2014 JRC Round 7 Report

【全日本ラリー選手権 第7戦/北海道帯広市】

JN6はトップ7独占で奴田原選手組は王座獲得に大きく一歩前進、
JN5クラスの鎌田選手/市野選手組とJN1の中西選手は優勝で王座獲得!!

JRC Round 7

開催日 2014年9月26日-28日
開催場所 北海道・帯広市 近郊
天候/路面Leg1) 晴れ/ドライ
Leg2) 曇り 一時 雨/ドライ&ウェット
グラベル(非舗装路面)
総走行距離 731.80km
SS総距離 182.28km (16SS)
得点係数 2.0 (非舗装路150km以上)
参加台数 41台 (オープンクラス含)
(ヨコハマタイヤ装着車 16台)
全日本ラリー選手権 第7戦

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全日本ラリー選手権の中で、群を抜くスケールの大きさで知られるRALLY HOKKAIDO。今年も北海道の十勝地方を舞台に、APRC(FIAアジア・パシフイック・ラリー選手権)との併催で開催、全日本選手権はグラベル(非舗装路)のSS(スペシャルステージ)合計距離が182.28km、ポイント係数も2.0と大きくシリーズ争いの行方を左右する天王山とも言える一戦である。

昨年は最終SSでまさかのアクシデントから逆転を喫した奴田原文雄選手/佐藤忠宜選手組にとっては、一年越しのリベンジが期待されるRALLY HOKKAIDO。26日(金)の夕方に賑やかなセレモニアルスタートで大会は幕開け、その直後に行われたSS1「SATSUNAI River 1(1.00km)」をステージベストであがって、幸先よいスタートを切る。

27日(土)から、林道を舞台とした本格的な戦いがスタート。SS2はアイヌ語で狐(パウセ)・神(カムイ)という意味の「PAWSE KAMUY 1(10.40km)、奴田原選手組はライバルの勝田範彦選手組を6.2秒引き離して連続ベストを奪う。さらに大勢のギャラリーが待ち受けるSS3「RIKUBETSU 1(4.63km)」と、金曜のオープニングから3連続ベストの快走で勝田選手との差を8.6秒に拡げていく。

しかしライバルもチャージ、アイヌ語で冷たい(ヤム)・水(ワッカ)という意味のSS4「YAM WAKKA Short 1(14.54km)」、黒い(クンネ)・山(イワ)という意味のSS5「KUNNEYWA 1(28.75km)」はベストを譲り、SS5を終えて奴田原選手組と勝田選手組は全くの同秒という激しいトップ争いが演じられる。
一進一退の展開、2ループ目となるSS6「PAWSE KAMUY 2」、SS7「RIKUBETSU 2」は奴田原選手組がベストを刻み、3.4秒差をつけてサービスイン。この日のスタートで装着したタイヤを4本とも新品に交換、残る3本のステージに向けて陸別サーキットでの20分のリモートサービスを受けて再びステージへと向かった。

SS8「YAM WAKKA Short 2」。全日本組の2番手でスタートした奴田原選手組は北海道らしいハイスピードなグラベルステージを快走していったが、中盤を過ぎてタイヤに何らかのダメージを受けてしまい、ペースダウンを余儀なくされてしまう。ステージタイムは6番手、ベストの勝田選手から40.4秒遅れてトータルでは37.0秒という大きなビハインドを背負ってしまった。

スペアタイヤに交換し、気を取り直して臨んだSS9「KUNNEYWA 2」。一秒でもビハインドを取り返すべくプッシュしていく奴田原選手組、フィニッシュが近づいてきた25.27km地点の左に曲がるジャンクションに差しかかると、視界に入ってきたのはこちらを向いてコースオフしている勝田選手のマシン。ステージ上はクリアだったので、その姿を横目にフィニッシュまでマシンを運んだ奴田原選手組、勝田選手組も最終的にはコースに復帰はしたものの、30分近いロスタイムで優勝戦線からは姿を消した。
対する奴田原選手組はLEG1最終となるSS11「SATSUNAI River 2」もしっかりベストであがり、LEG1を終えて2位に1分46秒1という大量リードを構築することに成功した。

