2014 J-F3 Round 14&15 Report

【全日本F3選手権 第14戦&第15戦/富士】

世界選手権併催の大舞台となったシリーズ最終戦、
選手権タイトル争いは松下信治選手、F3-Nクラスは小泉洋史選手が王座獲得!!

Japanese F3 Round 14&15

開催日 2014年10月11日-12日
開催場所 富士スピードウェイ (静岡県)
天候 第14戦:晴れ
第15戦:晴れ
路面 第14戦:ドライ
第15戦:ドライ
決勝周回数 第14戦:21周
第15戦:14周
(1周=4,563m)
参加台数 17台
2014 全日本F3選手権 第14&15戦

第14戦は、山下/勝田両選手のブレーキング競争で幕開け。

勝田選手は佐々木選手に詰め寄られたが、辛くも1000分の7秒差で逃げきり。

最終戦を待たずして王座を決めた松下信治選手。

第14戦のF3-Nクラスを制した小泉洋史選手が王座獲得。

シリーズ最終戦は好スタートの佐々木選手がレースをリード。

最終戦を優勝で締めくくった佐々木大樹選手。

全日本F3選手権も、いよいよこれが今季ラストステージ。WEC(FIA世界耐久選手権)と併催になるシリーズ第14戦、第15戦が10月11〜12日に富士スピードウェイで開催された。大型の台風19号の接近で天候の悪化が危ぶまれたものの、結論から言うと日曜日までしっかりドライコンディションは保たれることとなった。

金曜日に行われた専有走行の1回目こそ、トップタイムですら1分36秒台と低調なレベルに留まったものの、WECのパワフルな車両が走って路面にラバーが乗るようになると、コンディションは向上して2回目には35秒台へ到達。まずターゲットとなる1分35秒307をマークしてトップにつけたのは、まだチャンピオンの権利を残す高星明誠選手だった。

土曜日になると雲もサーキット上空にかぶって気温は18度、路面温度は21度と低く、また前述のとおりラバーグリップの向上で、実際のターゲットはさらに先に。これまで予選一発の速さに苦しみ、決勝では順位を上げてくるのだが、思うような結果をなかなか残せずにいた佐々木大樹選手が覚醒。第14戦で34秒835をマークしてトップに立った勢いを、第15戦でもそのまま披露し、34秒799にまでタイムアップして連続ポールポジションを奪うことになる。
第14戦は、その佐々木に勝田貴元選手と山下健太選手、そして高星選手の順で続き、第15戦は高星選手、勝田選手、そして山下選手が、顔ぶれこそ同じながら順番を入れ替える。一方、ポイントリーダーの松下信治選手は「肩に力が入って、守りの走りになっていた」と、2戦とも5番手に甘んじてしまう。
F3-Nクラスでは、どうやらそういったプレッシャーもないようでポイントリーダーの小泉洋史選手が2戦ともトップ。唯一のストッパー久保凛太郎選手は、第14戦こそ2番手につけるも、第15戦では湯澤翔平選手を間に挟んだ3番手となってしまう。

21周で争われる決勝レース第14戦、その直前の気温は18度、路面温度は21度と予選とほとんど変わらず。そのスタートを誰より決めたのが山下選手で、これに勝田選手が続く格好に。うまくスリップストリームが使えた勝田選手は、山下選手との1コーナーでのブレーキング競争を制してトップに躍り出る。逆に佐々木選手は出遅れてしまい、3番手へと後退。トップの勝田選手は徐々に後続を引き離していく。

その一方で、前との間隔を詰めていたのが佐々木選手だった。レース折り返しで山下選手に照準を合わせたかと思うと、すぐさまチャージをかけて12周目のコカコーラコーナーでこそガードを固められるも、続く100Rで素早く逆転に成功。その勢いで今度は勝田選手との差も詰め、最終ラップには完璧にロックオンするも、コーナーでは勝田選手も隙を見せず。

そして、最後のストレートに勝負をかけ、スリップストリームから抜け出した佐々木選手ながら、横には並んだものの1000分の7秒だけ届かず。これにより、勝田選手が今季2勝目をマークすることとなった。そして、山下選手が3位につけたことから、5位でフィニッシュながら松下選手の王座獲得が最終戦を待たずして決定する。

