路面Day1) 雨/ウェット
Day2) 曇り/ウェット~セミウェット
ターマック(舗装路面)
総走行距離 284.067km
SS総距離 91.336km (12SS)
得点係数 1.0 (舗装路50km~100km)
参加台数 58台 (オープンクラス含)
(ヨコハマタイヤ装着車 26台)
全日本ラリー選手権 第8戦

[Photo]

[Photo]

[Photo]

[Photo]

[Photo]

[Photo]

[Photo]

[Photo]

[Photo]

[Photo]

[Photo]

全9戦のカレンダーで競われてきた2014年の全日本ラリー選手権も、いよいよ大詰めを迎えた。シリーズ最終戦は昨年同様に、愛知県の新城市をホストタウンとする「 新城ラリー」である。新城市は横浜ゴムの工場も立地しており、大会をブース出展などでバックアップ。工場関係者も多くがサポートしたほか、観戦に家族連れで足を運んだという人も多く、ヨコハマタイヤ勢にとってはホームラリーとも言えるこの一戦での活躍が期待された。

ラリーは愛知県の支援も受けて、今年も新城総合公園をベースに開催。チームの拠点となるサービスパークのほか、園内路を使ったSS(スペシャルステージ)や、特設コースでのデモランに同乗走行、そして多数の出展ブースと、全日本選手権ではRALLY HOKKAIDOに並ぶ規模と言える見どころの多さが特徴である。

競技は12本のSS、合計距離91.336kmで競われるが、狭くテクニカルな名物ステージである「雁峰(がんぽう)林道」や愛郷林道を主体に、高速コースの「作手北 (6.982km)」、そしてギャラリーステージとなる公園内の「SSS県営新城公園」というラインナップ。このうち公園のステージは土曜日と日曜日に2本ずつの走行となるが、両日で走行方向を入れ替えて行われた。

この最終戦を待たずして、前戦のハイランドマスターズ(岐阜県)でシリーズチャンピオン奪還を決めている奴田原文雄選手/佐藤忠宜選手組。チャンピオンの称号を携えて新城へは凱旋ラリーとなったが、終始ラリーリーダーとして強さを見せての戦いを演じることとなる。

Day1の土曜日は朝から雨模様。オープニングのSS1「ほうらいせん一念不動 1 (9.177km)」はヘビーウェットで、上り区間では路面いっぱいに雨水が走行する車に向けて流れてくるような状況だった。そんな状況は続く大会最長のSS2「雁峰北 1 (14.404km)」でも変わらず。チャンピオンを争ったライバルをはじめ、序盤から早々に戦線を離脱する選手も現れる中、奴田原選手組はオープニングから連続ベストで主導権を握っていく。これに続いたのはSS1でセカンドベストを奪った新井大輝選手/田中直哉選手組、3番手は新井敏弘選手/竹下紀子選手組で、ヨコハマタイヤ勢がトップ3を独占するフォーメーションを早々に構築する。

1本目の公園ステージを終えて各車は30分のサービスを受け、戦いはDay1の後半戦へ。前半で走った3本のステージをリピートするアイテナリーだが、天候は変わらず雨が降り続いており、路面もウェットコンディションのままである。

SS4「ほうらいせん一念不動 2」でベストを奪ったのは新井敏弘選手組、続くSS5「雁峰北 2」は奴田原選手組が4回目のベスト。惜しくも最終の公園ステージのみ僅差でライバルにベストを譲る結果となったが、Day1を終えて奴田原選手組がトップ、40.0秒差で2位が新井(敏)選手組という結果に。一方で、残念ながらトップ3の一角を走っていた新井大輝選手組はSS5で右コーナーイン側の側溝にリアタイヤをひっかけ、その衝撃で足回りを破損してしまいデイリタイアとなってしまった。

一夜明けた新城、朝方は雨が止んでいたもののこの日は「雁峰西 (13.873km)」と「作手北 (6.982km)」、そして「県営新城公園リバース (0.587km)」を各2回ずつ走行する。雁峰林道は生いしげる木々がトンネルのように路面を覆う箇所も多く、一方で作手は空が見える開けたロケーション。果たして路面は乾くのか、朝のスタート前は各選手が頭を悩ませる光景がサービスパークでは多く見られた。

奴田原選手組、新井(敏)選手組ともに、タイヤはDay1をスタート時に装着している4本のADVAN A050で走りきっている。今回は当初の使用規定本数10本に、土曜日の夕方に出された競技長のウェット宣言により2本を加えた12本までを使用できるが、ヨコハマタイヤ勢にとっては10本でも十分に走りきれる状況にあった。

奴田原選手組のタイヤはDay1のスタートから使っている4本を引き続き装着、スペアに新品2本を搭載。新井(敏)選手組は新品4本を装着し、更に新品2本をスペアとして搭載してDay2はスタートした。

