2014 JRC Round 3 Report

【全日本ラリー選手権 第3戦/福島県棚倉町】

雨の中でサバイバルラリーを奴田原文雄選手組が制して連勝、
ヨコハマタイヤ勢がJN2/JN1/INVクラスでも優勝を飾る!!

JRC Round 3

開催日 2014年6月6日-8日
開催場所 福島県・棚倉町 近郊
天候/路面Day1:雨/ウェット
Day2:雨/ウェット
グラベル(非舗装路面)
総走行距離 364.99km
SS総距離 62.72km (14SS)
得点係数 1.2 (非舗装路SS 50km~100km)
参加台数 52台 (INV.クラス含)
(ヨコハマタイヤ装着車 25台)
全日本ラリー選手権 第3戦

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九州、四国と転戦してきた2014年の全日本ラリー選手権は本州に舞台を移し、福島県棚倉町をホストタウンに第3戦「がんばろう!福島 MSCCラリー2014」が開催された。

内陸の棚倉町を拠点に太平洋側のいわき市も駆ける本大会は、14本のSS(スペシャルステージ)合計距離こそ62.72kmだが、リエゾン区間を含めた総走行距離は364.99kmとスケールの大きな一戦。
今年はいわき市のスパリゾートハワイアンズでDay1にリモートサービスも設けられ、選手紹介セレモニーも実施。その場にはフラガールも登場してフラダンスを披露して華を添えた。

Day1はいわき方面に3本の林道ステージが設けられた。初めて使われる「西根(5.29km)」、本大会最長ステージとなる「鶴石山リバース(11.06km)」、そして「長草萱山(6.18km)」となり、これらをリモートサービスをはさんで2ループする。その後には一日の締めくくりとしてギャラリーも見守る、サービスパーク隣接のショートステージ「ルネサンス・リバース(0.45km)」を2回走行するというアイテナリー。
二日目のDay2は棚倉町と鮫川村が舞台となり、「流・岡田リバース(4.63km)」、「東野牧野(2.81km)」というおなじみのステージを走った後、昨年まではラリーパークが設定されたリエゾンルートの一部だった鹿角平観光牧場内の道を使う「鹿角平(0.94km)」という3つのステージを2ループする。
このうち、西根はタイトターンが連続する上に赤土土壌でスリッピーというタフなステージ。鹿角平は距離こそ短いものの全てが舗装路面、ほかのステージでも一部に舗装区間が混ざることから、タイヤ選択と最大12本という使用本数制限の中での使い方も難しい一戦となった。

週末にかけて関東などは豪雨となったが、福島県地方も結果的に土曜・日曜ともに雨模様となり、オールウェットコンディションに。そんな中で特にオープニングの「西根」はスリッピーな路面であり、リピートの2回目ではワダチが掘れることも予想されたため、スタート時点でのタイヤ選択に各選手は悩む。ヨコハマタイヤ勢はスタートで奴田原文雄選手/佐藤忠宜選手組や新井敏弘選手/竹下紀子選手組がADVAN A053を4輪装着したのに対して、炭山裕矢選手/保井隆宏選手組はフロントにADVAN A031、リアにADVANA 053を装着。大嶋治夫選手/井手上達也選手組は4輪にADVAN A031を装着するというかたちに判断がわかれた。

注目のSS1、ここでベストタイムを奪ったのは奴田原選手組。2番手で炭山選手組、3番手は新井選手組と続き、ヨコハマタイヤ勢がトップ3を独占して大会は幕を開けた。
続くロングステージのSS2では奴田原選手組が再びベストを奪うが、ランキング2位の勝田範彦選手組に対しては11.9秒とキロ1秒ほどの差をつける速さを見せた。この勢いは留まることなく、SS3も奴田原選手組が3連続ステージベストでセクション1を完全制覇、新井選手組が2番手で続いて、タフな路面でヨコハマタイヤ勢が快走を続ける展開となる。