一方、F3-Nクラスでは小泉選手がスタートでエンジンがストール。最後尾に後退するドラマからの開始となる。しかし、2周目には4番手に返り咲き、一向に諦めてはいないことを明らかに。トップに立ったのは久保選手ながら、ペースを思うように上げられず、4周目の1コーナーで湯澤選手にかわされていた。その久保選手は5周目には小泉選手の先行も許すことに。そして勢いが止まらない小泉選手は、9周目には湯澤選手をもかわしてトップに返り咲く。残りの周回はチャンピオン獲得の凱旋ラップとすることとなった。

日曜日の早朝8時からスタートの、決勝レース第15戦は15周での争いとなった。気温は13度、路面温度は16度とかなり低い中、フォーメーションラップでは普段以上、入念にタイヤのウォームアップが行われる。
今度こそスタートを決めた佐々木選手がトップで1コーナーに飛び込み、これに続いたのは山下選手と松下選手。中盤までは等間隔で3台は続いていたが、タイヤマネージメントのうまさに定評のある佐々木選手は徐々に差を広げていき、ラスト3周となる13周目にはファステストラップも記録。ポイントフルマークで2勝目をマークした。すでにチャンピオンを決めている松下選手は山下選手を抜くことは許されなかったが、きっちり表彰台に上がってシリーズを締めくくることとなった。

F3-Nクラスでは、またも小泉選手が追い上げるレースとなったが、しっかりトップでチェッカーを受け、8勝目をマーク。まさに有終の美を飾っていた。
そつなくスタートを決めた小泉選手だったが、1コーナーで久保選手の大外刈りを食らって2番手に。1周目だけで1秒以上の差をつけた久保選手ながら、その差をじわりじわりと詰めていった小泉選手。そして8周目にスリップストリームから抜け出し、1コーナーで久保選手の前に出ることに成功。その後、久保選手と湯澤選手のバトルが激しくなったばかりか、13周目の2コーナーで接触して揃ってリタイアを喫したこともあり、最後は大差もつけていた。2位は山口大陸選手が、そして3位は三浦愛選手が獲得。

DRIVER VOICE

勝田貴元 選手 [PETRONAS TEAM TOM’S]

【今回の成績 : 第14戦 優勝 / 第15戦 4位】
クルマの状態は良かったので、スタートさえ決めればと思っていて、第14戦では出だしは普通だったのですが、後ろの山下選手のスタートがすごく良くて、僕はスリップストリームを使うことができたばかりか、ブレーキング競争のあと外からまくれてトップにも立つことができました。ミスしないよう、そしてタイやいたわりつつ走っていたのですが、だんだん摩耗も進んできて、それで最後、佐々木選手に詰められて……。
なんとしても前には出したくなかったんで、1000分の7秒差とはいえ、逃げ切れて良かったです。ぎりぎりだったので、ほんの少しだけ運に恵まれたかもしれません。第15戦は残念な結果に終わってしまいました。

佐々木大樹 選手 [B-MAX Racing Team]

【今回の成績 : 第14戦 2位 / 第15戦 優勝】
ここまでドライビングテクニックでは負けていないつもりだったのですが、どうにも予選の一発が出なくて。F3はなかなか抜けないカテゴリーですから、後半の速さは認めてもらっていましたが、それで今まで決勝で苦戦していたのです。
今回はWポールで予選の速さも見せられたし、第14戦でもスタートで出遅れて勝てませんでしたが、いいレースはできました。この時、すごく悔しかったので第15戦ではなんとしてもスタートを決めてトップに立ったら、絶対にぶっちぎってやろうと思っていて。序盤ちょっと厳しいかなと思ったんですが、スリップストリーム圏外にしてからは、徐々に離れていってくれたので、本当に集中できていいレースができました。最後のレースで速さを見せられて、1年の集大成になりました。

小泉洋史 選手 [HANASHIMA RACING]