28日(日)は、帯広は晴れていたが本別町は曇り、足寄町は小雨も時折降るというコンディション。LEG2のオープニングは「OTOFUKE Rev 1(6.12km)」ここでベストを奪ったのは新井大輝選手/田中直哉選手組。昨年はオープンクラスでRALLY HOKKAIDOに出走した新井(大)選手、今回はAPRCに出場する父・敏弘選手が使っている全日本選手権参戦車でのエントリーとなったが、土曜日のSS2スタート前にブレーキトラブルが発生してしまい、我慢の走りを強いられていた。前日のSS7終了後のサービスでマシンは修復されて本来のペースを取り戻していたが、注目の若手が日曜日のオープニングステージを制して速さを見せた。

その後、ギャラリーステージでもあるSS13「HONBETSU Rev 1(10.89km)」、大会最長となる「NEW ASHORO LONG 1(29.11km)」は新井(大)選手がセカンドベスト、奴田原選手組はサードベストで両者ともに快走。2走目となるSS15「OTOFUKE Rev」では再び新井(大)選手組がベストを奪っていく。

この間にもライバル勢は多くがリタイアして戦線から消えて行ったが、ヨコハマタイヤ勢は安定した速さで上位を独占するフォーメーションを形成。最終のSS16「SATSUNAI River 3」では、昨年のアクシデントを教訓にしっかりスタート前に自らマシンをチェックした奴田原選手組、ステージベストで締めくくり圧勝でRALLY HOKKAIDOを制し、初日の満点デイポイント、二日目の3位デイポイントとあわせて24点を加算。次戦・ハイランドマスターズでチャンピオン獲得の可能性が生まれる大きな意義のある勝利を手中におさめた。

また、2位にはベテランらしい安定したラリーでマシンをフィニッシュまで運んだ大嶋治夫選手/井手上達也選手組、3位は自身がラリーを始めるきっかけになったという十勝で竹内源樹選手/保井隆宏選手組が入り、表彰台はヨコハマタイヤ勢が主役に。それに留まらず、JN6クラスはトップ7をヨコハマタイヤ勢が独占し、ADVAN A053の圧倒的な強さを見せつける結果となった。

JN5クラスはチャンピオンに王手をかけて臨んだ鎌田卓麻選手/市野諮選手組が、ライバルを寄せつけない速さを披露。LEG1/LEG2ともに満点デイポイントを獲得する文句無しのパーフェクトウィンを飾り、2014年のシリーズチャンピオンを獲得した。また、3位は石田雅之選手/遠山裕美子選手組となり、こちらも表彰台の主役はヨコハマタイヤ装着選手となった。

JN1クラスは、ともにヨコハマタイヤで戦う中西昌人選手/美野友紀選手と、高篠孝介選手/廣嶋 真選手組がトップ争いを繰り広げた。この争いは経験値に勝るベテランの中西選手組がリードを守り、昨年に続いてRALLY HOKKAIDOで優勝を飾ることに成功。中西選手はこの勝利でシリーズチャンピオンを獲得した。

DRIVER VOICE

奴田原文雄 選手 [ADVAN-PIAA ランサー]

【今回の成績 : JN6クラス 優勝】
今回はマシンの動きがとても良くて、優勝出来たことについてはチームや応援していただいたみなさんに感謝しています。不安要素がなくラリーに臨めたことが、ひとつの大きな勝因ですね。SS8で遅れた時にはやばいと思いましたが、諦めずに気を取り直して走ったら勝利の女神がこちらに微笑んでくれました(笑)
後続と大きく離れたので、LEG2はリスクを犯さない範囲で走り、デイポイントも1点を獲得できて、次回以降で5点を獲得すればチャンピオンという有利なかたちに持ち込めました。ハイランドマスターズで決められるように、しっかり次に臨みたいと思います。

大嶋治夫 選手 [加勢eレーシングADVANランサー]