スパリゾートハワイアンズでのリモートサービス、ここで新井選手組はフロントにADVAN A031を装着。炭山選手組はSS1を走り終えてフロントタイヤをADVAN A053に交換、SS2とSS3を走ってサービスで再びフロントにADVAN A031を装着する。奴田原選手組はADVAN 053の4本使いを継続して、各車はセクション2へと臨む。

2回目の走行となる「西根」。雨足がさきほどより強まったこともあり、ここで一気にチャージしてきたのが新井敏弘選手組。奴田原選手組を6.8秒上回るステージベストを叩き出して一気にSS3を終えて11.1秒あった差を4.3秒にまで縮めてきた。さらにSS5でも連続ベストで奴田原選手組を3.5秒かわしてトップに躍り出る。
この時点で3位の勝田選手組と2位の奴田原選手組の差は20.6秒に開いており、前戦の久万高原と同様にヨコハマタイヤ勢が優勝争いの主役となる流れに。ところがSS6をスタートして最初のコーナーで新井選手組はミッショントラブルに襲われ、デイ離脱を余儀なくされてしまった。

一方の奴田原選手組はSS6で4回目のステージベストをマーク、勝田選手組との差をさらに5秒広げる。ショートステージのルネサンスは1走目で炭山裕矢選手と0.1秒差の2番手、2走目ではベストを奪って、Day1をトップであがって満点デイポイントを獲得した。

一夜明けた福島県は相変わらずの雨模様、Day2は16.76kmと残り距離は短いものの、初日だけで全体の半数以上がリタイアしているだけに、最後まで気を抜けない戦いが続く。
奴田原選手組と勝田選手組の差は27.4秒と大きく、このマージンを大切にして逃げきりに成功した奴田原選手組が、久万高原に続いてグラベル二連勝、福島を二年連続で制してランキング争いでもポイント差を広げることに成功した。
また、マシンが修復された新井選手組はDay2で6本中4本のステージベストを奪って速さを見せ、Day2の満点デイポイントを獲得した。


JN5クラスは、鎌田卓麻選手/市野諮選手組のスバルBRZと石田雅之選手/遠山裕美子選手組のトヨタ86が、ともにDay1でドライブシャフトのトラブルに見舞われてしまい、無念のデイ離脱となった。
しかし両者ともにマシンを修復して臨んだDay2で快走を見せ、鎌田選手組がDay2のトップ、石田選手組が2番手でデイポイントを獲得し、速さを見せた。


JN3クラスでは、デミオで参戦する唐釜真一郎選手/松浦俊朗選手組が力走。Day1を終えて11台中6台が戦列から消えた中、しっかり2番手で折り返す。Day2に入っても堅実な走りでポジションをキープ、最終SSを走りきってあとはフィニッシュまでマシンを運べば表彰台というところまで来たが好事魔多し。駆動系トラブルに襲われてサービスパークまで戻ることができず、無念のリタイアを喫してしまった。


JN2クラスとJN1クラスは、ヨコハマタイヤ装着車がライバルとの一騎討ちを展開。
JN2は初日を2番手で終えた田中伸幸選手/藤田めぐみ選手が2日目で猛チャージ、6.7秒差あったが「東野牧野」で2本ともに高橋悟志選手組をおよそ10秒下し、見事な逆転劇で2連勝を飾った。
JN1は前戦で無念のリタイアを喫した中西昌人選手/美野友紀選手組が、その借りを返す戦いを演じた。初日で1分近い大差をつけると、二日目は大量マージンを背景にそのままフィニッシュまでマシンを運んで、今季初優勝を飾ることに成功した。

DRIVER VOICE

奴田原文雄 選手 [ADVAN-PIAA ランサー]

