2014 SUPER GT Round 5 Report

【SUPER GT 第5戦/富士】

クリスタルクロコ ランボルギーニ GT3が今季初の表彰台獲得も、
台風11号の影響を受けてまたも雨に翻弄された週末に!!

SUPER GT Round 5

開催日 2014年8月9日-10日
開催場所 富士スピードウェイ (静岡県)
天候
路面 ウェット
決勝周回数 66周
(1周=4,563m)
参加台数 39台
(ヨコハマタイヤ装着車 21台)
2014 SUPER GT 第5戦

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台風11号が接近するという難しい状況でレースウィークを迎えた8月9~10日の「FUJI GT 300km RACE」。5月に続いて今季2度目の富士スピードウェイでの開催となる今大会だが、ドライコンディションでの戦いとなった前回とは打って変わって、前戦のSUGO同様に雨がレースの行方を左右する難しい展開となった。


それでも公式予選が行われた土曜はドライコンディションが長らく保たれ、公式練習はもちろん、午後2時からの公式予選でもQ1はスリックタイヤを履いてのアタックに。
まず最初に行われたGT300の予選Q1は、いつ雨が降り出してもおかしくなかったこともあり、ほぼ全車が一斉にコースイン。最初に1分40秒を切ったのは、「Studie BMW Z4」の荒聖治選手で、これに「グッドスマイル 初音ミク Z4」の片岡龍也選手が続くも、この2台は多くのウエイトハンデを積んでいるため、その後の伸びを欠き、9番手と10番手に留まってしまう。
その結果、Q1では「シンティアム・アップル・MP4-12C」を駆る加藤寛規選手が3番手で、ヨコハマタイヤユーザーのトップ。これに「OKINAWA MSA・RUN UP GT-R」の吉田広樹選手が続き、10台のヨコハマタイヤ勢がQ2進出を果たす。

続いて行われたGT500のQ1。全車が残り8分となったところで他のライバル勢とともに、「WedsSport ADVAN RC F」は関口雄飛選手が、「D’station ADVAN GT-R」は佐々木大樹選手がコースインも、アタックを終えたGT300車両がピットへ帰還の途上、ピットロードへの導入路でストップしてしまい、セッションは赤旗に。
残り10分で仕切り直しとなったQ1で、佐々木選手は計測2周目に1分30秒103をマークして見事4番手でQ2進出を果たすも、1分30秒463を刻んだ関口選手は惜しくも9番手に留まり、上位8台に許されたQ2に駒を進めることは出来なかった。

一方、GT300のQ2で大躍進を果たしたのが、「OGT Panasonic PRIUS」の新田守男選手。
内圧をしっかり合わせ切れなかった嵯峨宏紀選手がQ1では11番手に甘んじていたものの、的確なインフォメーションが功を奏し、ヨコハマタイヤの性能を発揮できるよう完璧にアジャスト。途中から小雨が舞う厳しい状況ながら、1分38秒414を記録してセッションの終盤にトップに浮上。本来はその翌周がベストコンディションだったものの、新田選手はクリアラップに恵まれず、その時点で同タイムを出していた「SUBARU BRZ R&D SPORT」が翌周にタイムを伸ばし、「OGT Panasonic PRIUS」は2番手となった。
さらには5番手をルーカス・オルドネス選手の駆る「B-MAX NDDP GT-R」が、6番手を岩崎祐貴選手の駆る「IWASAKI apr GT-R」が獲得し、GT-Rと富士の相性の良さを証明する中、「グッドスマイル 初音ミク Z4」の谷口信輝選手がポイントリーダーとして、意地の7番手につけた。

GT500のQ2に進出した「D’station ADVAN GT-R」は、ミハエル・クルム選手がアタック。
午後3時09分にスタートしたセッションに、スリックタイヤで挑んだクルム選手だったが、セッションスタートと同時に雨が降り出したために2周目にピットインし、ウエットタイヤに履き替えて再度アタックに向かったものの、その雨が終盤に上がってしまい、急速に路面が変化するなかパフォーマンスを発揮することが出来ず、残念ながら1分42秒515の8番手で走行を終えることとなった。