SS7「雁峰西 1」はやはり路面が濡れており、新井(敏)選手組がセカンドベスト。ここで、大量マージンを背景にペースコントロールした奴田原選手組は4番手に留まるも、続くSS8「作手北 1」ではスペアとして積んでいた2本をフロントに装着してベストを刻み、大勢のギャラリーが見守るSS9「県営新城公園リバース 1」と連続ベスト。

このまま2ループ目も安定した走りで、最終SSもベストとセカンドベストを刻んだヨコハマタイヤ勢。惜しくも表彰台独占こそならなかったものの、奴田原選手組がチャンピオンとしての凱旋ラリーを制して新城で2年連続優勝、新井(敏)選手組がこれに続く準優勝という、ヨコハマタイヤ勢のワン・ツー・フィニッシュで2014年の全日本ラリー選手権を締めくくった。

JN5クラスはDay1を終えて、ベテランの石田雅之選手/遠山裕美子選手組が、トップと0.3秒の僅差で2番手につけた。Day2での逆転に期待がかかるところだったが、惜しくもマイナートラブルに襲われてしまいペースアップすることが叶わず。それでも粘りの戦いぶりで5位に入ったほか、チャンピオンを決めている鎌田卓麻選手/市野諮選手組が4位、そして今回から新たにトヨタ86を投入した山口清司選手/島津雅彦選手組が6位で、それぞれこのタフな一戦をしっかり完走した。

JN4クラスは12SSのうち7つのSSでステージベストを刻んでチャンピオンの貫祿を見せた竹内源樹選手組が最終戦も勝利で締めくくった。また、この結果によりコ・ドライバーの加勢直毅選手も、2000年のBクラスで獲得して以来となる久しぶりの全日本タイトルを手中におさめた。

このほか、JN3クラスではマツダ・デミオを駆る唐釜真一郎選手/松浦俊朗選手組が3位でフィニッシュ。JN1クラスは高篠孝介選手/廣嶋 真選手組が準優勝、チャンピオンを決めている中西昌人選手/美野友紀選手組も4位で完走。サバイバルな一戦でも多くのヨコハマタイヤ装着車が最後まで戦い抜いて、タイヤの安定したパフォーマンスが実証される一戦となった。

DRIVER VOICE

奴田原文雄 選手 [ADVAN-PIAA ランサー]

【今回の成績 : JN6クラス 優勝】
初日はヘビーウェットとなりましたが、今年は雨が多かったのでセッティングも詰められたので良いフィーリングで走れました。今回はSSの本数が少ないので、ちょっとでもミスすると大きく響いてくるのでオープニングステージからしっかり走ることを心がけていきました。チャンピオンが決まっているので気分的には余裕もあったので、無理しすぎず手を抜かず、くらいのペースで走れたのが、ちょうど良かったのかもしれませんね。雁峰のSS2でタイムが良くて大きく引き離せたのですが、ADVAN A050のパフォーマンスとマシンのセッティングが良かったことを証明できました。
最後も優勝で締めくくれましたが、チャンピオン奪還も果たせて良い一年になりました。つまらないミスの無いように常に一戦一戦やってきたことが結果につながり、サポートや応援してくれたみなさんに恩返し出来ました。

新井敏弘 選手 [アライモータースポーツWRX-STI]

【今回の成績 :JN6クラス 2位】
奴田原選手はチャンピオンが決まっていて、勝田(範彦)選手は地元なので、抑えることなく全開で来るだろうと思っていました。その中で自分がどの位置にいられるのか、ベンチマーク的に見られるラリーになると思って臨んだ新城でした。ただ、私にとっては経験値が全くない雁峰のステージは簡単には行かないだろうと予想出来たので、セッティングも前回からかなり変えてスタートしました。雨になりましたが、あまりに雨が多くてSS2を抑えすぎて抱えたビハインドが最後まで響いてしまいましたね(苦笑)。初日はターマック(舗装路)でしてはいけない走り方をしていたので、2日目はセッティングも変えて走らせ方を変えたらタイムが上がりました。
久しぶりに全日本選手権にフル参戦してみて、日本ならではのクネクネして路面のμもコロコロ変わる道を、なめてしまっていた感じがありますね。フル参戦して、いい経験になりました。

竹内源樹 選手 [CUSCO ADVAN BRZ]

【今回の成績 :JN4クラス 優勝】
今回はADVAN A050を装着しているJN5クラスと比較して、タイム的にどのくらいまで食い込めるのかを見てみたいということがひとつありました。しかしコンディションが余りに悪かったので、ちょっと比較データにならない差がついてしまいましたね。なので、そこからは自分として集中力を切らさずに、コンスタントに走っていくことをテーマにして戦いました。無理するところは無く、気持ちよく走れるところは踏んでいき、セクション毎に気持ちを入れ替えてセットアップも雁峰寄りに途中から変えるなどしていきました。
チャンピオンは決まっていますが、まだ正直なところ実感は薄いんですよ。でも、勤務先(富士重工業)の情報発信でも「社員ドライバー」と表現されたり、徐々にチャンピオンを獲ったことでの変化は出てきていますね。来期のことはまだ白紙ですが、本音で言えばAWD(全輪駆動)ターボで腕を磨きたいという思いがあります。また、どのクラスであってもひとつのクラスに集中して行けたらいいな、と思いますね。

