2014 SUPER GT Round 7 Report

【SUPER GT 第7戦/チャン(タイ)】

初開催のタイラウンドで「D’station ADVAN GT-R」が2位を獲得、
GT300ではヨコハマタイヤ勢が2戦連続で表彰台を独占する活躍を見せた!!

SUPER GT Round 7

開催日 2014年10月4日-5日
開催場所 チャン・インターナショナル・サーキット (タイ)
天候 晴れ
路面 ドライ
決勝周回数 66周
(1周=4,554m)
参加台数 37台
(ヨコハマタイヤ装着車 18台)
2014 SUPER GT 第7戦

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昨年まで開催されていたマレーシアに代わり、今季シリーズ唯一の海外ラウンドの舞台となったタイ・チャンインターナショナルサーキットでの「BURIRAM UNITED SUPER GT RACE」が、10月4~5日に行われた。

1周4.554kmの新設されたこのサーキットは、比較的フラットながらも長いストレートとテクニカルなインフィールドがミックスされたレイアウトで、路面のμはそれほど高くはないキャラクター。各タイヤメーカーともに実戦データのない初開催とあって、ヨコハマタイヤユーザーの活躍が期待された。

土曜日の午後に行われた公式予選、GT300のヨコハマタイヤ勢は8台がQ1を突破。続いて行われたQ2では「B-MAX NDDP GT-R」のルーカス・オルドネス選手が1分34秒268で2番手につけ、これがヨコハマタイヤユーザーの最上位に。3番手にはヨルグ・ミューラー選手の「Studie BMW Z4」がつけることとなった。

一方GT500ではQ1で「D’station ADVAN GT-R」のミハエル・クルム選手が1分24秒926で暫定ポールを奪った他、「WedsSport ADVAN RC F」も関口雄飛選手のアタックで7番手と、2台そろってQ2へ進出を果たすと、Q2では佐々木大樹選手が1分24秒739で2番手に食い込みフロントロウを獲得。「WedsSport ADVAN RC F」は脇阪寿一選手のアタックで8番手となった。

やや薄曇りとなった日曜。気温34℃、路面温度52℃となる中、午後3時に迎えた66周の決勝スタートでは、ポールシッターの「S Road MOLA GT-R」が好スタートも、「D’station ADVAN GT-R」のクルム選手が食らいつき、徐々に後続を引き離しつつマッチレースを展開していく。一方「WedsSport ADVAN RC F」も関口選手がNSX勢と激しい接近戦を展開しながら5~6番手を争う。

ところが、快調にトップを追走していた「D’station ADVAN GT-R」は、31周目に突然シフトトラブルが発生。なんとか症状は改善されたものの、クルム選手はスロー走行を強いられ4番手に後退。そして32周終了時にピットインし4輪を交換、佐々木選手に交代する。一方「WedsSport ADVAN RC F」は34周目まで走行を続け、4番手までポジションを上げてピットへ。こちらも4輪を交換し脇阪選手へとバトンをつなぐこととなった。

ピットインによって一時的にポジションを下げた2台のヨコハマタイヤユーザーだが、「D’station ADVAN GT-R」は「MOTUL AUTECH GT-R」を39周目にパスすると、全車がピット作業を終えた41周目には5番手に。前方にはタイヤ無交換作戦で先行したマシンがいたものの、じりじりとポジションを上げた佐々木選手は52周目に3番手に浮上。この時点で7秒以上あった2番手の「KeePer TOM’S RC F」とのギャップを7周で0.5秒とした「D’station ADVAN GT-R」は、60周目のT3でついに2番手に。

ファステストラップとなる1分25秒441をマークしながら追い上げた佐々木選手は、惜しくも優勝は「PETRONAS TOM’S RC F」に譲ったものの、見事2位でチェッカー。今季ヨコハマタイヤユーザーでGT500初となる表彰台を獲得することとなった。
一方「WedsSport ADVAN RC F」も「ウイダー モデューロ NSX CONCEPT-GT」を脇阪選手が追走。これを捕らえることは出来なかったが、6位でのチェッカーを受けた。

GT300では予選トップで地元タイからのスポット参戦となった他社製タイヤを装着するポルシェが圧倒的なストレートスピードを武器にスタートから逃げ続けるも、スティント後半にはタイヤが音を上げることに。最大11秒にまで広がった差を、2番手をキープし続けた「B-MAX NDDP GT-R」の星野選手が徐々に詰めていく。5秒を切ったところでトップはピットに入ったこともあり、星野選手がトップに浮上。30周目にオルドネス選手へとバトンを託した。