【今回の成績 :JN6クラス 2位】
とても楽しく走れたRALLY HOKKAIDOでした。この長丁場は、我慢が必要なんですよ。もっといけるところもあるのですが、そこを我慢するのが難しい。しっかり勝負どころを自分で見据えてラリーを組み立てて、フィニッシュまでマシンを持ってくるのがベストな戦い方ですね。勝負どころは最長ステージのKUNNEYWAですね。
LEG2はNEW ASHORO LONGがウェットで霧も出ましたが、あれは相当に経験が必要だと思います。目標物が少ないハイスピードステージを霧の中で走るには、年齢的なハンデもあってちょっときつかった部分もありますが、しっかり走りきれました。
2位表彰台は上出来の結果、ヨコハマタイヤ勢の表彰台独占もかなって、僕に感謝してくださいね(笑)

竹内源樹 選手 [CUSCO ADVAN インプレッサ]

【今回の成績 :JN6クラス 3位】
洞爺以来となるAWD(全輪駆動)車でのグラベルラリーなので、自分の中での切り替えが最初はちょっとチグハグだったところは否めない出だしでした。車は今回は僕のなので、プライベータースペックということで労りながらの戦いでしたが、これが結果としては良かったのかな、と。あとは、クルマの動かし方やライン取りといったことをひとつひとつ確認しながら走れたことが、次につながる大きな収穫になりました。
SS1を走るまでは、一か八かの勝負もありかと思っていたのですが、オープニングステージを走り終えてそういうのはやめて、しっかり走ろうと気持ちをいい意味で切り替えられたのも良かったですね。それが無かったらPAWSE KAMUYは超全開で行っていたでしょうし、果たしてそれで表彰台に立てたのかというところです(笑)

鎌田卓麻 選手 [TEIN ADVAN スバル BRZ]

【今回の成績 :JN5クラス 優勝 (シリーズチャンピオン確定)】
レッキで自分の得意なところやマシンが壊れそうにないステージを見極めて、そこは全開で行こうと決めていました。そこを走ってみてライバルより僕のほうが速かったので、とても心に余裕が出来てマシンを労って走ることが出来ました。
BRZはFR(後輪駆動)なので、登り下りがきつかったり、ヘアピンのようなところは大変なのですが、RALLY HOKKAIDOのように道が広くて速いところはJN6クラスの何台かも食えるような感じがありますね。
全日本選手権の初チャンピオンを決められましたが、まだ実感がないというか。元々ランサーやインプレッサで身を削るような思いでタイムを削るラリーを長くなってきたので、BRZに乗ってそれほど頑張らないほうがいいラリーなので、気持ちが難しいところもありますね。でも、僕も大人になったので、車を壊さない走りをするようになったんですよ(笑)

石田雅之 選手 [加勢eレーシングADVAN86]

【今回の成績 :JN5クラス 3位】
今回はステージにとって鎌田(卓麻)選手に想像以上に離されて、何が悪いんだろうというところから始まったラリーでした。86は速く走らせるとなると、難しい車だと実感しましたね。ここ2戦がちょっとダメだったので、RALLY HOKKAIDOでの3位表彰台は大きな成果を残すことが出来ました。
次は新城に参戦しますが、以前に他社のタイヤを使っていたころはターマック(舗装路)が大嫌いだったんです。それがヨコハマタイヤを使うようになって、ターマックの特にウェットが大好きになりました。だから新城は雨乞いして、ウェット狙いで行きたいと思っているんですよ(笑)

中西昌人 選手 [YH・WM・KYB・マクゼス・ストーリア]

【今回の成績 :JN1クラス 優勝 (シリーズチャンピオン確定)】
チャンピオンを賭けたRALLY HOKKAIDOでしたが、JN1は台数が少ないので絶対にリタイア出来ない一戦という思いでした。それに加えて、優勝しないとチャンピオンに届かない展開でもあったので、どうしてもジレンマというか、止まることは許されないけれど速さも必要という難しい流れがありました。SS1からLEG1のファーストループは良い流れで、1分近いマージンを得られたので、これで手応えは掴めました。しかしセカンドループで詰められ、LEG2ではマシンがちょっと完調ではなくなってしまったこともあり、それに伴ってセーブし過ぎて苦しい戦いになりました。
そんな中で優勝してチャンピオンを決められましたし、LEG2で満点デイポイントも獲得できたのでコ・ドライバーの美野選手のチャンピオン獲得に向けても良い結果を残すことが出来ました。

TOPICS

ラリーが地域住民にも深く根付いている北海道十勝地方!!

