2014 JDC Round 7 Report

【全日本ダートトライアル選手権 第7戦/今庄】

新生・今庄でヨコハマタイヤ勢がN2/SA2/Dクラスを制覇、
SA2・荒井選手、D・谷田川選手がランキングトップに浮上!!

JDC Round 7

開催日 2014年9月7日
開催場所 オートパーク今庄
(福井県)
天候 晴れ
路面 ウェット(散水) ~ ドライ
参加台数 150台
(ヨコハマタイヤ装着車 42台)
2014 全日本ダートトライアル選手権 第7戦

N2クラス 優勝|矢本裕之選手

N2クラス3位|星盛政選手

SA2クラス優勝|荒井信介選手

SA2クラス優勝の荒井選手(右)と、準優勝のデラックスヒロキ選手(左)。

Dクラス優勝|谷田川敏幸選手

SA1クラス 2位|岡田晋吾選手

今年の全日本ダートトライアル選手権も、残すところあと2戦となった。
終盤戦を迎えたタイトル争いは、前回の第6戦でPN1クラスのチャンピオンが決定。この大会では鎌田卓麻選手がタイトル獲得に王手をかけているPN2クラスのほか、いくつかのクラスでチャンピオンが確定する可能性があり、各クラスともに白熱した戦いが繰り広げられることが予想された。
そのなかでも、シリーズトップを僅差で追うSA2クラスの荒井信介選手と、2年連続チャンピオンを狙うDクラスの谷田川敏幸選手は、この大会を制して最終戦にタイトル獲得の望みを繋ぎたいところだ。

第7戦の舞台となった福井県のオートパーク今庄は、これまでは路面が掘れやすい部分を簡易舗装するという方法で路面改修が行われていたが、今年の5月にの簡易舗装部分をすべて取り除く大幅な路面改修が行われた。
コンクリート粉などの土壌補修材は一切使用せず、土と砂利だけを混ぜてしっかりと踏み固められて作られた新たな路面は、超硬質ダート用タイヤのADVAN A036が使えるほど固く締まっているものの、かつての簡易舗装路面とはグリップ感が異なり、そのフィーリングの違いと操縦性の違いに戸惑う選手も多かった。

その新たな超硬質路面の特性を見事に捉えたのが、N2クラスの矢本裕之選手だ。
前日の夜に降った雨の影響でウェット路面からスタートした第1ヒートはADVAN A053で走り、路面が完全に乾いた第2ヒートをADVAN A036で挑んだ矢本選手は、「昨年までの路面であればコーナーの進入速度をある程度上げることができたけど、今年の路面はコーナーの進入で無理しすぎるとアンダーステアが出てしまう」と、トラクションを生かした立ち上がり重視の走りでコースを攻略し、ベストタイムを更新。このタイムはシードゼッケン組に入っても破られることはなく、自身初となる全日本優勝を果たした。
また、3位には第5戦切谷内を制した星盛政選手が入賞し、ADVAN A036を装着した選手が表彰台に並んだ。

SA2クラスでは、超硬質ダート路面を得意とする荒井信介選手が本領を発揮した。
SA2クラスが第2ヒートを走行する頃には、コースのブレーキングポイントを中心に固く締まった路面の表土が剥がれはじめ、それがレコードライン上に堆積するという難しい路面コンディションとなったが、その路面変化をしっかりと見極めて狙い通りにベストタイムを更新。第6戦に続く2連勝を飾り、シリーズポイントでも逆転トップに立ち、最終戦を迎えることとなった。
また、今庄を得意とするデラックスヒロキ選手が2位に入賞し、ADVAN A036装着車が表彰台のトップ2を独占した。

圧巻だったのが、Dクラスの谷田川敏幸選手だ。
今季は2勝を挙げながらも、リタイアなどでポイントを獲得できなかったラウンドがあるため、シリーズ3位に留まっていた谷田川選手にとっては、この第7戦が正念場となる。ここで優勝を獲得できなければ、2年連続のチャンピオンへの望みが絶たれてしまうという崖っぷちに立たされている。
第1ヒートのトップタイムを奪った谷田川選手は、勝負どころとなった第2ヒートもダイナミックな4輪ドリフトでコーナーを攻めながらも、フロントタイヤはレコードラインを決して外さない繊細なマシンコントロールで自己タイムを更新。オーバーオールベストを奪うタイムでDクラスを制した。この優勝で、Dクラスのシリーズトップに浮上。起死回生の走りで、最終戦にチャンピオン獲得の望みを繋げた。