全車がタイヤ交換を終えると、「B-MAX NDDP GT-R」は再び2番手に。すると48周目、トップの「iMOBILE AASポルシェ」がタイヤバーストから緊急ピットイン。その結果、オルドネス選手は労せずにしてトップに躍り出ることとなった。ただし、そのまま逃げ続けることは許されず、背後に「Studie BMW Z4」のヨルグ・ミューラー選手が迫る。

4周目に「GAINER Rn-SPORTS SLS」に抜かれて4番手に後退も、再逆転できずにいたことから、荒選手は23周目に早めの交代を決意。これが功を奏してミューラー選手はラスト5周は「B-MAX NDDP GT-R」を射程距離におさめ、プレッシャーをかけ続けた。しかし、オルドネス選手はミスを犯さず。この2台だけが61周を走破し、コンマ6秒差で「B-MAX NDDP GT-R」が逃げ切りに成功。星野選手とオルドネス選手のコンビで初めての優勝を飾ることとなった。

また、表彰台のもう一角を争う戦いも、終盤に熾烈を極めた。5番手で片岡選手から「グッドスマイル 初音ミク Z4」のステアリングを受け継いだ谷口信輝選手は、41周目に「P.MU Exe Aston Martin」をパス。続いて「TWS LM corsa BMW Z4」の飯田章選手にも迫っていく。前回のウィナーであり、同じクルマが相手とあって攻略に手こずった谷口選手ではあったが、「TWS LM corsa BMW Z4」はブレーキが消耗しており、谷口選手が56周目にようやく前に出て、そのまま3位でフィニッシュ。ヨコハマタイヤ勢が2戦連続、今季3回目となるGT300クラス表彰台独占を果たした。
この結果、「Studie BMW Z4」が「GAINER DIXCEL SLS」と同点のランキング2位タイに浮上。「グッドスマイル 初音ミク Z4」はこの2台に9ポイントの差をつけて、ランキングトップで残る最終戦に挑むことに。タイトル争いは三つ巴の最終決戦となる。

DRIVER VOICE

ミハエル・クルム 選手 [D’station ADVAN GT-R]

【今回の成績 : GT500クラス 2位】
これが僕にとってヨコハマタイヤでの初めての表彰台になりますが、2年近く掛かってしまいましたね。僕のスティントでは最初本山選手とのバトルが楽しかったですね。しかし、終盤にポジションを落としたのは、シフトトラブルが発生したためです。あれで17~8秒失ってしまったので、それを思えば完全に優勝出来ていたかもしれません。しかし、あのトラブルがなんとか回復出来たからこそ完走することが出来たのですが、あのトラブルが出た瞬間に優勝出来ないであろうことは分かっていました。表彰台は嬉しいですが、勝ちたかっただけに悔しい気持ちもありますね。

佐々木大樹 選手 [D’station ADVAN GT-R]

【今回の成績 : GT500クラス 2位】
終わってみれば、今週の僕は2番手ばかり。“2位の男”だったということかもしれませんね。途中のトラブルがなければ、本当にぶっちぎっていたレースだったと思いますが、僕のスティント中もシフトが落ちづらい症状はあったものの、致命的なことにはなりませんでした。再発してもおかしくはなかったと思いますが、そこは多少運があったかなと思います。
最終的に無交換のクルマに先行されてしまいましたが、トラブルがなければ無交換作戦を採ったクルマよりも前にいたわけですから、作戦としては間違っていなかったと思います。本当にトラブルがなければ盤石のレースができたはずです。もてぎでもまたこういうレースが出来るよう、チームとヨコハマタイヤといっしょに頑張りたいと思います。

脇阪寿一 選手 [WedsSport ADVAN RC F]

【今回の成績 : GT500クラス 6位】
今年の中で一番のレースをさせてもらいました。若干他のクルマよりも前車についたときにダウンフォースの抜ける量が多かったようには思いますが、今回戦えるクルマとタイヤを準備してくれたチームとヨコハマには感謝しています。
前半で関口選手が非常に良いペースで周回していたのですが、僕としてはタイム的に自分の想像を超えた領域でしたし、あのポジションを守れるかという緊張もありましたが、結果として決勝中にも関わらず、ふがいなかった僕の予選よりもアクセル開度が向上していたということで、久々に攻めるレースが出来たと思います。今回見えた部分を活かし、さらにクルマとタイヤを良くして行きたいですね。