早朝に西日本に台風が上陸、富士スピードウェイのある静岡県の小山町や近隣の御殿場市に大雨洪水警報が出される中、迎えた日曜。決勝は午後3時にスタート時刻を迎えたが、やはり雨が断続的に降っているということで、セーフティーカー先導によるレーススタートとなった。

3周目にセーフティカーはコースを離れたが、GT500では、8番手スタートの「D’station ADVAN GT-R」のクルム選手は序盤ポジションキープ。「WedsSport ADVAN RC F」の関口選手も9番手で追走したものの、徐々に雨量が減って行ったことでペースに苦しみ、2台は徐々にポジションダウンを強いられる。
しかし、再び雨が降り始め2台のヨコハマタイヤユーザーがペースを取り戻し始めたところで、セーフティーカーが導入されてしまう。さらに雨が強まったため、17周目にレースは赤旗中断となった。

波乱の続く展開となったが、午後4時15分にレースは再びSC先導でリスタート。この段階で「D’station ADVAN GT-R」は10番手、「WedsSport ADVAN RC F」は13番手からの挽回を狙うが、雨量が少ない状況が続き、クルム選手、関口選手ともになかなかポイント圏内に浮上することが出来ない。
それでも粘り強く走行を続けた「D’station ADVAN GT-R」は、最終的に42周目にはトップにまで浮上し、44周目にピットイン。路面が乾いて来たことで、佐々木選手をスリックタイヤで送り出す勝負に出る。
同じく3番手まで浮上してきていた「WedsSport ADVAN RC F」も、44周目にピットイン。こちらは再び雨が降り出す気配を感じてウエットタイヤで脇阪寿一選手をピットアウトさせた。

この後、一旦は「WedsSport ADVAN RC F」が先行したものの、スリックタイヤが効果を発揮し始めた50周目あたりから、佐々木選手が1分39~40秒台という、トップを上回る圧倒的なペースで周回をし始め、55周目には両者はポジションを入れ替える。
さらなる「D’station ADVAN GT-R」の上位進出に期待が掛かったものの、その後再び雨が強まりSCが導入されることとなり万事休す。そのまま走行を続けた「WedsSport ADVAN RC F」は11位、終盤レインタイヤへの換装を強いられた「D’station ADVAN GT-R」は15位でのフィニッシュとなりポイント獲得はならなかった。

GT300では、予選2番手からスタートした「OGT Panasonic PRIUS」を駆る嵯峨選手が、そのままポジションをキープし続けていたが、雨が勢いを強めると後続車両の接近を許すように。必死にガードを固めていたものの、堪え切れずに9周目、2台に相次いでかわされてしまう。そのうちの1台が「B-MAX NDDP GT-R」の星野一樹選手で、予選7番手から5ポジションアップに成功。その直後に最初のSCランが行われただけに、もう1周早ければ「OGT Panasonic PRIUS」にとって、状況もまた違っていたかもしれない。
そして、GT300では16周目に入ったところで赤旗が出されて、レースは中断される。この時点で5番手には「Studie BMW Z4」の荒選手がつけ、また「グッドスマイル 初音ミク Z4」の片岡龍也選手は、ポジションキープとなる7番手につけていた。

レース再開後、いち早く19周目にピットに戻ってきたのは、16番手を走行していた「クリスタルクロコ ランボルギーニ GT3」の細川慎弥選手だった。ここでインターミディエイトに交換するとともに、山西康司選手へバトンタッチ。この判断が吉と出るのか、凶と出るのか大いに注目された。逆にギリギリまで遅らせたのは「B-MAX NDDP GT-R」で、星野選手からオルドネス選手への交代は38周目となった。