北海道十勝地方は、WRC(FIA世界ラリー選手権)のRALLY JAPAN開催からこれまで、日本で唯一の国際ラリー競技会の舞台として大会が開催されてきている。11年前の2004年、RALLY JAPANが初めて開催された時には、帯広市内の目抜き通りが観客で埋めつくされたことをご記憶の方も多いことだろう。

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以来これまで、帯広市を中心に各町村でも自治体と民間が一体となってラリーを歓迎する気運に包まれている。各地域には地元のみなさんによる支援組織も結成されており、歓迎ののぼり旗がリエゾン区間にも設けられたり、地元の新聞でも大きく記事が採り上げられたりしており、老若男女問わずラリーが地域に根付いていることが伺える。

そんな中で、今年は新たに幹線道路に設けられている交通情報などを伝える道路情報板に、RALLY HOKKAIDOの文字が表示された。

これは北海道開発局 帯広開発建設部/網走開発建設部と、北海道十勝総合振興局 帯広建設管理部が協力したもので、9月19日から大会終了までの10日間にわたり実施されたもの。

開幕前は「ラリー北海道 9月26日から開催 通行注意」、開幕後は「ラリー北海道 開催中 通行注意」という表示が、札幌や釧路、北見・網走方面、とかち帯広空港から帯広市内方向に向かう幹線道路に設けられた25箇所の道路表示板で表示された。

この表示からも官民一体となった歓迎ムード、ならびに主催者の大会ピーアールに力を入れている姿勢が伺える。

AREA GUIDE

秋の味覚、雄大な北海道らしい自然を十勝で満喫!!

RALLY HOKKAIDOの舞台となる北海道の十勝地方は、日本有数の農業地域として日本の食料庫とも言える地域性を有している。大会が行われた9月下旬は、北海道が生産量日本一であるジャガイモの収穫が始まった時期であり、荷台に“新じゃが”を満載したトラックが道路を行き交っていた。また、ジャガイモに限らず実りの秋を迎え、多くの山の幸、そして海の幸が美味しい季節でもあることから、出場選手やチームスタッフも十勝の味覚を満喫していたようだ。

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十勝地方を代表するグルメといえば、いまや全国区の知名度を誇るようになった豚丼。開拓期から豚肉は貴重な食料とされており、カレーライスやしゃぶしゃぶにも使われる独自の豚肉食文化が育まれてきた。
いまでは帯広市内をはじめ、十勝管内の各町村にも豚丼を一押しのメニューとする店が多く、専門店のみならず町の食堂などでも定番メニューとなっている。また、家庭料理としても地元では頻繁に食卓に出てくる一品で、スーパーマーケットでは豚丼用と謳われるスライス肉が売られ、専用のタレも商品棚には並んでいる。

今回もRALLY HOKKAIDOでは特製ラベル仕様の豚丼のタレが上位入賞選手に副賞として贈られた。また、豚丼をピーアールするマスコットキャラクターの「ぶたどんまん」が北愛国のサービスパークに登場、子供たちなどから大きな人気を集めて記念写真におさまっていた。

TECHNICAL INFORMATION

国内では群を抜くスケールの大きさ、そして北海道らしいハイスピードなステージが特徴のRALLY HOKKAIDO。しかしステージはそれぞれ特徴的な道であり、基本は締まったグラベル路だが、リピートして掘れると濡れた土や砂利が顔を出してくるところも多い。さらに今回はLEG2で一部が雨/ウェットとなり、タフな展開となった。
そんな中でヨコハマタイヤ勢は、海外のラリーで鍛え上げられたADVAN A053の優れたポテンシャルを武器に快走。JN6はトップ7を独占、4クラス中3つのクラスを制するという圧勝ぶりであった。