関口雄飛 選手 [WedsSport ADVAN RC F]

【今回の成績 : GT500クラス 6位】
クルマもタイヤも含めて、トータルのパッケージとして今季一番良い状態だったと思います。初めてちゃんとレースが出来たかなと。周りと同様に、周回を重ねるともちろんダウンしていったのですが、争っていたライバルメーカーのタイヤユーザーよりもダウンし始めるのが遅かったので、今回のヨコハマタイヤは良かったと思います。
ただ、無交換で走り切っているチームもありますので、その部分ではヨコハマタイヤとしてもまだまだ改善出来る部分があると言えるでしょう。最終戦の金曜日にテスト走行があるようですし、ヨコハマもまた新しいスペックを準備してくれるようなので、もうワンランク上を狙えるよう期待しています。

星野一樹 選手 [S Road NDDP GT-R]

【今回の成績 : GT300クラス 優勝】
優勝できて、本当に嬉しいです。2010年からGT-Rの開発に携わり、スーパー耐久では勝てましたが、SUPER GTではずっと勝てずにいたもので……。最後の3周ぐらいから涙も出てきたほどでした。
事前の予想からGT-Rには合っているコースと思っていましたが、実際にその通りで、特にセクター1、2でギャップを作ることができました。いつものように順位を落とすこともなかったですし、ヨコハマタイヤも素晴らしかったです。おかげでギャップも作れたので、ルーカスの走りも安心して見守ることもできました。

荒 聖治 選手 [Studie BMW Z4]

【今回の成績 : GT300クラス 2位】
勝てればもっと良かったのですが、2位で表彰台に上がれて、ポイント差を縮めて日本に帰れるので、あとは最終戦を全力で勝負をかけるのみです。
僕のスティントは引っかかってしまって、タイヤは全然問題なかったのに、相手のストレートが速くて抜けなかったために早めに入りました。あれでもし自分のペースで走れていれば、また違った展開になったとも思うのですが。まだタイトルの可能性がある限りは、全力で勝負するだけですね、もてぎで!!

谷口信輝 選手 [グッドスマイル 初音ミク Z4]

【今回の成績 : GT300クラス 3位】
トップ2台は速過ぎたので全く届かなかったけれど、5番手から2台を頑張って抜いてきました。ただ、後ろから11号車や61号車といったタイトルを争うクルマも来ていたので、本当に微妙な展開でしたね。何が入れ替わってもポイントランキングは微妙になるというか。特に後ろの2台が予選で後ろに行ってくれたのは、本当に彼らに運がなかったというか、僕らに運があったというか。だから、3位とはいえ今回はベストリザルトだと思います。
もてぎではライバルは3位以上でゴールというのがプレッシャーになるでしょうし、僕らも油断はしませんが、勝つ気で行きますから。

TURNING POINT

2位表彰台を掴んだ「D’station ADVAN GT-R」、この表彰台のさらに“もう一歩先”に目指すもの

GT500のヨコハマ勢としては、2012年の第7戦以来、ちょうど2年ぶりとなる久々の表彰台を獲得した「D’station ADVAN GT-R」。もちろんこの表彰台は、昨年KONDOレーシングに移籍してきたベテラン、ミハエル・クルム選手にとってはヨコハマ陣営での2年目にしての初表彰台。もちろん、今季GT500デビューとなったルーキー・佐々木大樹選手にとってはGT500での初表彰台ということで、喜びもひとしおな一戦となった。

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「今回は誰も走ったことのないサーキットで、どのタイヤメーカーもデータがなく前もって準備が出来ない中で、ヨコハマは良い宿題をこなして来てくれたと思います。準備してくれたタイヤが、今回の路面にすごくマッチしてくれました。走り初めから速さがありましたね」とクルム選手がコメントしたように、この初開催のタイラウンドで、レースウィーク走り始めとなった木曜のフリー走行ではクルム選手が1分26秒324を刻んで2番手。翌土曜の公式練習でもユーズドタイヤでのロングラン中にも関わらず、佐々木選手が1分25秒858をマークして2番手。