結論から言うと、路面状態が徐々に回復していく中、ウエットタイヤで走り続けたのはリスクが大きかったようで、星野選手が2番手をキープできたのは25周目まで。4番手まで後退した後、オルドネス選手がコースに戻った時には、大きく順位を落としていた。逆に「クリスタルクロコ ランボルギーニ GT3」の山西選手は全車がドライバー交代を終えると、2番手にまでジャンプアップ。43周目に「GAINER DIXCEL SLS」の先行こそ許しはしたが、そのままポジションをキープし続け、3位でのフィニッシュに成功する。
4位は「グッドスマイル 初音ミク Z4」が獲得し、5位は飯田章選手と吉本大樹選手の駆る「TWS LM corsa BMW Z4」。6位にも「OGT Panasonic PRIUS」がつけるなど、ヨコハマタイヤユーザーは8台がポイント獲得を果たしている。

DRIVER VOICE

脇阪寿一 選手 [WedsSport ADVAN RC F]

【今回の成績 : GT500クラス 11位】
ちょっと厳しいレースでした。関口選手のスティントの途中、赤旗中断のあたりでエンジンがミスファイアを起こし始めて、その後はまともに走らなくなってしまいました。恐らく水による電気系への影響があったのだろうと思いますが、ずっと回転が上がらない状況で後半苦しかったですね。
僕のスティントではスリックに懸けようと準備していたのですが、入ってくる寸前に関口選手から雨が来ているという情報があったので、急遽少し硬めのウエットタイヤで出ました。結果として、そのタイヤもあまりうまく行かなかったのですが、戦闘力のあるマシンではなかったですしね。雨量が多い状況では悪くないのですが、雨が増えるとレースが止められてしまったので仕方ないですね。
もう少し状況に合うタイヤを開発していかないといけませんが、今回ヨコハマタイヤには色々攻めてもらった部分もありますし、結果には繋がりませんでしたがチームとして感謝しています。

関口雄飛 選手 [WedsSport ADVAN RC F]

【今回の成績 : GT500クラス 11位】
スタートしてすぐ、序盤は良かったのですが、路面の水の量が減って来てしまうと思うよう走れなくなりました。GTは参加台数が多いので、雨量が減るとすぐに水がはけてしまうんです。そういう水の少ない状況では、選んでいたタイヤがうまくマッチしなかったようですね。そのために数台にかわされてポジションを下げてしまいました。
その後雨が降り始め、またペースが良くなったのでポジションを上げたところでセーフティーカーが出て来てしまって。再開後は水が無かったので、また苦しい戦いを強いられました。戦略で盛り返そうと、ずっとスリックを履くタイミングを待っていたのですが、僕のインラップに雨が降って来たので、脇阪選手もウエットタイヤで出ることになって。
残念ながらSUGOと似たような状況で苦戦しているので、弱い部分を克服して行きたいですね。

佐々木大樹 選手 [D’station ADVAN GT-R]

【今回の成績 : GT500クラス 15位】
雨の影響で、本当に大変なレースでした。水の少ない状況にマッチしたウエットタイヤがなく、それならばスリックに懸けようというチームの判断で僕のスティントではスリックタイヤを選択しました。その判断は正しかったと思いますが、菅生と同様にウォームアップに時間が掛かり、序盤は非常に苦労しました。絶対にスピンやコースアウトが許されない中で、ギリギリのドライビングで踏みとどまり、最後には速さを見せられたので自分にとって良い経験になったと思います。
しかし、タイヤが温まるまでに失ったタイムを取り戻せるくらいの速さを終盤に発揮出来るようになったのですが、その頃からまた雨が降って来てしまって。タラレバではありますが、あのまま最後まで走れていたら、かなり上位までいけたと思います。
クルマには速さがありますが、次の1000kmという長丁場はクルマにとっても未知の領域です。それでもクルマを労りつつ、しっかり走らせる事ができれば必ずいい結果が狙えると考えています