【今回の成績 : JN6クラス 優勝】
雨の影響もあって大変なコンディションの一戦になりました。特に、いわき市側のステージは滑りやすい路面だったのですが、ADVAN A053が色々な路面でのマッチングがよく、今回はタイヤに助けられた面も大きい優勝でした。オープニングから3連続ベストで先行できましたが、自分としてはペースノートの通りに走っている結果だと思っています。初日でマージンを稼げたので2日目は無理はしていませんが、できる範囲内でデイポイントも獲りたいですから頑張ってみたのですが、流・岡田線はランサーとギア比の問題なのか相性が悪くてちょっと苦戦させられました。
結果は二連勝でランキングトップを守りつつ得点差を広げましたが、まだ3戦目でシリーズの先は長いです。一戦ごとの積み重ねが大切ですし、主催のMSCC前会長で長く私のコ・ドライバーとしてコンビを組んでいた小田切順之さんの一周忌でもあるので、勝てて良かったです。

田中伸幸 選手 [加勢eレーシング YH クスコ WM スイフト]

【今回の成績 :JN2クラス 優勝】
初日のオープニングステージから険しい道だったので、とにかく「道の上にいなければ」という思いでした。最後まで走りきって結果を残さなければならないので、セクション1は抑え気味に行ったのですが、それでもヒヤリとする場面が相当ありましたね。リタイアしてもおかしくないような場面が4回くらいあったでしょうか。
二日目も雨でしたが、コースは初日よりも気持ち的には楽にスタートできました。でも、流・岡田線は思っていた以上に凄いコンディションでしたが(笑)。舗装区間も多いので、まずダートから舗装に移る場所が滑りやすいということを頭に置いて、タイヤの限界まで攻めずにマージンを持って走りました。レッキでも抑えるべきところはしっかりチェックしていたのが功を奏しましたね。

中西昌人 選手 [YH・WM・KYB・マクゼス ストーリア]

【今回の成績 :JN1クラス 優勝】
今回は本当に疲れました(笑)。一日目はタフな道で、それは予想の範囲内でした。ただ、前戦でエンジンを壊してしまい急遽修理して来たので、フィーリングもわからない中でのスタートでした。なので最初のセクション1は、とにかく安全に走りきろうという感じで行ったのですが、予想通りに1本目と2本目で数秒負けて、3本目も同じくらいかなと思ってフィニッシュしたら10秒くらい勝っていて、そこで「この走り方で行けばいいのかな」と思いました。
セクション2はワダチも掘れてきたりグレーチングの段差でタイヤを痛めるのも怖かったので、ほぼ同じペースで走っていましたが、ライバルがタイヤを壊してこちらが優位になりました。ところがSS6を終えたらクラッチが滑り出して、ルネサンスをなんとか走ってサービスに入ったのですが、完全な修復はできなかったんです。二日目は全部が上りなので、かなりクラッチを労りながら走って辛い戦いになりましたが、なんとかフィニッシュして前戦の借りを返すことができました。

TOPICS

黄色い車でラリーに出てみたかった – 大橋逸夫 選手

本大会ではイノベーションクラスが設けられ、4台が出場した。このクラスは全日本選手権のポイントなどは与えられないものの、競技内容や走行距離は全く同じで、タフな二日間にわたるラリーが繰り広げられた。

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結果、イノベーションクラス優勝を飾ったのは、インプレッサで参戦した大橋逸夫選手/高橋巧選手組。大橋選手はSUPER GTに「グッドスマイル 初音ミク Z4」で参戦して開幕二連勝を飾っている「GOODSMILE RACING & TeamUKYO」のゼネラルマネージャーとして、サーキットでは広く知られた存在だ。
今回のラリー参戦についての経緯を、大橋選手は次のように語ってくれた。

「実は僕、昔はモータースポーツにあまり興味が無かったんですよ。ただ、WRC(FIA世界ラリー選手権)だけは好きで、好きな車というのもWRCのベースになった車種ばかりで、ずっとラリーに出たいなと思っていたんです。なかなかきっかけを掴めずにいたのですが、最近になってSUPER GTも今年は監督からゼネラルマネージャーに立場が変わって、少し落ち着いてきたのでラリーをちゃんとやろうかな、となったんです」