【今回の成績 : 第14戦 9位(F3-Nクラス 優勝) / 第15戦 10位(F3-Nクラス 優勝)
 (F3-Nクラス シリーズチャンピオン確定)】
今季最後の戦いですからね、とにかく悔いが残るようなことだけは避けようと思っていました。第14戦ではエンジンストールして最後尾まで落ちてしまいましたが、落ち着いていけば一台、一台と抜いていけるだろうと。久保くんとはそれまでいろいろありましたが、クリーンなバトルでしっかり抜くことができました。
チャンピオンも決まって、第15戦にはリラックスして臨めたのですが、またスタートで順位を落としてしまって。ただ、お互いの速いところ、遅いところが数周したら分かったので、どこで何周目にトップを抜くかイメージして、そのとおりになったので、シーズンのいい締めくくりとなったと思います。最後は後ろのバトルが激しくなったので、結果的にかなり楽な状態でゴールにたどり着くこともできました。

FEATURED DRIVER

■タイトル獲得で期待される更なる飛躍!! -松下信治選手/小泉洋史選手-

最終戦を待たずして、HFDP RACINGの松下信治選手が、そしてF3-NクラスでもHANASHIMA RACINGの小泉洋史選手がチャンピオンを獲得したのは、本文でも紹介したとおり。ともにシーズンを通じて速さ、強さを見せたドライバーであるだけに、栄冠を手にしたのは誰もが納得するところではないだろうか。ただし、そういった成績では共通するふたりだが、キャリアに関しては実は正反対でもある。

[Photo]

松下選手がカートレースからキャリアを開始し、その後はフォーミュラ一筋。ホンダのスカラシップという英才教育を受けるドライバーなのに対し、小泉選手はワンメイクレースからスタートし、その後はスーパーGTのGT300クラスに。併せて3年、F3にはスポット参戦の後、2012年からF3に絞ってフル参戦を果たした、ある意味ジェントルマンドライバーであるからだ。もともとの才能を、2年間さらに研ぎすませて松下選手がチャンピオンとなったのに対し、小泉選手は3年間しっかり努力を重ねて、自分を進化させてきたドライバーだとも言える。何しろGT300では出場していたチームの体制もあるだろうが、トップを争うどころか入賞もやっとであったからだ。

そんなふたりのチャンピオン獲得の声を紹介したい。まずは松下選手。
「本心からチームやホンダさん、そして田中弘監督、金石勝智オーナーに『ありがとうございました!』と、いちばん言いたいです。
今シーズンはずっといい流れで来て、本当にタイトルは狙っていたので、獲得できて本当に嬉しく思っています。ただ、今週は少し課題も残し、予選と第14戦では守りに入ってしまい、走りが小さくまとまってしまいました。その点、第15戦ではリラックスできて、F3の2年間でいちばんいいスタートが切れたのではないかと。これで勝てたらなお最高だったし、攻めてもうひとつ順位を上げられれば良かったのですが、チャンスもあったのに未熟な判断で、それができなかったのが少し悔やまれます。
来年以降のことは未定ですが、目標はF1ドライバーなので、それにつながるステップを踏めたらいいな、と思っています」

続いて小泉選手。
「今年はフル参戦3年目で、合同テストから良かったんですが、それは毎年のことで。というのも、若いドライバーは速くなるスピードが早いのでね。あっという間に追いつかれ、離されてしまう展開が過去2年は続いていたのですが、今年はいい状態を最後まで保つことができました。
今はF3-Nクラスに全日本のタイトルはかかっていませんが、そうであろうとなかろうとF3のタイトルというのは、過去に名だたる人たちが獲ってきたものなので、今まで『あんまり意識していません』と言い続けていましたが、本当は是が非でも獲りたいものでした。
だから、今は獲得できてすごく嬉しいですし、チームの皆さんに感謝しています。コーチの石浦(宏明)くんには『2年連続を』と言ってもらったんですが、Cクラスへの挑戦も考えていますし、昨年挑んだWECのLMP2やGTのクラスも考えています」

そんなふたりのコメントから、間違いなく来シーズンは新たなステージに挑んでいようことが想像できる。よりいっそうの活躍、そしてさらなる進化が注目される。