2014 JRC Round 8 Report

【全日本ラリー選手権 第8戦/岐阜県高山市】

JN6では奴田原文雄選手/佐藤忠宜選手が王座奪還、
新生JN4とJN2でもヨコハマタイヤ勢が初代王座に輝く!!

JRC Round 8

開催日 2014年10月17日-19日
開催場所 岐阜県・高山市 近郊
天候/路面Day1) 晴れ/ドライ
Day2) 晴れ/ドライ
ターマック(舗装路面)
総走行距離 361.99km
SS総距離 69.82km (10SS)
得点係数 1.0 (舗装路50km~100km)
参加台数 53台 (オープンクラス含)
(ヨコハマタイヤ装着車 22台)
全日本ラリー選手権 第8戦

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シリーズの天王山ともいえるRALLY HOKKAIDOを終えた全日本ラリー選手権は、終盤のターマック(舗装路)2連戦に突入。第8戦は42回を数える伝統の一戦、M.C.S.C.ラリーハイランドマスターズが、今年も岐阜県の高山市を舞台に開催された。

今年も高山市郊外の道の駅モンデウス飛騨位山にサービスパークが設けられたハイランドマスターズ。SS(スペシャルステージ)はお馴染みの「駄吉(6.13km)」が昨年とは逆の上り方向で設けられたほか、ギャラリーステージの「アルコピア-無数河 (6.11km)」、「牛牧下り (6.89km)」、そして新たに設定された大会最長となる「あたがす (9.67km)」というラインナップで、10SS/合計69.82kmで競われる。

RALLY HOKKAIDOで優勝を飾り、チャンピオン獲得に王手をかけてこの大会に臨んだ、JN6クラスの奴田原文雄選手/佐藤忠宜選手組。あと5点を加えることで自力チャンピオン獲得という有利な条件で戦いはスタートしたが、思わぬ苦戦を強いられる展開になる。

土曜日のDay1、10時58分にオープニングのSS1「駄吉上り 1」をゼッケン1の奴田原選手組がスタート。残り2戦ともに満点優勝のみがタイトルの条件となるライバルの勝田範彦選手組がベストを奪う一方、リスクを冒さない範囲での走行に留めつつも奴田原選手組はサードベスト。続くSS2「アルコピア-無数河 1」では奴田原選手組がセカンドベストで、順調にセクション1を走って1回目の30分サービスを受けた。

セクション2はリピートとなり、SS3は「アルコピア-無数河 2」。ギャラリーの見守る中でスタート、スキー場の一角から林道へと入ってフィニッシュを目指していくが、その途中で奴田原選手組の耳にはターボチャージャーのタービンが発する異音が届いてしまう。この異音はSS4に入るとさらに大きくなり、ステージタイムも5番手に留まる。2回目のサービスは20分なので交換作業を行うことは時間的に叶わない。

SS5と6、2回連続で走行となる「牛牧下り」も我慢の走りでDay1の6SSを走りきった奴田原選手組、ステージタイムの合計は29分45秒0でトップの勝田選手組とは差が開いているものの2番手だった。そしてパルクフェルメイン前の45分サービス、Day2に向けて不安材料を払拭するためにチームはタービン交換作業にかかる。しかし、ステージ走行直後で高い熱を帯びていることもあり、百戦錬磨のメカニック陣を手こずらせる。このため交換作業を中断してDay2に臨む決断を下すが、結果的に最終TCに3分遅着してしまい30秒のペナルティが加算されてポジションは6番手となりデイポイントも獲得が叶わないという展開に。

日曜日のDay2はスタート順が2番手となり午前7時01分に奴田原選手組がスタート。朝の気温は2℃と冷え込む中、奴田原選手組は最終的にデイポイント無しの4位、デイポイント1点の5位、デイポイント2点の6位、デイポイント3位の7位のいずれかがチャンピオン獲得の条件となった。

2日目のオープニング「あたがす 1」、本大会3回目の走行となる「アルコピア-無数河 3」をともに4番手であがった奴田原選手組は6位、Day2順位はポイント圏外の5位。厳しい状況で王座争いの最終戦持ち越しも可能性を高める中、リピートとなる最終のセクション5も諦めることなく臨んだ奴田原選手組、SS9「あたがす 2」を3番手であがると、SS8終了時点で4位だった福永修選手組がここで大きく後退、奴田原選手組は5番手に浮上してDay2順位でも3位となりチャンピオン獲得の条件を満たすポジションになる。最終SSでの注目はデイ順位、0.3秒後ろの新井大輝選手はここまで2つのSSで父・敏弘選手を上回る速さも見せているだけに、逆転の可能性は十分にある展開だ。