細川慎弥 選手 [クリスタルクロコ ランボルギーニ GT3]

【今回の成績 : GT300クラス 3位】
昨日の走り出しからドライでは調子が良かったのですが、今日になってレインになったらバランスがすごく悪くて。その原因を詰めていたんですが、結果的にレースのギリギリまで直らなくて、ギャンブルじゃないんですが、それまで使っていないタイヤで行ったら全然保たなかったんです。
そのままレースしていても捨てるだけなので、チームの判断で、いち早くピットに入りなさいとなって、インターミディエイトに換えたら、それが功を奏しました。山西さんが、その後はすごくいいペースで走ってくれたので、チームと山西さんのおかげですね。

山西康司 選手 [クリスタルクロコ ランボルギーニ GT3]

【今回の成績 : GT300クラス 3位】
今回は、チームが採ってくれた作戦を信じて走ったのが良かったのかもしれません。チームとしては前回の88号車に続いて表彰台に立てたし、僕らとしては3戦連続の入賞になりました。これまでも決して僕らも悪いレースはしていなかったんですが、運とかで表彰台に上がれなかっただけで。
今回も優勝ではないですが、表彰台には上がることができたし、ベストなレースができたと思います。本当にいい巡り合わせになれば優勝もできると思いますが、そんなに甘くはないんですよね(苦笑)。

谷口信輝 選手 [グッドスマイル 初音ミク Z4]

【今回の成績 : GT300クラス 4位】
今回、台風が来てレースができるのかという状況の中、セーフティーカーや赤旗が何回かあったけれど大きな事故もなく、本当に大変なレースが無事に終わって良かったと思います。
僕らの結果は4位だったんですが、まぁまぁ満足しています。僕らとしては充分いいレースをしたと思っていますし、ピットのタイミングはまぁまぁの判断だったかな、90点ぐらいの。片岡を早くピットに入れて、僕が早くインターを履いて出て行けば3位にはなれたかもしれないけれど、それはギャンブルになるから、ここ2戦は0点だったので難しかった。ランキングも逆転されて悔しいけれど、我々としてはちゃんと仕事したという感じですね。

ENGINEER VOICE

藤代秀一 [ヨコハマ・モータースポーツ・インターナショナル SUPER GT開発統括]

前戦のSUGOを終えた後、鈴鹿テストで得られたデータを踏まえて、時間的に厳しい中で投入出来るものをということで、GT500のドライ用は今回の富士には構造の面で新しいものを盛り込みました。コーナリングフォースをより稼げるような方向性のものです。GT300は基本的に菅生大会と同じタイヤを持ち込みました。

しかしながら、台風の影響で雨が断続的に降るという難しい状況の中での戦いとなり、決勝では「WedsSport ADVAN RC F」も、「D’station ADVAN GT-R」もウエットのハードタイヤでスタートしました。その後、雨量の少なかった2ndスティントでは、「WedsSport ADVAN RC F」はウエットのスーパーハードで、「D’station ADVAN GT-R」はスリックで走ることになりました。終盤、佐々木大樹選手が速さを見せ始めたのですが、その矢先にまた雨が降り始めてしまい、残念ながら結果に結びつけられませんでした。

前回のSUGOと似たようなコンディションもありましたが、やはりちょい濡れの状況ではスリックでもウエットでもパフォーマンスが足りない部分があり、苦戦を強いられました。持ち込んでいるタイヤのカバーする範囲に少し手薄な部分があるというようなイメージですが、GT500ではそれが顕著なのですが、GT300でも同様の状況があります。そのために、今回の決勝では「クリスタルクロコ ランボルギーニ GT3」が表彰台を獲得してくれたものの、1-2位を他社製タイヤユーザーに奪われた原因だと捉えています。

そのあたりの課題を次の鈴鹿1000kmはもちろん、終盤戦に向けて解決出来るよう新しいものを投入して行く予定です。