近藤 真彦「ゴールが始まり」前編

近藤 真彦「ゴールが始まり」前編

      

以前にこのThe Man of A40に登場してもらった近藤真彦に、今回は特別編として再び登場を願った。なぜならば近藤は今年、トライアスロン世界選手権に

日本代表として出場を果たした上に、先日のスーパーGT富士では自身が監督を努めるKONDOレーシングを見事ポディウムの頂点へと導いたからだ。まさに今年は、ノリにノッている年である。そんな近藤はまず、トライアスロンについてこう語った。

「今までトライアスロンは趣味だったから、あまり公言もしてこなかった。それをトライアスロン協会の方もわかっていてくれて、宮古島や佐渡島など、あらゆる大会で(芸能人でもある)僕のことを守ってくれていた。だからいつかはトライアスロンに対してお礼がしたいって、ずっと思っていた」

「そうした中、近藤真彦の元に「トライアスロン世界選手権に日本代表として出場しないか?」というオファーが届いた。

世界選手権に出るのはもちろん簡単ではない。ただ成績がよければ行ける、というものでもなく、今までの実績に加えて出場する本人の年代に空席がないと出場ができない。今回は近藤真彦のエイジである50−54歳に空きが出た。

「同時に当然、トライアスロン発展のために貢献してもらいたい…というニュアンスもあったと思う。もちろん自分自身、トライアスロンは健全で良いスポーツだと思っているので、今回の出場はそれをアピールする役目でもあるな、と思ってオファーを受けた。それで新聞でも公開して、きちんと記者発表をして…という流れになった。なんでアイツが世界選手権に日本代表として出られるのか? その理由(上記のような話)を全て明かした」

近藤真彦は常に、自分がどう見られているかを意識している。

「僕の問題は、モータースポーツの世界でもそうなのだけど、振り返ると『ギンギラギンにさりげなくのマッチ』という見方をされる。もう、それも嫌じゃなくなったけれど、これはモータースポーツやトライアスロンの世界では当然、良い見方をされない場合もある」

トライアスロン世界選手権のオファーは、50−54歳のエイジに空きがあったことに加えて、これまでの実績が評価されたことによる。近藤は忙しい身でありながら、年に何度もトライアスロンの大会に出場し、きっちり完走している。そうした取り組みと姿勢が高く評価されたことも選考理由だった。

「それでも最初に日本代表チームに合流した時には、周りからは『本当にできるの?』『あの人なんなの?』という目で見られていると感じた。けれど、実際に大会に出てキチンと完走したら、みんなに打ち上げで理解してもらえたみたい。トライアスロンに対する僕の気持ちや熱を知ってもらって、本気でやってきたんだなというところを理解してもらった。モータースポーツの世界でも一緒だけど、マッチとして見られても図々しく踏み込んで結果を出していく。それが周りを説得する材料になる」

トライアスロンは近年、徐々に認知されて競技人口が増えている人気スポーツだが、事前のトレーニングが欠かせない。特に近藤が多く出場しているロングディスタンス(スイム3.8km/バイク(=自転車)180km/ラン42.195km)や、ミドルディスタンス(スイム1.9km/バイク90km/ラン21km)は、相当なトレーニングが求められる。事実、近藤もこうしたレースの前にはバイクでトレーニングをする時にリュックを背負っていき、バイクの練習を終えたらそのままリュックからランシューズを出して走り出すというようなハードな練習をこなしてきた。

「ゴルフなんかの場合は、下手くそでも一緒にコース回って楽しめるけれど、トライアスロンの場合は、泳げない、じゃレースに出られない。だから練習は必要。追い込むのが好きなんだね、モータースポーツでもなんでもそうなんだ」

そうして近藤は、日本代表ジャージを纏って「ITU世界ロングディスタンストライアスロン選手権」に出場し918人中626位、スイム1.5km/バイク120km/ラン30kmを7時間36分5秒で完走したのだった。

「JPNジャージを着て出場する、ということにはやはり特別な思いがあるよね。実際にやってみて、ちょっとシビレた。この日のためにいつも以上にトレーニングして、本当にヘロヘロになった。初めて泳ぐスウェーデンの湖を思うと、(練習で)泳いでおかないと心配で仕方なかったしね。その苦しさって、トライアスロンやっている人以外には分からない。けれど、それを表に言おうとも思わない。人に褒めてもらいたくてやっているわけじゃなくて、自分が頑張っていることをわかっていればいい。そういう意味では今回の世界選手権は、自分の中での集大成だった。今後はのんびり、トライアスロンを楽しみたい」

近藤にトライアスロンのメリットは? と聞くと、「あまりないね」と笑いながらも「精神的に強くなったかな」という。

「ここで勝負に出なきゃいけない、という時にそれを意識して正面から向き合える。経営者でトライアスロンをやっている人が多いのも、そういう部分に関係があるかもしれない。トライアスロンのレースに出る時には、全てを忘れて素になって望める。そういう切り替えができるようになったことはメリットかもしれないね」

そして鍛えられた精神はもちろん、モータースポーツにも活かされている。

後編はこちら

【文・河口まなぶ/写真・菊池貴之(モノクロ)/カラー写真は本人所有】

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