多くのギャラリーも注目する中でスタートした最終SS。奴田原選手組は決して完全ではないマシンで渾身の走りを披露、勝田選手組に続くセカンドベストでフィニッシュ。厳しい戦いは5位でフィニッシュ、Day2を3位であがったことからデイポイントとの合計で5点を加え、2009年以来5年ぶり、全日本ラリー選手権の最高峰クラスでは9回目となるチャンピオンの獲得に成功した。

また、JN6クラスでは新井敏弘選手/竹下紀子選手組が準優勝。新井大輝選手/漆戸あゆみ選手組は惜しくも表彰台に一歩届かなかったものの4位でフィニッシュを果たした。

今年から設けられたRPN車両によるクラスでも、ヨコハマタイヤ勢が初代チャンピオンの栄冠を獲得。JN4クラスはBRZで開幕戦を制して勢いをつけ、チャンピオン争いの主役となってきた竹内源樹選手/加勢直毅選手組が準優勝、ライバルの平塚忠博選手組がリタイアしたことで最終戦を待たずして栄冠を手中におさめた。

JN2クラスは、スイフトを駆るベテランの田中伸幸選手/藤田めぐみ選手組が安定した走りでこちらも準優勝。ライバルの高橋悟志選手組に優勝こそ譲ったものの、3位以上という王座獲得条件を満たしてチャンピオンとなった。

このほか、既にRALLY HOKKAIDOでチャンピオンを決めているJN5クラスの鎌田卓麻選手/市野諮選手組、JN1の中西昌人選手も準優勝。中西選手のコ・ドライバーをつとめる美野友紀選手も、この結果を受けてチャンピオンを獲得。

こうした結果により、6クラスに再編された2014年の全日本ラリー選手権では、最終戦を待たずしてJN3クラスを除く5つのクラスでヨコハマタイヤ勢がチャンピオンを獲得。ターマック/グラベル(非舗装路)それぞれで見せてきたタイヤの優れたパフォーマンスが、多くのチャンピオンを生んだ一年となった。

DRIVER VOICE

奴田原文雄 選手 [ADVAN-PIAA ランサー]

【今回の成績 : JN6クラス 5位 (シリーズチャンピオン確定)】
「ラリーは最後まで何があるかわからない」というのが、まさに今回の戦いでしたね。Day1の前半でターボにトラブルが生じて、これは最後までもつのだろうか、という心配を抱えての戦いになりました。とにかく走りきらなければならないですからね。最後まで諦めずにいこうと集中して頑張りました。そうしたら一度は見放したかに見えた勝利の女神が、またこちらに微笑んでくれたので、頑張った甲斐がありましたね。相手がどうであろうと、自分がその時にポジションを上げられるところにいなければならないのですから、最後までしっかり戦うことの大切さを改めて思いました。チャンピオンを獲るのは、改めて大変だと思った一年でした。王座奪還が叶ったことについては、チームやヨコハマタイヤ、そして応援してくれる多くのみなさんに感謝しています。

新井敏弘 選手 [アライモータースポーツWRX-STI]

【今回の成績 :JN6クラス 2位】
Day1をADVAN A050のG/2Sコンパウンドでスタートしたのですが、これは選択ミスでした。最初のサービスでタイヤを替えたのですが、セクション1の2本で抱えたビハインドが、最後まで響く展開になってしまいましたね……。序盤で大きく離されてしまったので追いつく要素が無く、ストレスの溜まる2位になってしまいました。息子(新井大輝選手)に負けたステージもありましたが、まだまだ“伏兵”とまではいかないかな(笑)。あれがコンスタントに来るようになったら驚異を感じますが、ここは速いだろうなというSSで順当なタイムを出してくるも、リピートでいまひとつ伸びないのは、まだ経験値が足りないということでしょう。でも、夏にオーストリアで修行してきたことは、実になっていますよね。

竹内源樹 選手 [CUSCO ADVAN BRZ]

【今回の成績 :JN4クラス 2位 (シリーズチャンピオン確定)】
正直、佐藤隆行選手がSSによってはかなり速さを見せていたので怖いなと思っていたのですが、Day2のオープニング「あたがす」であんなにやられてしまうとは思ってもいませんでした。僕も抑えていたわけではないのですが、ダートトライアルのチャンピオン経験者でもある佐藤選手の1本に対する集中力や走らせ方の凄さを思い知らされましたね。平塚選手のリタイアによりチャンピオンは序盤で決まりましたが、やはり勝ちたいというモチベーションを最後まで持っていました。ただ、焦ってしまいミスもあったので、もうちょっと集中してタイムを削っていかなければならないということは今後への課題になりました。