昨年までも、ダートトライアルコースで走りを楽しむ機会は作っていたという大橋選手。2月にBICCラリーに参戦、そして今回が満を持しての全日本選手権初参戦となった。選んだマシンはインプレッサ、その理由をお聞きしてみよう。

「もともと僕は4WDターボが全般的に好きなのですが、その中でも黄色い車が好きなんです(笑)。だから黄色い車でラリーマシンを作りたいなと思っていたのですが、ちょうど新井敏弘さんのところに黄色いインプレッサがあったので、この車を譲ってくださいと話をしたんです(笑)」

満を持しての初参戦は、完走率が初日を終えた時点で半分以下という過酷なラリーとなった。そんな中でしっかりタフなステージを走りきって優勝を飾った大橋選手。

「最初はもっと気楽に考えていたのですが、甘かったですね(笑)
今後は、次の洞爺とRally Hokkaidoに出場予定です。そして来年はAPRC(FIAアジア・パシフィック・ラリー選手権)に参戦したいですね。車種としてはミニのクロスオーバーでラリーに出てみたい、という思いもあるんですよ」

ダートトライアルコースでは、大橋選手が持っているランサーのステアリングを、谷口信輝選手や片岡龍也選手も握っているという。

「以前に僕の車で彼らがダートコースを走ったのですが、土も雪も走った事が無いというのに、あっと言う間に速くなったんですよ。ただ問題は、谷口選手も片岡選手もそうなのですが、ドリフト乗りするんですよ(笑)
一回くらい、彼らともラリーに出てみると面白いかもしれませんね」

AREA GUIDE

大会に華を添えたフラガール!!

福島県の太平洋側、浜通り地区のいわき市は漁業が盛んで、おいしい魚を楽しめる町だ。そして、この町で全国的に知られる施設が「スパリゾートハワイアンズ」。その名の通り南国、ハワイをテーマに「常磐ハワイアンセンター」として1966年に開業、1990年に現在の名称に改めた人気のスポットである。

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巨大な温水プールや温泉を核とした総合リゾートだが、南国ムード満点のショーを演じるフラガールたちも人気の的。今回のラリーでは駐車場にリモートサービスが設けられ、セクション1を走り終えた車両がサービスを受けた後に、ギャラリーを前にセレモニアル選手紹介が催されたが、ここにフラガール(写真)が出演してフラダンスを披露して大会を盛り上げてくれた。

さらに清水敏男いわき市長も来場、奴田原選手組らをフラッグで送り出してくれた。
清水市長は「いわき市は3年前の東日本大震災で一時は33万の人口が半分以下に減ってしまいましたが、いまは震災前の日常生活を取り戻しつつあります。今日は全国から多くの選手やギャラリーの皆さんをお招きして大会が開かれることを、本当に嬉しく思います。いわき市はスパリゾートハワイアンズをはじめ、日本でも有数の港である小名浜港があり、そこにはアクアマリンふくしまという水族館もあります。温泉もありますし、美味しい海の幸、山の幸もありますから、いわき市を楽しんでいただければ幸いです」と挨拶、全日本ラリーの開催を心から歓迎してくれた。

TECHNICAL INFORMATION

二日間とも雨に祟られた大会だったが、初日はタイヤ選択がわかれる展開となった。これは使っている車種や選手の好みによるところだが、結果としてはADVAN A053、ADVAN 031ともにポテンシャルを発揮し、A053は対応領域の幅広さ、A031は特にコンディションの厳しい箇所で威力を見せた。
Day1でマシントラブルにより新井選手組はデイ離脱してしまったが、前戦の久万高原に続いてヨコハマタイヤ勢が優勝争いの主役となったことは、その走りを支えるタイヤの優れた性能を改めて実証したと言える。また、JN5クラスについてはトラブルで有力選手が初日に戦線離脱する残念な展開となったが、Day2では圧倒的な速さを見せてデイポイントのワン・ツーを獲ったことも注目すべきポイントだろう。