高篠孝介 選手 [YH・WM・KYB・マクゼススイフト]

【今回の成績 :JN1クラス 2位】
前回の悔しさもある中での新城でしたが、別格とも言える速さのRX-8は別にして絶対に2位で終わりたいという気持ちが強かったので、その通りになって安心しています。初日はヘビーウェットでしたが、雨のほうが上位との差が少ないので「降るなら降ってくれ」という気持ちで臨みました。SS1からライバルがトラブルで大きく後退して自分はホッとするところからはじまりましたが、2日目に大量マージンがあるから多少負けてもいいかと思っていたら思った以上に負けてしまって……。完走しなければという気持ちが、ちょっと強すぎました。
3位と2位では大きく違うので、気持ちを切り替えてタイヤをサービスでG/2SからG/Sに換えて攻めの姿勢で臨んだのですが、雁峰西の2回目はプッシュの連続でゴールしたらグッタリするくらいの走りで行きました。マージンを上手く使えて戦えたので、良い締めくくりになりました。来年のことは未定ですが、奥さんのおかげもあって良い一年を過ごすことが出来ました(笑)

TOPICS

48,000人の大観衆を前に見せた、ヨコハマタイヤ勢の強さ!!

2007年から全日本ラリー選手権のカレンダーに加わった「新城ラリー」。2013年からは愛知県のバックアップもあり、メイン会場を現在の新城総合公園へと移してイベントの規模を大きく拡大。充実した付帯イベントや出展が特徴となり、家族連れやモータースポーツ初心者でも気軽に観戦出来る全日本ラリーとして人気を高めている。

[Photo]

会場となった新城総合公園には今年も特設コースが用意され、トミ・マキネン氏らのデモンストレーション走行が観客を楽しませた。さらに同乗走行も抽選で行われ、貴重な体験を出来る機会が用意されていたのも新城ラリーならでは。

話題を集めたといえば大会の安全な運営を支えるオフィシャルカー、なかでも競技車両に先立ってコースを走行して安全を確認する「00カー」は、年内発売予定の燃料電池自動車「トヨタ・ミライ」がその任に当たった。このステアリングをDay1には豊田章男氏、Day2には加藤光久氏とトヨタ自動車の社長と副社長が握ったことも、新聞各紙などで大きく報じられるところとなった。

もちろん新城市に工場を構える横浜ゴムも、ブース出展やステージカーなどで大会の盛り上げに一役かった。特に出展は新城市のPRブースと向かい合わせで行い、ステージではグッズ類があたるゲーム大会のほか、新城市のPRも実施。3人のADVAN GALもステージショーやセレモニアルスタート/フィニッシュに出演するなど、二日間で48,000人(主催者公式発表)の来場者を記録した大会に華を添えた。

AREA GUIDE

“戦い”もキーワードの新城市で、日本史の1ぺージに触れる旅!!

ラリーという戦いの舞台としての認知度も高まっている新城市は、日本史の重要な1ページにおいても戦いの舞台としてその名を刻んでいる。
1508年に菅沼元成が築城した長篠城は、当初は菅沼氏が徳川家康に服属していたが1571年に武田信玄勢に攻め込まれて武田方とならざるを得なくなってしまう。

[Photo]

しかし1573年に信玄の死もあり、徳川方によって攻め込まれて城主・菅沼正貞は城を明け渡す。この城を巡り、父・信玄の上洛の夢を果たそうと武田勝頼が1575年に1万5千の兵を率いて、徳川家康・織田信長連合軍と対峙したのが、長篠の戦いである。

当時の最先端兵器だった鉄砲が使われ、三段撃ちという新戦法も功を奏し、武田の騎馬隊は徳川・織田連合に為す術無く殲滅させられた長篠の戦い。信長の「天下人」としての地位を確固たるものとし、徳川家康が三河を掌握することとなった大きな歴史の転換点であるが、その舞台となった長篠城址は国の史跡に指定されており、「史跡保存館」には多くの資料から歴史の1ページを学ぶことが出来る。

TECHNICAL INFORMATION

本文中にもあるように、本大会ではDay1の夕方にウェット宣言が出され、合計12本のタイヤを使えることになった。ヨコハマタイヤ勢では、奴田原選手組/新井敏弘選手組ともに、Day1スタートの段階から2日目での天候や路面のドライへの変化を見越してタイヤ温存策を実践。その結果として両クルーともに初日を4本のみ使用で走りきったが、リザルトはワン・ツーだったことから、速さを十分に伴う走りだったことは一目瞭然。

Day2は大量マージンを背景にペースコントロールした部分もあったが、それでも多くのステージベストを奪いワン・ツー・フィニッシュで大会を席巻したことからも、ADVAN A050の幅広いステージに対する適応能力の高さと、優れた摩耗性能を改めて実証した。