田中伸幸 選手 [加勢eレーシング YH クスコ WM スイフト]

【今回の成績 :JN2クラス 優勝 (シリーズチャンピオン確定)】
コースが難しくて楽しいラリーでした。2日目の「あたがす」はどんどんアクセルを踏んでいけて、とても好きなタイプの道でしたね。JN2の初代チャンピオンを獲得することも出来て、とても良いかたちでシーズンを締めくくることが出来てホッとしています。

中西昌人 選手 [YH・WM・KYB・マクゼスストーリア]

【今回の成績 :JN1クラス 2位】
チームメイトの高篠孝介選手組が手違いによりマフラーがRALLY HOKKAIDOのままの状態だったため失格となってしまい、私が結果としては2位に繰り上がることになりました。高篠選手のスイフトはどんどん車の仕上がりが良くなってきているのに対して、私のストーリアはちょっと“車の疲れ”が溜まってきている状態で、きつい上りや長いストレートでは苦戦する場面もありました。それでもペースを落とすのはかえって危ないので、それなりのところでリズムを崩さないことを心がけました。1日目を終えての差も考えて、2日目は3位キープでフィニッシュまで運びました。この結果でコ・ドライバーのチャンピオンも決められました。次の新城は名物の雁峰林道でストーリアがどこまで行けるのかを試してみたいですね。

TOPICS

ヨコハマタイヤ勢、5つのクラスで王座獲得!!

RPN車両の登場により、昨年までの4クラスから6クラスになった全日本ラリー選手権。参戦車種の幅も広がったことで注目を集めた2014年シーズンだが、6クラス中5つのクラスでヨコハマタイヤとともに戦うクルーがチャンピオンを獲得して強さを見せる結果となった。

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JN6でADVANカラーのランサーエボリューションⅩを駆る奴田原文雄選手/佐藤忠宜選手は、2009年以来5年ぶりとなる王座奪還に成功。全日本選手権の最高位クラスで9回目の王座の獲得、自身が持つ5年連続チャンピオン(2002年~2006年)の記録も守り抜く結果となった。

JN5クラスでは第4戦・洞爺でのBRZ初優勝から4連勝と勢いに乗った鎌田卓麻選手/市野諮選手がRALLY HOKKAIDOで早々に王座を獲得。JN1クラスもベテランの中西昌人選手がRALLY HOKKAIDO二連覇でタイトルを決めると、今回のハイランドマスターズではコ・ドライバーの美野友紀選手もタイトルを手中におさめた。

そして今季から加わったRPN車両部門でも、JN4の竹内源樹選手、JN2の田中伸幸選手/藤田めぐみ選手組が王座に輝き、こちらのクラスでもヨコハマタイヤの優れたパフォーマンスを改めて実証。

コ・ドライバー(ナビゲーター)部門でもベテランの佐藤忠宜選手や市野諮選手、藤田めぐみ選手と美野友紀選手の女性陣も活躍してドライバーの走りをしっかりとサポート。チャンピオン獲得へと導き、最終戦を待たずして笑顔を見せる結果となった。

AREA GUIDE

外国人観光客にも人気の飛騨高山!!

飛騨の小京都とも呼ばれる岐阜県の高山市。古い町並みや高山陣屋(写真)、飛騨国分寺など市内の見どころも多く、さらに下呂温泉や平湯、白川郷など広域観光の拠点としても利便性の高いロケーションにある。

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飛騨高山は世界的に有名な観光ガイドでもおすすめのスポットとして紹介されていることから、外国人観光客が多いという特徴がある。近年増えているアジア圏からの観光客のみならず、ヨーロッパや南半球からの観光客にも人気が高いことから、市内の飲食店では客の大半を外国人が占めるということも珍しくない。

既に高地では紅葉も色づきはじめており、10月下旬には市内近郊のスポットも色づく高山地方。美しい自然、温泉、ほうば味噌をはじめとした郷土料理と、ぜひこの秋に高山へ足を運んで楽しまれてみてはいかがだろうか。

TECHNICAL INFORMATION

既に決まっている2クラスに加え、3つのクラスで王座獲得に王手をかけて臨んだハイランドマスターズ。Day2の朝は気温がグンと下がって秋の深まりを感じさせるコンディションとなったが、ヨコハマタイヤ勢は可能性のあった全てのクラスでチャンピオンを獲得。京都以来となるターマックラリーでもフィニッシュまで各選手の走りをしっかり支え、結果的に5つのクラスでチャンピオンを獲得することに成功した。