安東 弘樹「No car, No life」

安東 弘樹「No car, No life.」

「3歳の時には既に、バスの運転席の後ろを確保していて、運転手さんが運転している姿を見て、カッコいいなと思っていました」
そしてこの時から40数年が経過した現在に至るまで、
「クルマに取り憑かれています」
と語るのは、TBSテレビのアナウンサーとしてお馴染みの安東弘樹さん。既に氏のクルマ好きは広く知れ渡っており、トヨタが運営するGAZOO.comで自らクルマに関する連載も行っているほど。そんな安東さんはまさに、“いまどき珍しい、クルマ好き”と表現するのがふさわしい。
しかも、このA40にうってつけといえるほど超絶な「マニュアル・トランスミッション信者」で、話を聞いているこちらが思わず引いてしまうほどだったのだ。

「大学に入って、奨学金をもらいながらバイトをしていましたが、そんな中でお金をためてシティ・ターボII、通称ブルドッグを買ってヤビツ峠を走っていたんです。中古の強化クラッチ入れたり、もう80年代のクルマ好きの典型をやっていました」
とにかく、マニュアル・トランスミッション(以下MT)が好き。
「先日も息子と一緒に富士スピードウェイにスーパー・フォーミュラを観戦しにいったのですが、帰りは案の定4時間の渋滞。当然MTのクルマだったのですが、全く苦にならなかったですね」
というほど。
「しばらくMTに乗らないと禁断症状が出ます。クラッチを踏む重みに得も言われぬ快感を覚えるほどなので(笑)。とにかく呼吸というか、MTならではのリズムが楽しくて仕方ないんです。だから今後の自動車のことで、最も恐れているのはMTがなくなることと、自動運転になってしまうことですね」

そんな安東さんだけに、最近主流となりつつあるメカニズムにも、おおいに意見がある。
「会社の後輩やスタッフにも、安東さんが不機嫌なところを見た事が無いと言われるのですが、CVTを運転しているとすごく不機嫌になるんです。アクセルの操作に対する反応が遅れたりしやすいので、気持ち良い運転のしようがない。耐えられなくなるんです。もう、とにかくCVTは好きじゃない。(笑)」
現在所有するクルマの中では、例えば家族用のクルマがATだし、普段よく乗るクルマも2ペダルMT。だが、どちらも運転するときは「シフトポジションを機械に任せたくないので」絶対にMTモードを使うという。つまり、常にMT至上主義であり、2ペダルでもMTモード付きが最低限譲歩できる条件だという。
こうして忙しい仕事に就きながらも、年間6万キロを走行するというから、いかに運転が好きかわかるだろう。北海道にも九州にも、クルマで行くのが当たり前という方だ。

それだけにこれまでの所有車は、走り志向オンリーなのかと思いきや意外なチョイス。
「もちろんボクスターやレガシーB4やCR-Xなんかも乗りましたが、スキーにはまったときは日産テラノにも乗りましたし、その後は三菱パジェロやランドローバー・ディスカバリーなんかにも乗りましたね。だいたい常にMTのスポーツカーとSUVを所有する、というスタイルが多かったです」
常に複数台を所有するだけに、「19から48歳の現在まで自動車ローンが途切れたことがない」というほど。

クルマに対する熱さは天下一品。これまでに多くの方を取材してきたが、安東さん以上にクルマに熱い方を筆者は知らない、と言っても良い。それだけに、自動車を取り巻く現状に関しても数多く思うことがある。
例えばモータースポーツに関しては、
「家ではDVDなんかでインカー映像もたくさん見ています。F1は当然好きですしWRCも大好き。でも、そうしたモータースポーツを自分が勤めている会社では放送できていないことを悔しくも思っています。だからモータースポーツに関しては、もっともっと皆さんに知っていただけるような機会を作りたいと思っています」

また、日本の自動車メーカーに対しても、
「いろいろなクルマに試乗させてもらっていますが、とにかく同クラスの輸入車などと比べると危機感を覚えますね。高い技術力を持っているのだから、本気で作って欲しいし、渾身のクルマを作って世界に問うて欲しいと常々思っています」
といった具合。実は記事にしているので表現を穏やかにしているが、本人の言葉はもっと過激だ。ただ、それだけクルマに対する愛が深いからこそ。
そうして安東さんは取材時間を忘れて約2時間にわたってずっとクルマについて話し続けた。こちらの質問は最小限で、氏の想いは次から次へと言葉になって溢れてくる。

しかし、なんといっても好きなのは「運転」。
「なんというか、クルマの操縦性そのものに惹かれるのです。ステアリングの写真を見ているだけで興奮しますし(笑)、クラッチがつながって、前に進むあの感じがたまらないですね。それにシフトチェンジ・フェチなので、もう実際に運転している時も無駄にシフト操作やヒールアンドトゥをしてしまうほどなんです。だから自分で操作しての移動のプロセスが楽しくて仕方ない。操縦そのものが楽しい上に、どこにでもいけるなんてホント、クルマって魔法の絨毯のようんだと思っています。だから1秒でも長くクルマに乗っていたいと思うんです」
と、こんな具合でこちらが話を止めないと、いつまでもクルマの話が終わらないほどだった。そして自分でも「我を忘れる」というから、重度のクルマ好き病だ(笑)。

試しに今後したいことは? と聞いてみると、「ニュルブルクリンクを本気で走るまでは死ねません。それと運転のトレーニングを受けて、運転を突き詰めたいですね」
本当に、クルマが好きで運転が好きなのだ。
事実、自分でこんな風にいう。
「ノーカーノーライフですし、ノードライブノーライフです!」
まさに、A40の鏡ともいうべき人物。安東さんは今後も様々なメディアを使って、クルマに対する熱さと愛を伝えていくはずなので、ぜひ注目していただければと思う。
それにしても、安東さんの話を聞いていると、本当にクルマって凄い存在なのだと思った。なぜなら約2時間に渡って喋り続けた安東さんの顔は本当に嬉しそうで、まるでクルマ好きの少年そのものだったからだ。

【文・河口まなぶ/写真・菊池貴之】

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