また、PN2クラスでは佐藤秀昭選手が3位、SA1クラスでは昨年のチャンピオン岡田晋吾選手が2位、SC1クラスでは福山重義選手が入賞するなど、各クラスでヨコハマタイヤを装着する選手が活躍を見せた。
一方、タイトルに王手をかけていたPN2クラスの鎌田卓麻選手は、「ADVAN A036かA053のどちらを装着するか迷い、結果的にはA053で走ったのですが、路面はA036の路面でしたね」と、タイヤ選択に悩み6位という結果に。タイトル確定は最終戦に持ち越しとなった。

DRIVER VOICE

矢本裕之 選手 [ADVAN 河童北浦運送 ランサー]

【今回の成績 : N2クラス 優勝】
第2ヒートは、コーナーの進入ラインで路面の硬い表土が剥がれ、その削れた土の固まりが路面を覆っている状態でした。そのため、予想以上にステアリングを切る初期のアンダーステアが強く出てしまう状態だったので、コーナーの進入で積極的にクルマの向きを変え、コーナーの立ち上がりでのトラクションを重視する走りに切り替えました。
ADVAN A036の高いトラクション性能を生かすことができたと思います。結果的に優勝することができて、本当にうれしいです。

荒井信介 選手 [クスコ アドバン itzz ランサー]

【今回の成績 : SA2クラス 優勝】
第1ヒートは、まだコースにウェット路面が残っている状態でしたが、第2ヒートは完全に乾いていて走りやすい状態でしたね。狙いどおりの走りができたと思います。
周りからは「究極のグリップ走行」などと言われていますが、実は自分自身では結構スライドさせながら走っているつもりです。ただし、2輪だけスライドさせるのか、それとも4輪ともスライドさせるのかという違いはありますけれど。おそらくフロントが流れている時に、その動きに合わせてリヤも流している状態が、グリップしているように見えるのでしょうね。今回の路面はフロントがアンダー傾向に流れるので、その動きにリヤも合わせて流すというような走り方がベストでした。

谷田川敏幸 選手 [ADVAN トラスト インプレッサ]

【今回の成績 : Dクラス 優勝】
第2ヒートは、路面状況を見て絶対ベストタイムを更新できると確信していました。本当に良い路面だと思います。タイヤのグリップ力が高く、特にリヤタイヤのグリップ力が上がるので、必然的にフロントタイヤはアンダー傾向になる路面でした。そのため、サイドブレーキを引くなどして無理にテールスライドを誘発するのではなく、フロントのアンダーに対しリヤの動きをコントロールして、トラクションを生かす方向の走りに徹しました。
これでなんとか最終戦まで希望を繋げることができました。最終戦も全力で優勝を狙います。

デラックスヒロキ 選手 [ADVAN itzz 米山 ランサー]

【今回の成績 : SA2クラス 2位】
以前、JAFカップでは2位に入賞したことがありますが、全日本では自己最上位です。
N2クラスの矢本(裕之)さんからアドバイスをもらったり、同じチームで若手の小泉(敏志)くんから「コーナーの進入でアンダーが出ますから、そこだけ気をつけていつもどおりに走ってください」と助言されたことが自信になり、2位入賞に繋がったと思います。仲間に感謝したいですね。

岡田晋吾 選手 [ADVAN KYB J&S シビック]

【今回の成績 : SA1クラス 2位】
中間まではベストタイムだったのですが、ゴール前の島回り区間で欲張りすぎてサイドブレーキを使わずに回ろうとしたのが敗因です。アンダーステアが出ることは分かっていたのですが、うまく対処しきれませんでした。
今年はスポット参戦でタイトル争いに絡むことはできていませんが、ADVAN A036のグリップ力が高かっただけに、優勝を逃した悔しさは強いです。

佐藤秀昭 選手 [KYB ADVAN オクヤマ 86]