そして公式予選Q1ではクルム選手が1分24秒926で暫定ポールを獲得。迎えたQ2では、佐々木選手が1分24秒739をたたき出し、惜しくもポールポジションには届かなかったものの予選2番手に。迎えた決勝では、クルム選手がスタートから激しくトップを追う最中に不運なシフトトラブルが発生してポジションを下げたものの、後半乗り継いだ佐々木選手のファステストラップを奪う追い上げもあり、無交換作戦で優勝した「PETRONAS TOM’S RC F」を1.9秒差にまで追いつめての2位表彰台となった。

「本来は無交換でも行けたのだろうと思いますが、ウチは今季トラブルもたくさんあり、結果も残せていなかった中で安全なレースもしなければならなかったので……。しかし今回ヨコハマにはありがとうと言いたいですね。本当に良い仕事をしてくれましたが、こういうパフォーマンスや経験をもっと国内のレースにもつなげて行くことが出来れば良いですね。今週末はタイヤに関するトラブルがなく、パフォーマンスが凄く良かった。色々なものを調達することが出来たように思います」とクルム選手。

一方、佐々木選手は「GT300に遭遇するタイミングですごく差が出てしまうコースだったので、そのタイミングがもう少し良ければトップの36号車に届いたかもしれません」とクルム選手同様悔しさをにじませながらも「今回、ヨコハマタイヤが本当に良いタイヤを用意してくれました。今まで苦労して来ましたが、今日のようなレースが出来たのは、本当にタイヤのお陰なので、ヨコハマタイヤには凄く感謝しています」と振り返った。

残る最終戦のもてぎでは、再び全車ノーハンデの“ガチンコ勝負”となるが、今回の2位表彰台を勝ち獲ったことで、もてぎでは2位のさらに先、優勝が現実的なターゲットとなったようだ。

ENGINEER VOICE

藤代秀一 [ヨコハマ・モータースポーツ・インターナショナル SUPER GT開発統括]

週末を通じてタイヤとしてのパフォーマンスは良かったと思いますし、決勝終盤での佐々木選手の頑張りとファステストラップ獲得は素晴らしかったと思います。色々な状況がある中で、「D’station ADVAN GT-R」が2位表彰台を獲ることが出来ましたし、勝てる可能性があったということで、「WedsSport ADVAN RC F」の6位入賞も含めて、今回の結果には満足しています。国内ではテストはしていたものの、レースに使用したことがないゴムでしたが、それがこのコースに合っていました。

初開催のタイラウンド、しかも出来たばかりのサーキットということで、タイにある弊社のテストコースのスタッフに事前に路面の調査をしてもらい、そのデータを休日返上で社内で解析した結果、この週末はある程度絞り込んだ形でタイヤ選択やセットアップを進めることが出来た、ということが大きかったと思いますが、それに加えて両チームが素早くセットアップを進めてくれたこと、そしてドライバーたちが頑張ってくれたこと。この3つがうまく融合した結果、「D’station ADVAN GT-R」は2位表彰台を獲得し、「WedsSport ADVAN RC F」も6位という結果を得ることが出来たのだと思います。

他社製タイヤユーザー同様、我々も無交換という作戦は考えていましたが、最終的にチームへのリコメンドとしてタイヤ交換をお願いしました。恐らく無交換でも戦えたとは思いますが、レースという連続ラップを走ると何が起こるか分かりませんし、そこまでリスクを冒す必要はないだろうと判断しました。

一方GT300では、先行した他社製タイヤユーザーの車両にトラブルが発生したこともあり、また表彰台を獲得することが出来ました。「S Road NDDP GT-R」がようやく速さを結果につなげてくれましたし、「Studie BMW Z4」「グッドスマイル 初音ミク Z4」が表彰台を得たことで、また前戦に続いて表彰台を独占することが出来ましたが、こちらも今回のタイヤが安定してパフォーマンスを発揮してくれた結果だと思います。

次戦は最終戦のもてぎとなりますが、今回GT500ではいい状態であの位置でレースを戦えたということで、いろいろ見つけた部分がありましたので、それをもてぎに反映させたいと思いますし、勝つためのテストの要素を盛り込むなど、いろいろなトライをしていきたいと思います。GT300に関してはもちろん、タイトルの奪還が唯一の目標になりますが、やはり多数のユーザーを抱えている以上、2年連続でタイトルを奪われるわけにはいきませんので。