【今回の成績 : PN2クラス 3位】
昨年までの簡易舗装の路面を走るような走り方になってしまい、結果的にADVAN A036の特性をうまく引き出すことができませんでした。コーナーに進入する時のスピードコントロールを的確に行うことができなかったのが敗因ですね。進入スピードをもっと抑え、立ち上がり重視の走りに徹するべきでした。
これでタイトル争いからは脱落してしまいましたが、最終戦は優勝を目標にしっかり走り切りたいと思います。

星 盛政 選手 [モウルアドバンワコーズランサー]

【今回の成績 : N2クラス 3位】
自分自身の走りとしては失敗した部分が多く、今回の3位入賞はADVAN A036のグリップ力の高さのおかげだと思います。新しい路面は、思いのほかグリップするなと思った反面、意外に滑る路面もあったと思います。見た目ではなかなか判断が付かず、そこが一番難しかったですね。結果的にサイドブレーキでクルマを曲げ、立ち上がりのトラクションを重視した走り方に徹しました。

福山重義 選手 [アドバン K-1 インテグラ SG]

【今回の成績 : SC1クラス 3位】
ADVAN A036が合う路面でしたが、ドライバーが最後の島回りで失敗してしまいました。第2ヒートは第1ヒートよりも硬質路面になったので、コーナーの進入スピードでタイムを稼ぐよりも立ち上がりを重視した走りで攻めようと思っていたのですが、最後の最後にコーナーの進入で踏みすぎてしまいました。最後の島回りの区間だけ、路面が柔らかいことにも、もっと早く気付くべきでした。

FEATURED DRIVER

■SA2クラス : 小泉敏志 選手

昨年まで、JAF近畿ダートトライアル選手権は年に1回だけオートパーク今庄を使用していたが、今年は年3回の開催に増えている。そのオートパーク今庄で鍛えられている若手ドライバーが、京都に在住する小泉敏志選手だ。

19歳からダートトライアルを始め、昨年にJAF近畿ダートトライアル選手権でS2クラスチャンピオンを獲得。5年目になる今年から全日本のSA2クラスに参戦している小泉選手は、「オートパーク今庄は練習でもよく走るコースなのですが、やはり全日本は路面が全然違いますね。地方選手権で経験する路面よりもはるかに硬質だし、今庄以外のコースもハイスピードで硬質路面が多い。今は、そういったコースでしっかりとタイムを出せるように勉強中です」と奮闘している。

今年から全日本に挑戦するようになった経緯は、父の存在が影響しているという。
かつてラリーやダートトライアルで活躍した故・小泉秀明氏を父に持つ小泉選手は、「父が亡くなる前は、走りで褒めてもらえたことがあまりなく、逆に勝った時に褒めてもらえるのがうれしくてダートラを続けてきました。一昨年に父が亡くなり、改めて父の存在の大きさに気付き、しっかりと目標を持って走ることができるようになりました」という小泉選手。
その思いが昨年の近畿選手権チャンピオンにつながり、今年からの全日本参戦に踏み切るきっかけになったという。

その全日本では、これまで10位が自己最上位だ。
「まずはポイントを獲ることが目標でした。だから、第4戦門前で10位に入賞した時は、本当にうれしかったです。次の目標は、シングル(9位以内)に入ること。甘くはない世界ですが、少しずつ目標に近付いていきたいと思います」

SA2クラスでは最若手となる23歳の小泉選手のチャレンジは、一歩ずつ確実に前に進んでいる。これからの活躍に期待だ。

TECHNICAL INFORMATION

オートパーク今庄の新しい路面は、以前と同じく硬質路面に分類されるが、昨年までの簡易舗装された路面とはまったく異なる路面となった。土と砂利で構成された良質なダート路面だが、雨や散水による影響は以前よりも大きく、特に第1ヒートは前日の深夜に降った雨の影響が後半のクラスまで残った。

また、今回はヒート間の散水に加えN2クラス走行前とSC1クラス走行前にも散水が行われ、ゼッケンによってはタイヤ選択が難しい状況となった。さらにドライ路面となった第2ヒートは路面が削れる区間もあり、ステアリングの初期応答性に影響が出るクラスもあったが、そういった状況変化にもADVAN A036がしっかりと対応し、勝利に貢献することができた。